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Column 経営ダッシュボードとは?目的・メリット・作り方を解説

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 経営ダッシュボードとは、売上や利益、KPIなどの経営指標をリアルタイムに可視化し、迅速な意思決定を支援する仕組みです。ここでは基本、帳票・BI分析との違い、意思決定を速くするメリット、必要項目と構成、業種別KPI、作り方4ステップを実務目線で解説します。

経営ダッシュボードは、売上・粗利・在庫などの重要指標(KPI)を一画面に集約し、経営判断に必要な状況を「同じ定義」「同じタイミング」で把握するための仕組みです。一方で現場では、部門ごとに数字の定義や粒度が揃わず、「会議が数字合わせで終わる」「月次が締まってから課題に気づく」といった悩みが起こりがちです。ここでは、経営ダッシュボードの基本と目的を整理したうえで、意思決定を速くするメリットを解説します。あわせて、同じ定義のデータを揃える進め方として、ERPを土台にした考え方とGRANDITの事例も紹介します。

経営ダッシュボードとは?

経営ダッシュボードは、売上・粗利・在庫などの重要指標(KPI)を一画面に集約し、意思決定に必要な状況を一目で把握するための画面です。実務では、部門やシステムごとに散在するデータを統合し、同じ定義・同じタイミングで見られる形に整えて運用するケースが多く見られます。たとえば、会計・販売・在庫などの基幹データに、CRMやSFAなどの営業・顧客データを組み合わせ、経営指標として扱える状態にします。

KPIを並べるだけでなく、予実差や前年差、悪化といった「例外」を早期に捉え、必要に応じて要因を深掘りしてアクションにつなげる点が特徴です。なお、基幹システムに分析・可視化(BI)機能が備わっている場合は、その機能を活用して構築・運用できることもあります。周辺システムや外部データまで統合したい場合は、DWHやBIツールと組み合わせるなど、目的に応じて構成を検討します。昨今では、これらすべてをERP(統合基幹業務システム)へ統合する動きも増えています。

経営ダッシュボードとレポート/帳票/BI分析との違い

経営ダッシュボードは、レポート/帳票やBI分析と混同されがちですが、目的と使いどころが異なります。いずれも企業データを扱う点は共通するものの、主に「目的」「時間軸」「詳細度」に違いがあります。一言でいえば、ダッシュボードは「今の健康状態を把握するための計器」レポート/帳票は「確定した過去の記録」BI分析は「原因を突き止めるための調査」です。

  区分経営ダッシュボードレポート/帳票BI分析
主な目的意思決定のための状況把握(全体と例外の早期発見)報告・記録・監査(確定値の提示)仮説検証・原因究明(なぜ起きたかの解明)
時間軸現在中心(日次〜週次、場合によりリアルタイム)過去(月次・四半期・年次など締め後)過去〜現在(期間を切って比較・検証)
詳細度要点に絞る(KPI+差分・例外)粒度は固定(明細まで追えることが多い)深い(多軸比較・ドリルダウン)
特徴(使いどころ)「まず何が起きているか」を一目で判断。異常や悪化を起点に、必要に応じて深掘りへつなげる正確性・再現性が最優先。フォーマットが決まっており「根拠を追える」ことが重要切り口を変えながら探索できる。自由度は高いが、都度“考えて操作する”前提で、日々の即断用途には向きにくい

目的は課題解決を速めること

経営ダッシュボード導入の目的は、数字を見えるようにすること自体ではありません。課題に早く気づき、原因の当たりを付け、打ち手を決め、効果を確認するまでのサイクルを短くして、意思決定を前に進めることにあります。自動車の運転席のように、「今、会社が目的地に向かって正しく進んでいるか」をパッと見て判断するためのものです 、以下のような特徴があります。

特徴:グラフやゲージを使い、視覚的にわかりやすく表示されます。
使い道:毎朝チェックして、「売上が目標を下回っていないか?」「在庫が急増していないか?」を確認します 。

経営ダッシュボードの利点を活かして素早い経営判断に活かしましょう。

経営ダッシュボードのメリット

経営ダッシュボードのメリットを、単なる効率化ではなく、事業成長や経営課題の解決につながる観点で3つに整理します。

1.意思決定の速度と質が上がる

経営ダッシュボードを導入すると、「意思決定の速度」と「質」を同時に引き上げやすくなります理由は、以下のとおりです。

  1. 1.「認知」のスピードが上がる(速度の向上)

  1. 2.「共通言語」で議論できる(質の向上)

  1. 3.「因果関係」が可視化される(質の向上)

  1. 4.「情報の民主化」が進む(速度の向上)

 経営判断に必要な情報が部門ごとに分散している状態(情報の非対称性)や、集計・報告に時間がかかる状態(タイムラグ)を抑えられるためです。重要指標を同じ定義・同じタイミングで確認できるようになると、状況把握にかかる時間が減り、議論を“次の打ち手”に向けやすくなります。

2.部門横断で共通言語ができる

経営ダッシュボードが組織に「共通言語」をもたらす理由は、単に数字が見えるようになるからではありません。指標の定義や粒度を揃え、属人的な解釈の余地を減らすことで全員が同じ前提で議論できる環境を作りやすくなるためです。結果として、会議が数字合わせで終わりにくくなり、合意形成と意思決定を進めやすくなります。

  • 指標定義の統一(言葉の定義の標準化)
  • 部分最適から「全体最適」への視点シフト
  • 「ファクト(事実)」ベースの文化への変 容

なぜダッシュボードが共通言語化に寄与するのか、上記3つの観点から整理します。

3.異常の早期検知と深掘りができる

経営ダッシュボードが「異常の早期検知」と「深掘り」に優れている理由は、データの可視化によって変化を目立たせられること、ドリルダウンによって要因を追える構造を持てることにあります。

  • 例外の強調表示・閾値設定により「早期検知」ができる
  • 先行指標により「予兆」を把握し、結果が出る前に手を打てる
  • トレンド(傾向)を可視化し、単発ではなく変化の流れで捉えられる

単なる数字の表では見逃しやすい小さな変化も、例外として抽出し、必要に応じて切り口を変えて原因に近づけます。

経営ダッシュボードに必要な項目と構成

経営ダッシュボードを成功させる鍵は、情報を詰め込むことではなく、「一目で判断し、次のアクションへ繋げられる構造」にすることです。ここでは、効果的なダッシュボードを構築するための「基本構成」と「必須項目」を整理して解説します。

ダッシュボードの標準的な構成(レイアウト)

ダッシュボードは、見た瞬間に「まず何を見るべきか」が迷わないことが重要です。人の視線は一般的に「左上から右下」へ流れるため、重要度の高い情報ほど上段に集約し、徐々に詳細へ降りていく配置にすると、判断と深掘りを同じ流れで進めやすくなります。

 ① 最上段:要約・アラートエリア(Summary)

 ② 中段:傾向・トレンドエリア(Trend)

 ③ 下段:詳細・要因分析エリア(Breakdown)

経営層が必ず入れるべき必須項目

業種に関わらず、経営の「健康状態」を測るために不可欠な項目です。結果(財務)だけでなく、先行(顧客・市場)とプロセス(組織・オペレーション)を揃えることで、問題が表面化する前に手を打ちやすくなります。

 A. 財務(結果)指標

 B. 顧客・市場(先行)指標

 C. 組織・オペレーション(プロセス)指標

【業種別】追加すべき特有項目の例

業種が変わると、利益やキャッシュを左右する「急所」も変わります。そのため、共通の必須項目に加えて、自社のビジネスモデルで“何が成果を決めるのか”に合わせてKPIを追加することが重要です。ここでは、代表的な業種を例に、「追加すべき重要項目」を二軸(領域×業種)で整理します。

追加すべき重要項目(領域)SaaS/サブスク製造業小売・EC建設・プロジェクト型
収益性(利益の源泉)MRR/ARR、粗利率、LTV製造原価、粗利率、標準原価差異粗利率、値引率、販促粗利案件粗利、原価率、追加工事率
成長・需要(先行指標)リード数、SQL、CAC、受注率受注残、需要予測、引合件数客数、CVR、客単価、流入別売上受注高、進行中案件数、見積勝率
継続・品質(失注/解約の芽解約率、NRR、継続率、利用率不良率、手直し率、納期遵守欠品率、返品率、レビュー評価工期遅延率、手戻り件数、品質指摘
供給能力(ボトルネック)CS対応量、オンボーディング工数不良率、手直し率、納期遵守欠品率、返品率、レビュー評価要員稼働率、外注比率、施工能力
キャッシュ/在庫・資金回収サイト、MRR回収期間在庫回転、滞留在庫、仕掛在庫回転、滞留/死に筋入金遅延、出来高請求、未収金

ポイント:どの業種でも「全部盛り」は逆効果です。まずは“急所”を特定し、異常(例外)を早く拾える項目から追加すると、判断とアクションにつながりやすくなります。

失敗しないための「設計の鉄則」     

見た目を整える前に、意思決定につながる“迷わない設計”を優先します。次の3点を押さえるだけでも、使われないダッシュボードになりにくくなります。

・「1画面1テーマ」に絞る

 ・比較対象を置く

 ・アクションを促す色使い

経営ダッシュボードの作り方

経営ダッシュボードの構築は、ツール選びから始めるのではなく、「経営課題の整理」から始めるのが成功の鉄則です。以下の4ステップで進めることで、実用性の高いダッシュボードが完成します。

ステップ1) 目的の定義とKPIの選定

最初に決めるべきは画面デザインではなく、「どの意思決定に使うか」です。誰が、何を、いつ決めるのかを具体化し、会議体や承認フローと結び付けて運用の前提をそろえます。ここが曖昧だと、KPIが増えすぎたり、必要な粒度が定まらなかったりして、結果的に使われないダッシュボードになりやすくなります。

 ターゲット(利用者)の特定経営層なのか、事業責任者なのか、現場責任者なのかで必要な粒度が変わります。
KPI(重要業績評価指標)の絞り込み全部を見るのではなく、「意思決定に必要な要点」に絞ります。

比較軸(予実/前年差/目標など)の設定判断を迷わせないため、基準(目標)と差分(ズレ)をセットにします。  

ステップ2) データソースの特定と整理

次に、必要なデータがどこにあるかを確認し、システムをつなぐ準備をします。ここを飛ばすと、二重台帳や手作業の集計が残り、ダッシュボードへの信頼が落ちやすくなります。

データ所在の確認ERP、CRM、SFA、在庫管理など、KPIに必要なデータを洗い出します。

データのクレンジング表記ゆれ・欠損・重複の整理を行います。取引先名や商品名の揺れ、重複、欠損を整え、同じものを同じIDで扱えるようにします。
更新頻度の決定KPIごとに「日次/週次/月次」など、運用できる現実的な頻度を決めます。  

ステップ3) 可視化(デザイン)と構築

BIツール(Tableau、Power BI、Looker Studioなど)を使い、直感的にわかる画面を作ります。ここで大事なのは、見栄えよりも「見る順番」と「例外の見つけやすさ」です。

適切なグラフの選択比較や推移、構成比など、目的に合った表現を選びます。

視線誘導の設計使ってみて初めてわかる不足を、軽微な改善で回します。
アラートの設定閾値超え、前年差悪化などを早く拾えるようにします。

ステップ4) 運用ルールの策定と改善

最後に、「見て終わり」にせず、組織の行動を変える仕組みを整えます作っただけでは定着しないため、会議体と運用ルールをセットで設計します。

閲覧サイクルの定着いつ、誰が、どの画面を見るかを決め、会議運用に組み込みます。

フィードバックの収集と修正使ってみて初めてわかる不足を、軽微な改善で回します。
ドリルダウン(深掘り)の訓練例外を見つけたときに、どこまで掘って何を決めるかをルール化します。

ERPで実現する経営ダッシュボード

ERP(基幹業務システム)を導入済みの企業にとって、経営ダッシュボードの導入は「眠っているデータの宝の山」を「経営の武器」に変えることを意味します。ERP単体では見えにくい「相関」や「例外」を可視化できる点が強みであり、ここではメリットを3つに整理します。

散在する「点」のデータを「線」でつなげる

ERP内には、販売、在庫、購買、会計、人事など膨大なデータが蓄積されています。しかし、標準機能の帳票だけでは、各モジュールをまたいだ相関関係が見えにくいのが実情です。そこで「在庫の急増(在庫管理)」が「キャッシュフローの悪化(財務会計)」にどう直結しているか、あるいは「営業活動量(SFA連携)」が「将来の売上(販売管理)」にどう影響するかをつなぎ、部門横断のストーリーとして把握しやすくなります。

現場の「実績」を「経営の判断材料」へ即座に変換

ERPの標準レポートは、正確な「実績報告(過去)」には強い一方、経営者が判断を下すための「状況把握(現在・未来)」には加工が必要です。ERPからデータを取り込み、ダッシュボードが自動で集計・グラフ化することで、Excelへの転記・加工といった付加価値の低い作業を減らせます結果として、現場で今起きていることを、鮮度の高い情報のまま判断材料にできます。

「異常値」への即時対応(例外管理の実現)

ERPには全取引が記録されますが、その中から「問題がある取引」だけを見つけ出すのは容易ではありません。ダッシュボード側で「予算進捗率80%未満」「在庫回転率の急落」などの閾値を設定しておくことで、ERP内の膨大なデータから「今すぐ対策が必要な異常」だけを浮き彫りにできますこれにより、経営者はすべてのデータに目を通す必要がなくなり、重要な例外事象のみに集中(例外管理)できます。

事例で見る経営ダッシュボードの実装ポイント

実際に基幹データを整備し、経営情報の見える化を進めた企業の取り組みは、ダッシュボード設計の論点を具体化するうえで参考になります。ここでは、基幹データの整備と可視化を、意思決定につなげた2社の事例から実装の勘所を整理します。

事例1:マツオカコーポレーション SCMと経理を統合し見える化

マツオカコーポレーションは、アパレル製品を手掛けるOEMメーカーで、海外にも複数の生産拠点を展開しています。生産・物流の状況と経営数字をタイムリーにつなぐため、基幹システムの刷新に取り組みました。課題は、SCM側の情報を会計側へ手作業で移し替える運用が残り、二重入力やチェック負荷、操作ミスのリスクを抱えていたことです。その結果、正確な経営管理情報をリアルタイムに把握しにくい状況でした。

打ち手として、SCMと債権債務・経理領域を統合し、データの整合性を高めました。これにより、経営情報を迅速に確認できる状態に近づき、意思決定のスピードアップと業務効率の向上につながったと整理できます。運用面では、導入当初は反発もあった一方、運用が回るにつれて「仕事がやりやすくなった」という声が増え、見える化が定着していった点が示唆になります。

事例2:芝浦電子 意思決定の迅速化と統制を両立

芝浦電子は、温度・湿度を計測するセンサメーカーです。内部統制への対応を契機に、グループを含めた基幹システムの刷新と業務プロセスの標準化を進めました。課題は、グループ間の情報伝達に時間がかかること、統計データ作成の集計業務が手作業に依存していたこと、法改正や内部統制への迅速な対応が求められていたことです。

打ち手として、基幹データを集中管理し、画面参照で子会社データを把握できる状態を整えました。これにより、経営層へ精度の高いデータを迅速に提供しやすくなり、意思決定の短期化につながったと整理できます。あわせて、業務間連携により集計作業が効率化され、人為ミスの抑制とデータの信頼性向上にも寄与しています。可視化の前提として、手作業集計を減らし、標準化されたプロセスと整合したデータで回すことが重要だと示す事例です。

次の一手:判断できる状態を先に整える

経営ダッシュボードは、数字を見栄えよく並べるための画面ではなく、課題の発見から打ち手の決定までを速く回すための仕組みです。まずは「誰が・何を・いつ決めるか」を起点に、見るべきKPIを絞り込み、定義・粒度・更新タイミングをそろえて、部門をまたいでも同じ数字で議論できる土台を整えましょう。あわせて、権限管理、定義変更のルール、根拠を追える証跡といった運用面を最小限で固めておくと、作って終わりになりにくく、改善を回しやすくなります。

なお、部門やグループごとにデータが分断されている状態では、「見えない」「揃わない」「決められない」が起こりやすく、ダッシュボードを作っても定着しにくくなります。次の資料では、データサイロ化の弊害と解消の考え方を整理しているため、ダッシュボード構築の前提を押さえつつ、検討を具体化する際に役立ちます。ぜひダウンロードしてご活用ください。

グループ企業における経営情報の可視化
データサイロ化の弊害と解決方法とは

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