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Column 資金決済に関する法律の一部を改正する法律(概要)

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著者

原 尚美

著者

税理士法人Right Hand Associates / 原 尚美

2025年6月13日に「資金決済に関する法律の一部を改正する法律」(令和7年法律第66号)が公布されました。本改正は暗号資産、電子決済手段(ステーブルコイン)、資金移動業について、利用者保護とイノベーションの両立を図る観点から制度の隙間を埋め、実務に根差した安全性・透明性を確保することを目的としています。施行は公布から1年以内の政令指定日とされ、関係政省令・監督指針の整備を経て段階的に運用が開始されます。

本概要では、現行制度下で顕在化した課題及び改正後に何がどのように変わるのかに係る概要を解説します。

1. 改正の全体像と位置づけ

今回の改正は、暗号資産分野の利用者保護の強化(破綻・流出リスクへの備え)、電子決済手段(ステーブルコイン)分野の制度の実効化(裏付資産運用の柔軟化・仲介の明確化)、資金移動業分野のリスク・機能に応じた規律(クロスボーダー収納代行の適正化、破綻時返還の迅速化)が中心となります。この改正により、ブロックチェーン等の技術活用と安全な決済の両立を図り、国内外の決済エコシステムにおける日本の制度的信頼性を高めることが期待されます。

2. 暗号資産交換業者等に対する「資産の国内保有命令」の導入

暗号資産の現物のみを取り扱う暗号資産交換業者・電子決済手段等取引業者が破綻した場合等に国内利用者への資産の返還を担保するため、暗号資産のデリバティブ等を取り扱う金融商品取引業者に対す る規定と同様に、資産の国内保有命令を発出できるようにするものとなります。

現行の課題改正の要点
暗号資産交換業のうち、デリバティブ取引を取り扱う事業者については金融商品取引法に基づく資産の国内保有命令が発出可能でしたが、暗号資産の現物のみを取り扱う事業者には、資金決済法上、同様の枠組みが存在しませんでした。 その結果、海外グループの破綻等により国内で預かる資産の国外流出リスクが顕在化するおそれが指摘されてきました。 代表例として、2022年のFTXグループの破綻事案では、日本子会社については金融商品取引法に基づく行政処分(国内保有命令等)により資産の国外流出を防止できましたが、規制の対象外であったことが問題提起の要因となりました。資金決済法に「資産の国内保有命令」を新設し、暗号資産の現物のみを扱う交換業者、ならびに電子決済手段等取引業者(ステーブルコイン取扱い事業者)にも適用できるようにします。 これにより、公益・利用者保護の観点から必要と認める場合、内閣総理大臣が当該事業者に対し、政令で定める部分の資産を国内で保有することを命ずることができます。

3. 信託型ステーブルコイン(特定信託受益権)の裏付け資産の管理・運用の柔軟化

現在、全額を要求払預貯金のみで管理することを求めている特定信託 受益権の裏付け資産について、国際的な動向を踏まえ、発行額の 50%を上限に、元本を毀損しない形で、国債及び定期預金による運用 を認めるものとなります。

現行の課題改正の要点
ステーブルコインのうち、信託スキームを用いる「特定信託受益権」では、価値の安定と倒産隔離を重視する観点から、裏付資産の「全額」を要求払預貯金で保有することが求められてきました。 この枠組みは安全性の確保に資する一方、国債等の安全資産を用いた短期運用ができないため、発行コストが高水準で推移し、流通の広がりや事業の持続性に制約となっていました。発行額の「50%」を上限として、元本毀損のない条件の下、①満期・残存期間3か月以内の日米国債、②中途解約が可能な定期預金による管理・運用を認めます。 運用の具体要件(たとえば、価格変動時の委託者による追加拠出義務や、中途解約手数料による元本減少の禁止など)は内閣府令で精緻化されます。

(出典:金融庁HP 資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料 2025年3月P3)

4. 暗号資産等取引に係る「仲介業」の創設(媒介のみの登録制)

暗号資産交換業者・電子決済手段等取引業者と暗号資産等の売買・ 交換を行いたい利用者を引き合わせる行為(媒介)のみを行う仲介業(登録制)を創設します。

• 利用者への説明義務や広告規制について、暗号資産交換業者等と同様の規制を設けます。

• 利用者の資産を預からないため、財務規制は設けません。

※マネー・ローンダリング規制は暗号資産交換業者等に義務付けられているため、仲介業者には課さないこととされています。

現行の課題改正の要点
利用者と暗号資産交換業者等のマッチング(媒介)のみを行う事業者であっても、交換業の登録・財務要件・AML対応等、フルスコープの規制がかかり、参入障壁が高い状況でした。 その結果、イノベーティブなユーザー・インターフェースや顧客利便を高めるフロント事業者が育ちにくいとの課題がありました。媒介に特化した新たな「仲介業」を創設し、登録制とします。 仲介業者には以下が課されます。
(1)所属制(特定の交換業者等のために仲介を行う)
(2)利用者への明示・説明義務
(3)広告規制 一方、仲介業者は利用者資産を預からないため、財務規制は原則として課されません。 AML/CFT義務は交換業者等に課されるため、仲介業者には直接課されません。

(出典:金融庁HP 資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料 2025年3月 P4)

5. 国境を跨ぐ収納代行への規制適用

自身が関与しない取引の決済のために国際送金を行う収納代行業者について、利用者保護やマネー・ローンダリング等のリスクへの対応の観点から、資金移動業の規制を適用するものとなります。

現行の課題改正の要点
商品・サービスの取引成立に関与しない第三者が、国境を跨いで資金を受領・移転する「クロスボーダー収納代行」は、海外オンラインカジノ等で悪用事例が指摘される一方、現行制度では資金移動業に該当しないケースが多く、消費者保護・AML/CFTの観点から規制の対象外となっていました。商品・サービスの取引成立に関与しない者が行うクロスボーダー収納代行について、国際的な要請も踏まえて、利用者保護やマネー・ローンダリング等のリスクへの対応の観点から、基本的には、資金移動業の規制を適用します。 一方、以下のようなリスクが低いと認められる類型(詳細は内閣府令で明確化)は規制対象外とされる予定です。 ①プラットフォーマー等が取引成立に関与する場合 ②エスクロー(条件成就までの一時預かり)等 ③受取人と経済的一体性がある場合 ④他法令で規律されている場合

(出典:金融庁HP 資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料 2025年3月 P5)

6. 資金移動業者の破綻時における利用者資金の返還方法の多様化

資金移動業者の破綻時等の利用者資金の早期返還のため、銀行等の保証機関や信託会社等による資産保全について、既存の供託を経由する返還手続に加え、新たに利用者に直接返還する方法を認めるものとなります。

現行の課題改正の要点
資金移動業者の保全方法には、①供託、②銀行等の保証、③信託が認められてきましたが、破綻時の利用者への返還は「必ず」供託手続(国による配当手続)を経る必要があり、最低でも170日程度の長期化が避けられませんでした。 賃金のデジタル払いのように迅速な返還が不可欠なユースケースへの対応が課題でした。従来の枠組みに加え、④保証機関からの直接返還、⑤信託会社からの直接返還、という二つのルートを新設し、状況に応じて迅速に返還できるようになります。

(出典:金融庁HP 資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料 2025年3月 P6)

7. 施行期日と段階施行の見通し

改正法は、公布日(2025年6月13日)から起算して1年を超えない範囲で政令が定める日に施行されます。これに合わせ、政令・内閣府令・告示・監督指針等の整備が段階的に行われ、電子決済手段・暗号資産・資金移動業の各領域で順次適用が始まる見込みです。

事業者は、施行直前の駆け込み対応を避け、登録・開示・システム改修・社内規程・契約改定等のロードマップを早期に策定することが推奨されます。

著者

原 尚美

税理士法人Right Hand Associates

はら なおみ

主な経歴

東京外国語大学英米語学科卒業。
7人家族に嫁いだが、社会との接点を求めて、税理士を目指す。
TACの全日本答練「財務諸表論」「法人税法」を全国1位の成績で、税理士試験に合格。直後に出産。育児と両立させるため、1991年、1日3時間だけの会計事務所を開業。
事業計画書の作成支援や資金調達サポートなど、地に足のついたクライアント支援を心がけ、スタッフ69名(京都事務所、ミャンマー事務所含む)、上場企業の子会社やグローバル企業の日本子会社などをクライアントにもつまでに成長させた。

主な著書
『フリーランスがインボイスで損をしない本』(2023年1月発売、日本実業出版社)
『第2版 事例解説もう迷わない!税理士のためのクラウドファンディングの実務』(2024年11月発売、第一法規)
『漫画でわかる管理会計』(オーム社)など

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