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ビジネスコラム

マイナンバー制度/民間企業への影響と求められる対応

第三回 事例から考えるマイナンバー制度対応の課題

Ⅰ.はじめに

第一回のビジネスコラムにおいては、マイナンバー制度の概要及び民間企業において求められる対応を「組織」、「業務プロセス」、「システム」、「情報管理」という4つの視点に整理してご紹介し、また、第二回のビジネスコラムにおいては、上記対応の中で特によくお問い合わせをいただく「本人確認」について解説しました。今回は、その他の実務上の課題や、事業者の実情や特性等に応じた対応が求められる論点について、事例を交えてご紹介したいと思います。

Ⅱ.実務におけるポイント

1.組織
(1)
取扱方針、規程の整備

マイナンバー法においては、事業規模やマイナンバーの取扱数に関わらず全ての事業者が規制の対象となり、特定個人情報の取扱に関する方針や取扱に関する規程類の整備が必要となります(従業員数が100名以下の「中小規模事業者」は、一部、特例が認められています)。マイナンバーは従来の個人情報に比べて、法律による利用目的の限定、事業者間での共同利用やグループ会社を含む第三者への提供の原則禁止など規制が強化されており、すでに個人情報に関する取扱方針や関連規程を整備している事業者の場合は、その点を考慮して、特定個人情報に関する規程類の新規整備、もしくは既存規程類に特定個人情報固有の規制を追加することになります。

なお、社外向けの個人情報に関する取扱方針をHP等で公開している事業者では、当該方針の見直し要否ついても検討事項に挙げられています。特に、個人事業主、顧客など社外からのマイナンバー収集が多数想定される場合は、従来の個人情報に加え、特定個人情報に対しても適切に法規制対応を行うことの説明として、個人情報基本方針等の見直しを行う事例が多く見受けられます。

(2)
教育・研修の実施(事務取扱担当者向け、その他従業員向け)

マイナンバー法では、特定個人情報を業務として取扱う担当者(「事務取扱担当者」)を対象とした特定個人情報の取扱に関する教育、研修が求められています。加えて、多くの事業者は、事務取扱担当者には該当しないその他の従業員向けにも、マイナンバー制度の概要に関する教育、研修を検討しています。主な目的は、従業員のマイナンバー制度への理解を促すことにより、知識不足によるコンプライアンス違反を防止することにあり、その具体的な事例については次項でご紹介いたします。

2.業務プロセス~「本来不要なマイナンバーの取得」への対応

マイナンバーは、法令で限定された事務の範囲を超えた取扱いは認められていません。しかしながら、次のようなケースでは、法令が定める事務の範囲とは関係ない業務において、本来不要なはずのマイナンバー取得のリスクが懸念されており、全ての従業員が注意しなければなりません。

  • 中途採用者の面接、不動産賃貸契約、ローン審査等の場面で、所得証明や身元確認の目的で提出される書類(源泉徴収票、住民票等)にマイナンバーが記載されている
  • 支払調書の発行対象となりえる個人事業主が、契約書や請求書等に自主的にマイナンバーを記載し、事業者に提出してくる

このような意図しないマイナンバーの取得を避けるためには、事務取扱担当者のみならず全ての従業員に対して制度の理解を促し、上記事例が発生した場合の具体的な対応方法を周知することが重要となります。

特に、企業の主要ビジネスにおいて上記の場面が想定される金融業、不動産業界においては、現業部門を含む多数の従業員に対して、具体的な事例の紹介及び事例ごとの対応(書類の返却、マイナンバー部分をマスキングする等)をまとめたマニュアルを配布する、部門ごとに説明会を計画する等、重要課題として取り組む事例もあります。

3.システム~データの管理方法

収集されたマイナンバーの保管については、マイナンバー専用のDBに格納し、マイナンバー記載の法定調書類を出力する人事給与システムや経理システムとの連携を図る事例が多くみられます。他方、マイナンバーの収集や管理を外部委託する場合は、事業者内で保有する従業員データや個人事業主等への支払データと、委託先が保有するマイナンバーの連携が重要なポイントとなりますので、早目に委託先と協議することが望まれます。法人番号も、マイナンバーと同様に法定調書類への記載が必要ですが、収集やデータ管理等、検討が漏れやすい事項ですので注意が必要です。

4.情報管理~執務エリアのセキュリティレベル

事務取扱担当者が、収集したマイナンバーの本人確認、データ化(保管)、マイナンバー記載の法定調書類の出力といった取扱いを行う上では、適切な安全管理措置を講じることが必要です。特に、ガイドラインで示される安全管理措置のうち「取扱区域」(上記事務作業を行う執務室内の区画)については、部外者の立ち入りを制限するための執務室を別途設けなければならないか、といった懸念について、お問い合わせを受けることがあります。専用の執務室を準備できないとしても、パーティションを活用する、座席配置を変更する等の工夫により、一定のセキュリティレベルを維持することができると考えられますし、このような工夫が、多くの事業者にて実情を勘案した結果、主流の対策となっているようです。

Ⅲ.まとめ

2016年1月のマイナンバー制度開始まで3か月を切り、10月からはマイナンバーの通知が始まります。民間企業においては、マイナンバー収集開始時期から逆算して、限られた期間の中で何を優先すべきかを今一度整理し、これまでにご紹介した事例等も参考に、効率的な対応を進めることが望まれます。

以上

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