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Column 製造業ERP導入・更改、成功への羅針盤 - 情報システム/生産管理部門が進む道

公開日:

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著者

みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社

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みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社

はじめに


多くの製造業において、人材不足の深刻化やステークホルダーからの統制要求の高まりを背景に、ERP導入・更改の重要性が増しています。しかし、計画倒れや期待外れの結果に終わるケースも少なくありません。特に、ステークホルダーの関心事の違い、工場ごとに改善されてきた業務プロセス、そして長年改修を繰り返して利用してきた情報システムのサイロ化・ブラックボックス化は、プロジェクトを複雑化させる要因となります。本コラムでは、製造業における基幹システムのリプレイス・ERP導入を支援するITコンサルタントの視点から、成功に導くための重要なポイントを、中立かつ公正な立場で解説します。

1.プロジェクト成功の鍵は「推進の基盤づくり」

ERP導入・更改を検討する際、多くの企業はまず製品を選定するために情報収集に取り組みます。同様に大事なのは、集めた情報を最大限に活用し、その先の活動に繋げるために自社における強力なプロジェクト推進基盤を整えることです。

代表的な理由を3つ述べます。

  • 基幹システム更改・ERP導入は単なる情報システムの1施策ではなく、将来にわたって事業を継続・発展するために会社として重要な投資であるためです。
  • 多大な投資と長期的な取り組みを要し、全社的な目的意識と共通認識の醸成が不可欠なためです。
  • 最適なパートナーや製品を選定する上で自社の業務プロセスや意思決定の特徴を理解することが重要なためです。

この推進基盤を確立するために、以下のようなアクションを推奨します。

  • 経営層がプロジェクトの目的と意義を自分の言葉で繰り返し発信し、強いコミットメントを示し続けます。
  • 情報システム部門と生産管理部門が、経営層と現場の架け橋となり、本プロジェクトを契機に全社で会社の将来像を共に描く機運を高める役割を担います。
  • 自社を客観的にとらえ、その特性を明確に言語化して他社に伝えるために、必要に応じて専門的な知識やノウハウを持つ人材の獲得、あるいは外部リソースを活用します。

次に、基幹システム更改において成功の鍵となる「ステークホルダー」、「業務プロセス」、「情報システム」3つの観点からその理由と具体的なアクションを深堀して解説します。

2.【観点①ステークホルダー】現場を巻き込んだ推進体制

ポイント:ERPは「導入して終わり」ではなく、日常業務での継続的な活用を通じて初めてその真価を発揮します。そのためには製造現場を積極的に巻き込み、経営・現場・IT三位一体となった協力体制を構築することが不可欠です。

その理由を3つ述べます。

  • 現場の理解と協力がなければ「やらされ感」が先行し、データの入力負荷などへの反発を招き、導入後の利活用が進まなくなるリスクがあるためです。
  • 一部の関係者だけで進めるトップダウン型のアプローチでは、現場のニーズとの大きな乖離が生じ、絵に書いた餅になる可能性が高まるためです。
  • プロジェクトを通じて行う業務目的や業務内容の文書化と共有は人材育成の絶好の機会となり、部門間の相互理解を深めます。これにより将来を見据えた業務改善を推進する原動力として活用できるためです。

理由に対し考えられるアクションを示します。

  • 現場の負担を過度に懸念せず、幅広い知見を持つベテランや次世代を担うであろう方をプロジェクトに積極的に参加させ、多様な意見を取り入れます。
  • ERP導入をゴールとせずその後現場の業務運用を見据え、方針や目指す姿を言語化し、「自分たちの手で」実現する未来を描きます。
  • 基幹システム更改は数年にわたる取り組みにとなるため、取り組みの節目では参画者全員で活動をふりかえり、組織と個人の成長を皆で体感し次へのモチベーションに繋げます。

3.【観点②業務プロセス】全社視点での業務標準化 - 工場ごとの「常識」からの脱却

ポイント:個別工場の独自性をそのまま受け入れ・再現するのではなく、全社的な視点に立ち業務標準化を徹底することが、ERP導入効果を最大限に引き出す鍵となります。

その理由を2つ述べます。

  • 現状をそのままにERPで実現しようとすると、各工場それぞれの要求に対応するための過度なカスタマイズによりコスト増に直結するためです。またカスタマイズは初期導入のみならず導入後の保守運用サポート、法改正対応、機能追加などERPのバージョンアップの都度、継続的に個別費用が発生することが一般的なためです。
  • 各工場の現状を尊重しすぎると、ERPの強みである標準機能を活かせず、業務プロセスの最適化や組織全体の柔軟性を阻害し、結果として会社全体の競争力低下を招く一因になるためです。

理由に対し考えられるアクションを示します。

  • ERP標準機能を活用する業務プロセスを基本方針とし、カスタマイズは自社の強みを生かすための投資といえるか、代替策はないか、稼働後の影響も含め検討し、全社的な視点からその必要性を判断する仕組みを確立します。
  • 製品選びの前に、まずは現状の業務課題の洗い出しを行いましょう。例えば重複作業、ボトルネックとなっている部分を各工場で特定し、ERPを活用して全社的な業務プロセスをどのように再構築するか検討します。ERPを業務の軸とすることで手順が明確になり、属人化が低減され、内部統制の強化に繋がります。これにより誰が担当しても同品質の業務遂行が可能になり、急な欠員や異動にも柔軟に対応できる強靭な組織へと変革します。

4.【観点③情報システム】システム全体像の設計と段階的導入 - 無理のない変革へ

ポイント: 複雑化する課題に対し、単一のシステムで一度にすべてを解決しようとせず、下図3層モデル(例:経営管理ERP、工場管理MES、機器・制御DCS等)を意識し、システムの役割分担を明確にした上で、段階的な導入計画を策定することが重要です。

その理由を2つ述べます。

  • 要求が多岐にわたり、量が多くなりすぎると、プロジェクトが複雑化し、品質・コスト・納期の(QCD)面で極めて高いリスクを伴うためです。
  • 一度に全てを変えると業務負荷は非常に高く、現場が混乱し、定着化がスムーズに進まないためです。

理由に対し考えられるアクションを示します。

  • まずはシステムの現状を棚卸し、既存システムの役割と機能を「見える化」します。その上で、どのような時間軸でどのシステムを導入・刷新していくかの全体構想を策定します。社内外向けの帳票やインターフェース(IF)、そしてシステムの周辺で利用されているExcelマクロ等のツールも全容を一覧化しておくことは、新たなシステムに求める要件を整理するときに上で非常に有効です。
  • 既存のシステムとの連携を十分に考慮し、導入フェーズごとに効果を検証しながら更改を進めます。システムの導入・更改は年単位の活動となるため、フェーズを区切ることで内外の環境変化にも柔軟に適応し、着実にプロジェクトを推進することが可能になります。

おわりに

ERP導入・更改は、企業にとって大きな投資であり、将来を左右する重要な機会です。本コラムで述べたポイントが、読者の皆様の基幹システムの更改やERP導入プロジェクトを成功に導き、自社の課題解決、ひいては持続的な成長に向けた確かなステップアップの機会となることを心から願っています。

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