
レガシーシステムとは、保守や改修が難しくなり、経営の足かせや運用コスト増の原因となっているシステムのことです。経済産業省が2018年に発表したDXレポートに登場した言葉で、「古い=レガシー」ではなく、技術の老朽化・システムの複雑化・ブラックボックス化・IT投資の不足といった要因が重なり、改修に手が出せない状態になっていることが本質的な問題です。
ここでは、定義と具体例をおさえたうえで、脱却が進まない理由と具体的な解決策・脱却事例まで解説します。
レガシーシステムとは
レガシーシステムとは、継続的な保守や改修が難しくなり、経営や事業の足かせや運用コストの増大につながっているシステムのことです。
経済産業省*1では、レガシーシステムを次のように定義しています。
「運用維持保守や機能改良が困難な状態に陥り、経営・事業戦略上の足枷、高コスト構造の原因となっているシステム」
単に導入から年月が経過していることをレガシーシステムとは扱いません。同レポートは、レガシーシステムについて、次の5つの要因をあげています。
| 観点 | 区分 | 詳細 |
|---|---|---|
| 技術 | ①技術の老朽化 | 古い技術・パッケージで構成され、対応できる技術者の高齢化・離脱が進んでいる |
| 技術 | ②システムの肥大化・複雑化 | 機能追加を重ねた結果、変更・改良が困難になっている |
| 技術 | ③システムのブラックボックス化 | 仕様書・設計書が整備されておらず、属人的な運用が続いている |
| 経営 | ④IT投資がされていない | ITをコストと見なし、必要な予算が確保されていない |
| 経営 | ⑤古い制度としがらみ | 古い業務プロセスや現場の抵抗感が、システム変更を阻んでいる |
古い技術を使ったシステムでも、保守・改修の見通しが立っていればレガシーシステムとは呼びません。しかし、メインフレームなどの古い実行環境から移行した後に運用課題が残れば、再レガシー化してしまう可能性もあります。
*1 出典:経済産業省「DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」令和7年5月28日
レガシーシステムの具体例
ここでは代表的なレガシーシステムの具体例を表にまとめました。
| 分類 | 具体例 | 主な問題 |
|---|---|---|
| 開発言語 | COBOLで書かれた基幹システム | 保守できる技術者が国内でも希少 |
| ハードウェア | メインフレーム(汎用機) | 保守部品の入手が困難 |
| OS・インフラ | Windows Server 2012など保守期限切れのOS上で稼働 | セキュリティパッチが提供されない |
| パッケージ | 独自カスタマイズを重ねたERP | バージョンアップ不可・ベンダーも全体を把握できない |
| 内製システム | 特定の担当者が管理するAccessデータベース | 担当者の退職と同時に保守不能になる |
上記の例に共通して見られる特徴は、次のとおりです。
- 仕様が不明確で、改修の影響範囲が読めない
- 特定の人物や技術に依存した運用が続いている
- 新しいサービスやシステムとの連携が困難
- 保守期限切れのOSやハードウェア上で稼働している
特徴が複数当てはまるほど、レガシー化と脱却の難易度は高まる可能性があります。
レガシーシステムの問題点
レガシーシステムを放置すると、経営やサプライチェーン全体にリスクが波及する可能性があります。経済産業省DXレポート(2018年)*1は、デジタル化の遅れへの対応を怠ると、2025年以降に毎年最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると指摘しました。いわゆる「2025年の崖」です。
課題は未だ残り続けており、同レポートでは、レガシーシステムを保有するユーザー企業が61%にのぼると示されています。

レガシーシステムが残り続けると、保守切れや移行タイミングでのシステム障害、IT人材の需給ギャップの拡大、産業競争力の低下といった経営上の問題が連鎖し、自社を超えて取引先やサプライチェーン全体へ波及することが懸念されています。
レガシーシステムからの脱却が進まない3つの理由
いずれ対応が必要と分かっていても、着手できない企業は少なくありません。脱却が進まない背景には、次の3つの壁があります。
- 設計書と実態が乖離し全体像が把握できない
- 稼働しているシステムの改修に強い抵抗感がある
- 古い技術やシステムを扱えるエンジニアがいない
1.設計書と実態が乖離し全体像が把握できない
数十年運用しているシステムでは、度重なる部分的な改修によって例外処理や仕様書に記載のない仕様が増え、設計書と実態が乖離してしまう場合があります。法改正対応などでは設計書更新が後回しになることもあり、全体像を把握できなくなることも少なくありません。
こうした状況では、放置するほど刷新時の調査コストが膨らむため、難易度が高まります。
2.稼働しているシステムの改修に強い抵抗感がある
利用者にとって改修は、画面レイアウトの変更や操作手順の覚え直しを伴うため、以前よりも使いにくくなるかもしれないといった不安が生じやすい傾向があります。
加えて、並行運用期間中は業務負荷も増えるため、稼働中のシステムを改修することに、強い抵抗感があります。
こうした抵抗感は、現場からの現行機能の維持要望にもつながり、アドオン開発や将来的な運用コストの増加を招きます。カスタマイズが積み重なるほど技術負債は増え、レガシーシステムからの脱却自体がより一層難しくなります。
基幹システムの入れ替え失敗事例、原因と対策
基幹システムの入れ替えは難易度が高く、失敗した場合の業務影響は計り知れないものがあります。十分な計画を策定し、リスクの想定と対策の検討が重要です。本記事では、実際の失敗事例を基に、失敗の原因と事前に講じるべき対策を分かりやすく解説します。
3.古い技術やシステムを扱えるエンジニアがいない
古い技術やシステムを扱うエンジニアが社内に不足していることも、レガシーシステムからの脱却を先送りする大きな要因です。
COBOL(メイン)やRPG全盛期に構築したベテランは60代後半から70代に差し挂かり、再雇用でつないできた人材も完全に退職する時期を迎えつつあります。

出典:参考資料3 IT人材育成の状況等について , 経済産業省
古い技術の技術継承が途切れると、技術的な対応力はもちろん、仕様書にない暗黙知も失われていきます。
その結果、現行システムの可視化や移行の難易度が高まるでしょう。移行には数年を要するため、「知っている人がいなくなる前に着手できるか」が、脱却の成否を左右するポイントとなります。
レガシーシステムから脱却する方法
レガシーシステムからの脱却は、次の3つのステップで進めます。
- 既存の業務やシステムの現状分析を行う
- ERPやクラウドなどのモダンな技術を用いて業務を再構築する
- 段階的なシステム移行を実施する
1.既存の業務やシステムの現状分析を行う
まずは、現行システムの仕様や機能の利用状況などの現状分析・可視化が必要です。分析なしに移行を始めると、不要な機能まで引き継いでしまい、コストを圧迫してしまう可能性が高まります。
現状分析で実施すべき具体例は、次のとおりです。
| 実施項目 | 内容 |
|---|---|
| IT資産台帳の作成 | ハードウェア・ソフトウェア・ネットワーク・データベースをすべて一覧化し、相互依存関係も整理する |
| 業務とシステムの対応関係の整理 | どの業務で使っているか、どの機能が業務のどのステップに紐付いているかを洗い出す |
| 保守体制・担当者の確認 | 誰がメンテナンスしているか、特定の担当者に依存した属人化がないかを把握する |
| ドキュメント整備状況の確認 | 仕様書・設計書がどこまで残っているか確認し、ブラックボックス化の深さを測る |
| 今後の必要性の判断 | 継続・廃止・移行・再構築の4つの観点で仕分ける基準を設ける |
不要な機能を移行対象から外せるほど、コストと移行後の不具合リスクを抑えられます。
2.ERPやクラウドなどのモダンな技術を用いて業務を再構築する
レガシーシステムからの脱却は、ERPやSaaSなどのパッケージを活用した業務の標準化が有効です。
スクラッチ開発にこだわらず「システムに業務を合わせる」発想に転換することで、業務プロセスの標準化とブラックボックス解消を同時に進めやすくなります。
【具体的なアクション例】
- 現状の業務プロセスをERP標準仕様と照らし合わせるFit&Gap分析を行う
- ギャップが残る業務は「システムに業務を合わせて見直す」ことを前提に検討し、カスタマイズは最小限にとどめる方針を経営層が明確に決める
- クラウドとオンプレミスはどちらも選択肢として持ち、自社の規模・要件に応じて選ぶ
業界標準のベストプラクティスを内包し、モダンな技術要素で開発されたERPを活用しての業務再編は、有力な選択肢のひとつと言えるでしょう。
3.段階的なシステム移行を実施する
システム移行では、優先度の高い業務・リスクの低い領域からスモールスタートで移行することが、失敗を防ぐうえで有効です。大規模プロジェクトほど難易度が高く、各フェーズでリスクが積み重なるためです。
段階移行の一例として、次の流れで進める方法があります。
| フェーズ | 移行領域 | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 会計・人事系 | ・社外(顧客・取引先)への影響がなく、社内完結で切り替え可能 ・法令・会計基準のもとで業務が標準化されており、ERPの標準仕様との親和性が高いため、カスタマイズも最小限に済む |
| 2 | 販売・在庫管理 | ・顧客への出荷・受注に直結し、データや各種機能などが外部と連携している場合が多い ・フェーズ1での移行課題と対策を踏まえ、着手するとリスクを下げられる |
| 3 | 全社統合 | ・フェーズ1〜2で移行した領域を統合し、取引先・商品・部門などのマスタを全社共通化 ・部門ごとに分断されていたデータと業務フローを一本化し、全社員が同じシステム・同じデータで業務できる基盤を整える |
各フェーズで動作確認と現場のフィードバックを挟むことで、次のフェーズのリスクを押さえることができます。
GRANDIT導入によるレガシーシステム脱却事例
GRANDITは、日本の商習慣に対応した完全Web型の統合型ERPです。
ここでは、多くの企業が抱えていたレガシーシステムを取り巻く課題を、どのように解決し、どのような効果を得たのか、3つの導入事例を紹介します。
事例1.情報サービス業での脱メインフレーム

| 企業名 | 株式会社タイトー様 |
|---|---|
| 事業内容 | ・アミューズメント施設の企画、運営およびフランチャイズ事業 ・アミューズメント機器の開発、製造、販売、レンタル、およびアミューズメント機器のメンテナンスサービス ・オンラインクレーンゲームの開発、運営、配信 ・アミューズメント施設向け景品の企画、開発、販売 ・ハイエンドフィギュアやキャラクターくじ商品、市販玩具(TOY)の企画、開発、販売 ・PC・家庭用・モバイルゲームの企画、開発、運営、配信、その他 合法的な一切の事業、前記に附帯又は関連する一切の事業 |
| 資本金 | 5千万円(2025年3月31日現在) |
| 従業員数 | 821名(2025年3月31日現在) |
タイトー社は、ゲーム・エンターテインメント業界で知られ、全国にアミューズメント施設「タイトーステーション」を展開しています。
同社は約25年前のIBM i(旧AS/400)ベースのスクラッチシステムを使い続け、改修を重ねるうちに複雑化していきました。限られた担当者しか操作できない業務の属人化が進み、IBM iを熟知したエンジニアの減少により運用リスクも深刻化する状況にありました。

GRANDIT導入により、受発注・商品・取引先の各マスタを全社統合し、属人化を解消。全社員が同じ画面・データで業務できる基盤が実現しました。
事例2.製造業でのブラックボックス化の解消

| 企業名 | 川崎重工グループ様 |
|---|---|
| 事業内容 | 船舶、鉄道車両、航空機、宇宙機器、ジェットエンジン、各種エネルギー設備、各種舶用機械、プラントエンジニアリング、鉄鋼構造物、各種油圧機器、産業用ロボット等の製造・販売 |
| 資本金 | 104,484百万円(2025年3月31日現在) |
| 従業員数 | 単体14,597人、連結40,640名(2025年3月末現在) |
川崎重工グループは、船舶・鉄道車両・航空機・プラントエンジニアリング・産業用ロボットなどの製造・販売を手がける総合重工業メーカーです。連結約3万人・百数十社のグループ会社を持ちます。
グループ関連子会社向けに約10年使い続けたクライアント・サーバー型(各利用者のPCにプログラムを配布して利用する方式)の内製基幹業務ソフトでは、法改正のたびに自社でプログラム改修が必要でした。
クライアント・サーバー型では改修の都度、各利用者のPCへプログラムを配信・設定する作業も伴い、新規PC導入時も同様の対応が求められます。さらに最新OSへの対応追従も自社で対応する必要があり、保守コストは増大し続けていました。

完全Web型のGRANDITをグループ16社にASP型で展開し、法改正対応の負荷を激減。クライアントへの設定作業を撤廃し、保守コストの削減を実現しました。
事例3.商社・卸売業での基幹システム統合

| 企業名 | 三菱商事プラスチック株式会社様 |
|---|---|
| 事業内容 | 合成樹脂原料・製品ならびに関連商品の国内取引、輸出入取引、パレット・コンテナー・ラックなどの物流関連資材、器材の販売・賃貸借及び管理業、コンビニエンスストアなどリテイラー向け用度品、物販商品の国内取引、輸出入取引、成形加工機械、包装機械及びこれら機器部品の販売・輸出入・賃貸借、電子機器用部品の販売・輸出入、各種システム・エンジニアリング、及びその他ソフトウェアの企画・開発・販売、情報処理サービス、知的財産権 |
| 資本金 | 647百万円(2026年5月7日時点) |
| 従業員数 | 210名(2026年5月7日時点) |
三菱商事の100%子会社で、合成樹脂原料・製品の国内取引・輸出入を手がける専門商社では、営業システムと会計システムが1日数回のバッチ連携にとどまり、連携完了まで財務部門が支払伝票を出力できないなど業務が中断していました。
紙の業務プロセスが137件あり、管理・保管コストも重い負担となっていたほか、営業システムのサーバーOSがサポート終了を迎えたことが対応の契機となりました。
GRANDITで営業・会計システムを統合しリアルタイム連携を実現。会計伝票から営業データをワンクリックで参照できるようになり、紙の業務プロセスは137件から33件へと大幅に削減、年間23,000枚の書類の電子化を達成しました。
導入事例:旧会計システムMINTSからの脱却― GRANDITで営業・会計システムを統合
レガシーシステムからの脱却を機に「攻めのIT投資」へ
レガシーシステムへの対応を「いずれ必要になる守りのコスト」と捉える経営者は少なくありませんが、現状の可視化と段階的な移行によって脱却を進めることは、変化の激しい市場で攻め続けられる体制を整えることにもつながります。
「2025年の崖」を過ぎた今、レガシーシステムを放置すればセキュリティ・コスト・人材の問題は深刻化する一方です。近年加速する生成AIをはじめとしたデジタル技術の活用には、部門をまたいで整備されたデータ基盤が前提となるため、レガシー化したシステムを抱え続ける企業と、モダンな基盤へ移行した企業との差はこれからさらに広がっていくでしょう。
ERPを活用したレガシー脱却は、単なるシステム刷新ではなく、将来の再レガシー化を防ぎながら意思決定の精度を高める投資です。
レガシーシステム脱却にERPを検討されている方は、GRANDITの導入事例やお役立ち資料もあわせてご覧ください。
他社ERPからの乗り換え事例集
実際にGRANDITへ他社から乗り換えされたお客様の事例を基に、多くの企業が抱える共通の課題と、その解決策、そして他社からの乗り換えによって得られた成功をご紹介します。