ERPコラム

基幹システムの再構築に関して

基幹システム再構築のためのポイント、何が必要になるのか?
基幹システムとは何か?
ERPと基幹システムの考え方の違いについてもご説明します。

基幹システムとERPは別の概念

世界初のERPがドイツで開発されてから、すでに四半世紀が過ぎました。当初、ERPは海外との商習慣の違いから日本国内での普及にある程度時間がかかりましたが、現在では業態に応じたさまざまなパッケージの開発が進み、多くの企業で導入が加速しています。

ERPの役割は、企業の基幹となる個別の業務システムを統合的に管理することにあります。たとえば「会計処理」や「財務管理」、従業員の「勤怠管理」などは、業種を問わず必要になる事務作業です。また製造業であれば、つくっているものが何であれ、「購買管理」「生産管理」「在庫管理」「販売管理」といった管理業務は必要不可欠です。

このような、企業内で部門ごとに独立している個々の業務の統合化を図り、関連性のある数値を横断的に管理していくのがERPに求められている機能です。

今日、ERPパッケージは「統合基幹業務システム」と称され、ときにその呼称が簡略化されて「基幹システム」などと呼ばれることも多くなっています。そのことから、「ERP=基幹システム」と認識されてしまうケースがよくあるようです。しかし、厳密にいうならば、ERPと基幹システムは本来まったく別の概念なのです。

基幹システムとは何か?

基幹システムは、上記のように各部門で独立して存在する個別のデータ処理システムそのものを指しています。部門ごとの「数字を扱う事務手続き」は、企業活動の根幹に関わる作業であり、それをコンピューター上で効率よく行えるようにしたシステムソフトウエアおよびハードウエアを総称し、基幹システムと呼んでいます。

具体的には、「受注管理」から「在庫管理」「生産管理」「販売管理」「人事労務」など、企業それぞれの業種・業態に合わせて複数の基幹システムが稼働しています。それぞれの基幹システムは、日々変動するデータの入力、管理、分析を司るために、部門ごとにデザインされています。

業務システムと基幹システムの違いとは?

それに対し、各部門の日常業務を円滑に推進するためのシステムというものもあります。それはグループウエアや企業SNS、メーラーやスケジューラー、企画提案書を作成するプレゼンテーションソフトウエアといったツールなどです。

このように、日常業務で活用するツールやシステムは、基幹システムとは別に業務システムと呼ばれています。

基幹システムと業務システム、それぞれのメリット

たとえば、スケジュール管理や工数に応じた生産体制構築といったようなことにおいて、基幹システムは正確な現状把握を可能とします。受注の引き合いがあった際など、在庫や生産の状況を速やかに把握できるので、目論見と現実が違ってクライアントに迷惑をかけてしまうようなミスを防ぐことができます。

多くの企業ではこうした基幹システムを複数配置し、それらのアウトプットを照らし合わせることで企業全体の仕事量や資金繰り、あるいは採用などのバックヤード業務を進めています。

一方、業務システムは、個別の業務を効率化するためのもので、小回りの利くシステムといえるでしょう。社員個々人が、それぞれの活動に合わせて便利に利用できるものです。担当クライアントごとに部署が分かれているような大きな会社では、クライアントの環境に合わせ、部署ごとに別々の業務システムを動かしているというケースもあるのではないでしょうか。

企業に複数存在する基幹システムを統合

ERPは、こうした企業内に存在する複数の基幹システムを統合する役割を担っています。しかも、ERPは単にそれぞれの基幹システムをつなぎ、一元管理するだけではありません。その上に部署ごとの業務システム、情報系システムなどを乗せ、さらに個別の業務アプリケーションをも乗せた形で最適化されることが多いようです。

ERPでは、実際に日常的に業務を行なう人々が、「どうすればその手間や労力を削減できるか」が論点になります。

基幹システムや全社的な会計に関わるシステムが優先的に考えられるのはそのためです。それは企業活動の基盤になるとともに、その入力や分析のために要する時間が膨大だからです。たとえば、月の締めに営業社員がお客様への対応を後回しにしてまで売上を入力したり、期末になると何日もかけて膨大な請求と入金の突き合わせや支払実績をまとめたりするようなことは、果たして生産性に結びつく作業でしょうか。

しかし、ERPを導入し、ワークフロー上で伝票の作業を行なうことで、在庫、原価、人件費などを全社共通の数値によって管理できるのです。忙しい営業社員も、最短の時間と最小の手間で、会計に必要なインプットを済ませることが可能になります。これこそが業務改善であり、本来業務へのリソースの集中を実現することにつながるのではないでしょうか。

基幹システムイメージ図

基幹システムの導入方法

基幹システムを実際に導入する前に、基本的な導入の流れを押さえておくことが大切です。一般的に、基幹システムは「企画」「要件定義」「実装」「運用」という流れに沿って導入されます。

1つ目のプロセス「企画」では、システム導入によって解決したい経営課題を抽出し、最適なシステムの選定を行います。同時に、プロジェクトマネージャーを選任してシステム運用に必要な体制を構築しておきましょう。

2つ目のプロセス「要件定義」では、導入予定のシステムで業務上の課題をすべてカバーできるかどうか分析し、業務変更やシステムカスタマイズの必要性を検討します。

3つ目のプロセス「実装」では、「要件定義」において固まった要件に準じてシステムの設計や開発、実装を行います。まずはテスト運用を行い、システムが十分な性能を備えているかどうかを確認しましょう。

テストが完了したら、4つ目のプロセス「運用」へと進みます。実際にシステムを導入し、定期的に効果測定を実施しながら業務改善を図りましょう。

基幹システム再構築の必要性

これまでの基幹システムは、個々に業務の合理化、効率化を図ることが最大の目的でした。しかし、個別に行っていたこれらの業務をERP導入によって再構築することで、次のような効果が見込まれます。

製造業においては、製品の出荷実績は売上利益に関わるだけでなく、生産設備の稼働率や生産に必要なマンパワー、材料調達量や資金調達など、すべての基幹部門とも密接に関わっています。こうした関連性のあるデータを共通フォーマット化して横糸で結び、業務全体の流れのなかで「見える化」していけば、どこに損失が生じているか、どこにリスクが潜んでいるかなどの把握が容易になります。それにより、ムダの削減や業務の拡大・縮小、投資の適否や次年度の計画などの経営判断も、迅速かつ適切に行えるようになるわけです。

また、各部門が独自に構築した基幹システムをバラバラに運用していると、部門間でデータをやりとりする際、コードや書式等が違っていたり、入力するためのマンパワーがその都度必要になったり、受け取ったデータを入力する際にミスが生じたりするなど、ビジネス上のムダやリスクが生じます。しかし、部門ごとの基幹システムを統合し、関連のあるデータをシステム上で共有できるようにしていけば、こうしたロスやリスクを回避することも可能となります。

とはいえ、ただやみくもにERPを導入しただけでは、期待したほどの効果が得られなかったという事例も少なくありません。自社の業種やビジネス形態に適したパッケージを選択すべきであることはもちろん、社内では部門同士の利害を調整し、「全体最適化」の意識を共有しておく必要があります。

たとえば、全体としてのマンパワーは減らすことができても、特定部門の負荷が高くなるケースもあるので、人材配置や勤務形態を変更するなど、システム部門以外での対応が必要になるケースも出てくるでしょう。

つまりは、「ERPパッケージの導入による基幹システムの再構築によって、自社内の何がどう変わるのか」を経営陣が正しく把握し、戦略的に対応することが大きなポイントとなるのです。

基幹システム再構築による期待効果

ERP導入による基幹システムの再構築によって、業務の効率化が図れるようになることはいうまでもありません。

そしてERP導入の最大のメリットは、リアルタイムにさまざまな経営判断が可能になるということにあります。ERPとは、「データ処理された資源の統合的管理による経営判断計画手法」を意味しています。

財務・会計処理や受発注処理などデータを単純に記録・蓄積して業務処理を行っていくSoR(System of Record)が従来型の基幹システムだとすると、ERPはそれに加え、システムの連携やデータの加工を行っていくSoE(System of Engagement)によって、経営戦略に生かすことのできるデータ(情報)を取り出すためのシステムともいえます。

事業計画の達成や経営判断にこれまで以上のスピードが要求されている昨今、システムに蓄積された数字が何を意味しているのか、データから何を読み取るべきなのか、そうした情報を素早く正確にゲットできるか否かは、企業の競争力を向上させていく上で非常に重要なポイントではないでしょうか。

もちろん、それには単にERPを導入するだけでなく、そこに付加させる機能と業務とのマッチングなどを考慮した適切なERPの仕様が求められることになります。基幹システムの再構築の際には、そうした点を十分留意してシステム設計していく必要があるでしょう。

ともあれ「経営に資するIT」という経営陣からの強い要請に対し、ERPは強力な支援システムとして大きな期待がかけられています。

ERPの種類

基幹システムの再構築を図るうえで、どのようなERPを導入するかは重要なポイントです。ERPは大きく「オンプレミス型」と「クラウド型」の2種類に分けられます。それぞれの特長を把握し、自社に合うERPを選ぶことが重要です。ここからは、オンプレミスERPとクラウドERPの特長について解説します。

オンプレミス型

オンプレミス型は、自社でシステムを適宜更新しながら構築していくタイプのERPです。使い勝手は良いものの、システム保守などのコストが高いというデメリットがあります。
オンプレミスERPは、さらに「全体最適型」「業務ソフト型」「コンポーネント型」に分けられます。
全体最適型は、あらゆる業務を総合的にカバーしてくれるタイプです。顧客管理や製造管理、給与計算など幅広い業務データを一つに集約でき、それらをリアルタイムで確認できます。そのため、経営層は現場の状況をより迅速に把握できます。
業務ソフト型は単独業務のみを対象としてソフト化するタイプで、コンポーネント型は必要に応じてカバーする範囲を拡張できるタイプとなっています。業務ソフト型は他のタイプに比べてコストが安く、小さな企業でも気軽に導入可能です。

クラウド型

クラウド型は、データをインターネット上で管理できるタイプのERPです。オンプレミス型に比べてサーバの導入やメンテナンスコストにおける自社の運用負荷がかからず、導入のハードルが低いのが特長です。ただし、インターネットでデータ管理を行う性質上、セキュリティ対策が必要です。

ERPの導入時に検討するべきこと

ERPを導入するときは、いくつかのポイントについて前もって検討しておくことが重要です。ERPの導入時に考慮すべきステップとして、まずは導入の目的を明確にしておきましょう。自社の業務における問題点を把握し、ERPの導入によって解決できるのかどうかを検討してください。目的はERPの導入自体にあるのではなく、あくまでも課題解決にあるのだと認識しておく必要があります。
次に、システムの適用範囲もあらかじめ決めておきましょう。自社の商習慣に従って、ERPを適用する部門を決定します。しかし、場合によっては導入段階で明確に適用範囲を決められないこともあるでしょう。その場合は、カスタマイズ性の高いERPを選べば後から機能を調整することができます。
最後に、適用範囲におけるシステムの機能性を確かめ、適切なERPパッケージを選ぶようにしてください。このとき、現在の状況だけでなく、将来的な展望も加味しておくことが大切です。カスタマイズ性の高さを検討し、長期的な視点でERPの導入を進めましょう。

基幹システムとERPの違いを理解する

基幹システムとERPは混同されがちですが異なる概念です。基幹システムが主に限定的な範囲で適用されるのに対し、ERPでは業務全体を一元管理することができます。ERPの導入で基幹システムを再構築することによって、業務効率の改善や経営判断の迅速化といったメリットが得られるでしょう。また、ERPにもさまざまな種類があるため、自社に合ったパッケージを見極めることが重要です。

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