前回に引き続き、新リース会計基準の解説を行います。
今回は借手の開示(表示・注記)に関して、具体的に解説したいと思います。
※当コラムはあくまで2023年5月2日に公表された公開草案をベースに記載します。今後の審議の状況等によって、内容が異なる可能性がある事に御留意ください。
(1)表示
- 概要
借手の会計処理をIFRS第16号と整合的なものとする中で、借手の表示についても、IFRS第16号と整合的なものとなっています。
- 表示方法
①使用権資産
次のいずれかの方法により、貸借対照表において表示します。
ただし、いずれの方法によっても、使用権資産の帳簿価額について、表示科目ごとの金額の開示が求められます。a.対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に、貸借対照表において表示するであろう科目に含める方法
b.対応する原資産の表示区分(有形固定資産、無形固定資産又は投資その他の資産)において使用権資産として区分する方法
②リース関係
a.リース負債について、貸借対照表において区分して表示する又はリース負債が含まれる科目及び金額を注記します
このとき、貸借対照表日後1年以内に支払の期限が到来するリース負債は流動負債に属するものとし、貸借対照表日後1年を超えて支払の期限が到来するリース負債は固定負債に属するものとしますb.リース負債に係る利息費用について、損益計算書において区分して表示する又はリース負債に係る利息費用が含まれる科目及び金額を注記します
(2)注記事項
- 概要
借手の会計処理をIFRS第16号と整合的なものとする中で、借手の注記事項についても、IFRS第16号と整合的なものとなっています。ただし、国際的な比較可能性を大きく損なわせない内容(少額リースの費用に関する注記等)については、取り入れないこととしています。
- 開示目的
注記は、財務諸表本表で提供される情報と合わせて、リースが財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに与える影響を財務諸表利用者が評価するための基礎を与える情報を開示することにあります。
- 借手の注記
開示目的を達成するため、リースに関する注記として、次の事項を注記します。
① 会計方針に関する情報
- リースを構成する部分とリースを構成しない部分とを分けずに、リースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分とを合わせてリースを構成する部分として会計処理を行う選択
- 指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料に関する例外的な取扱いの選択
- 借地権の設定に係る権利金等に関する会計処理の選択
② リース特有の取引に関する情報
<貸借対照表に関する情報>
- 使用権資産の帳簿価額について、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合の表示科目ごとの金額
- 指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料に関する例外的な取扱いにより会計処理を行ったリースに係るリース負債が含まれる科目及び金額
- 償却していない旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等が含まれる科目及び金額
<損益計算書に関する情報>
- 短期リースに係る費用の発生額が含まれる科目及び当該発生額
- リース負債に含めていない借手の変動リース料に係る費用の発生額が含まれる科目及び当該発生額
<セール・アンド・リースバック取引に関する情報>
- セール・アンド・リースバック取引から生じた売却損益を損益計算書において区分して表示していない場合、当該売却損益が含まれる科目及び金額
- セール・アンド・リースバック取引の主要な条件
<サブリース取引に関する情報>
- 使用権資産のサブリースによる収益を損益計算書において区分して表示していない場合、当該収益が含まれる科目及び金額
- 中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合のサブリース取引について計上した損益が含まれる科目及び金額
- 利息相当額控除前の金額で計上する場合に、転リース取引に係るリース債権又はリース投資資産とリース負債が含まれる科目並びに金額
③ 当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報
- リースに係るキャッシュ・アウトフローの合計額
- 使用権資産の増加額
- 対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に、貸借対照表において表示するであろう科目ごとの使用権資産に係る減価償却の金額
④ 定められた①~③の注記事項以外に、開示目的に照らして注記する情報
(例)
- 借手のリース活動の性質
- 借手が潜在的に晒されている将来キャッシュ・アウトフローのうちリース負債の測定に反映されていないもの
- 借手がリースにより課されている制限又は特約
- 借手がセール・アンド・リースバック取引を行う理由及び取引の一般性
※注記を記載するにあたり、上記に示す区分に従って記載する必要はありません
※リースに関する注記を独立の注記項目とします
ただし、他の注記事項に既に記載している情報については、繰り返す必要はなく、当該他の注記事項を参照することができます
以上
<参考>
リースに関する会計基準(案)(企業会計基準公開草案第73号)
リースに関する会計基準の適用指針(案)(企業会計基準適用指針公開草案第73号)
- 第2回:
- なぜ利益が出ているのに、お金がないのか
- 第6回:
- 不正会計は他人事ではない
- 第12回:
- インボイス制度とは?税理士が解説する基礎知識
- 第13回:
- インボイス制度の解説②
- 第14回:
- インボイス制度の解説③
- 第15回:
- インボイス制度の解説④
- 第16回:
- インボイス制度の解説⑤
- 第17回:
- インボイス制度の解説⑥
- 第18回:
- 雑所得と事業所得の判断基準の明確化
- 第22回:
- 会計上の減価償却の解説
- 第23回:
- 棚卸資産の評価に関して
- 第24回:
- 固定資産の減損会計に関して
- 第25回:
- 固定資産の減損会計に関して②資産のグルーピング
- 第26回:
- 固定資産の減損会計に関して③減損の兆候
- 第27回:
- 固定資産の減損会計に関して③減損損失の認識
- 第28回:
- 固定資産の減損会計に関して④減損損失の測定
- 第29回:
- 新リース会計基準に関して
- 第30回:
- 新リース会計基準に関して2(リースの識別)
- 第31回:
- 新リース会計基準に関して3(リース期間)
著者
主な経歴
公認会計士・税理士。大手監査法人勤務を経て現職。
大手監査法人において12年にわたり、公認会計士として、主に会計監査業務及び会計支援業務、内部統制監査業務及び内部統制支援業務、IFRS支援業務に従事するほか、IPO支援業務、任意監査業務、不正対応業務、財務デューデリジェンス業務等を多数手掛ける。上場準備会社を東証1部上場会社まで支援した実績あり。
上場企業はもちろんのこと中小企業の会計支援、管理体制支援及びスタートアップ企業のIPO支援、M&Aを得意とする。