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中期的なRPAへの取り組みとRPAやAIを組み込んだ業務改革

第一回 RPAを活用した業務構造改革のこれから

本コラムでは、“中期的なRPAへの取り組みとRPAやAIを組み込んだ業務改革“をテーマとして、三回にわたり、下記の構成で話を進める。

  1. 1. RPAを活用した業務構造改革のこれから
  2. 2. RPAの定着と規模拡大に向けて
  3. 3. RPAのこれから

働き方改革や労働人口の減少への対策、ホワイトカラーの生産性の向上などへの対策としてRPAが注目を集めている。また、マシンラーニングやディープラーニングなどのAIテクノロジーも様々な既存ITソリューションに活用されるようになってきている。

実際にRPAやAIと一緒に働く未来に一歩ずつ近づいていっていると感じる一方で、これから1-2年後に自社の業務にRPAやAIがどのように適用されているべきかについて、明確な目標を定められている企業はまだ少ないように思う。

これは個人的な感想だが、RPAを活用しようと検討している多くの方が自分の担当する目先の業務の自動化にとらわれすぎていると感じる。RPAを効果的に活用しようというよりもRPAで自動化することが目的になっていると感じるのだ。

『RPA』といっても様々なソリューションベンダーがあり、機能や特徴も様々だ。このコラムではNICE社のRPAソリューションをベースに、企業とRPAやAIとの関わり方について述べていきたいと思う。

RPAを活用した業務構造改革のこれから

RPAは業務構造改革への取り組みの1つだと考えられる。これまで担当者がシステムやアプリケーションを利用して行っていた業務にRPAを活用する。つまり、担当者の業務量をRPAの活用によって削減し、空いた時間を別の業務に割り当てるということだ。また、AIを平行して活用することによって、今時点では担当者に判断を委ねている業務も徐々にAIが判断して、RPAが実行するということが可能になっていく。さらにチャットボットを活用することで担当者の業務支援も可能となる。ここではRPA、AI、チャットボットが業務支援システムのような形で有機的に機能する。また、担当者が日々行っているデスクトップ上の作業はビッグデータとして収集され、自動化対象の業務の選定とその自動化シナリオの作成までもが自動化される。少し難しい話になってしまって恐縮だが、ここに書いた内容は10年後の話ではなく、これから1-2年の間での実現が見込まれており、いくつかは既に取り組みが始まっている内容である。AIというフレーズは近未来的で何もかもを自律的に解決してくれるようなイメージを持っている方もいるかもしれないが、現実はあくまで地に足の着いた技術の積み重ねや組み合わせである。

業務構造改革の観点では今ある業務全体を見直して、RPAを最大限活用できるような業務設計やAIの活用シーンの洗い出しなどを行っていく必要がある。この構造改革には全社的な取り組みが必要となる。

RPAへの期待と現実

さて、現在の現場に目線を戻してみよう。みなさんはRPAにどのようなイメージをお持ちだろうか?

よく聞く声として以下のようなものがある。

  1. ① だれでも簡単にシナリオが作成できる
  2. ② レコーディング機能でシナリオを覚えさせれば、その後は勝手に仕事をしてくれる
  3. ③ RPAがあれば、何でも自動化できる
  4. ④ 業務部門だけで運用できる
  5. ⑤ RPAに仕事を奪われる

これらの声に対して、実際のところはどうだろうか?

RPAはデスクトップ上の作業を人の代わりに実行するというのが基本であるから、業務担当者がシナリオを作成することが良い様に思われる。また、シナリオに変更が発生した場合に誰でもシナリオを作成できれば、すぐにシナリオの変更が可能と考えられる。

少量の簡単なシナリオであれば、それも良いと思うが、多様な業務をRPAに任せるようになったり、複数部門にまたがるようなシナリオへ展開していくにあたっては、誰がシナリオを作成するのか、どのように作成したシナリオの品質を担保するのか、シナリオの変更やその管理はどのようにしていくのかを考慮していく必要がある。この考慮がないと属人的なシナリオが多数乱立することとなり、RPAの維持・管理に業務時間の多くを費やす羽目になり、効率化のためであったはずのRPAが非効率の温床になりかねない。

既にRPAでシナリオ開発を行った経験のある方であればご理解いただけると思うが、現在の業務をRPAで置き換える際には通常の正常系ワークフローと併せて、入力データの不良やアプリケーションの無応答などのエラーケースへの考慮も必要となる。エラーケースには業務起因のエラーとシステム起因のエラーがあり、両方のエラーケースへの適切な対応には相応のスキルが必要となる。1人がこれらのスキルを全て持っていなければいけないというわけではないし、自社内で全て賄わなければならないわけでもないが、これらをカバーできるメンバーによる協力体制は必要である。

2年先を見据えた検討を

RPAのシナリオ開発において開発ツールの使いやすさ・作りやすさは重要であるが、自社では誰が使うのかということも考慮しておくべきである。現在業務で利用しているシステムやアプリケーションは業務を行う上で必要不可欠なものであると思う。仮に今のシステムやアプリケーションを一切排除して紙ベースの業務に戻せと言われたらどうだろうか?そもそもITに依存せずに日々の業務を処理すること自体がもはや想像できないかもしれない。それほどまでにシステムやアプリケーションは業務に浸透した。利便性や業務の処理速度、セキュリティなどは向上など、様々な恩恵を享受した今となってはこれらを排除することはありえないのである。

そしてこれと同じことがこれからRPAやAIでも起こっていくと考えたらどうであろうか。今後の業務にはシステムやアプリケーションに加え、RPAやAIの活用を前提とした業務設計に基づいた形に移行していく。それにあたっては誰がシナリオを作るのか、その品質の担保や本番展開をどうするのか、どのように管理していくのかといった検討は必須となる。

2年程前の2016年時点ではRPAへの市場認知度はまだ低く、AIへの期待はあったもののまだ実業務に活用するには遠い存在であった。この当時ではシステム化が行われていない業務への適用と短期的な導入が可能というメリットを中心としたRPAの展開が主流だった。つまり、これまでシステムでは手の届かなかった効率化をRPAで実現するということを主目的とした展開であった。この目的の達成に関しては業務部門のみでも実現することが可能であり、それは仮にRPAが上手く動かなかったとしてもこれまで通り担当者が対応すれば良いという前提が暗黙裡にあってのことであった。

それから2年でRPA市場は大きく成長し、RPAソリューション自体も機能や適用範囲が拡大してきた。また、AIについても大きな進歩がみられ、正しく学習させれば実業務に活用可能になってきている。また、マシンラーニングなどの技術がRPAソリューション内でも活用されるようになってきている。

RPAとAIの連携という観点では、マシンラーニングの教師あり学習にDesktop Automationを利用し、担当者が通常業務を行っている裏で、担当者による判断を学習データとして提供するという連携が始まっている。そして、小規模の業務レベルではAIによる判断をRPAのシナリオに組み込んだ自動化も実現されている。これから2年後の2020年末までにはRPAはAIやチャットボット、FAQなどとより深く連携し、複雑な業務の自動化から担当者のより高度な業務支援まで業務の至る所で活用されるようになっていくだろう。

次回のコラムでは、RPAの定着と規模拡大に向けたポイントについて説明する。また、RPAの効果を最大化させるためには、業務部門とIT部門などの部門間を横串で連携するような機関「CoE(Center of Excellence)」が必要であり、CoEの構成と展開に関して説明する。

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