ZEB（ゼブ）
ZEB（ゼブ）とは「Net Zero Energy Building（ネット・ゼロ・エネルギー・ビル）」の略称で、「年間の一次エネルギー消費量が正味（ネット）でゼロになることを目指した建物」を指します。空調・照明・給湯・換気など、建物が使用するエネルギーを大幅に削減したうえで、再生可能エネルギーなどで自家発電を行い、エネルギーの収支を±0に近づけるのが目的です。
日本政府はカーボンニュートラル実現に向け、新築の公共建築物はZEB化を目指すことを推進しており、建設業界にとっても大きな転換点となっています。
1. ZEBの4つの段階
ZEBはその達成度に応じて以下の4つに区分されます。
段階的な目標を設定することで、事業者の負担を抑えながら導入を促進しています。
| 区分 | 達成度 |
|---|---|
| ZEB | 建物の一次エネルギー消費量を100％以上削減（正味ゼロ） |
| Nearly ZEB | 75%以上削減（再エネ導入でネットゼロに近い） |
| ZEB Ready | 50%以上削減（再エネは未導入だが省エネ性能は高い） |
| ZEB Oriented | 大規模建築物向け、40%以上削減（段階的な導入） |
2.ZEBを構成する3つの要素
ZEBは単なる省エネ建築ではなく、設計段階からの統合的なアプローチが求められていて、以下の3つの要素が不可欠です。
| 構成要素 | 内容 |
|---|---|
| 高効率な省エネ技術の導入 |
高断熱外皮（Low-Eガラス、断熱材強化） LED照明・人感センサー 高効率空調（インバーター式、全熱交換器など） 自然採光・自然通風の設計 |
|
エネルギーマネジメント （BEMS） |
BEMS（Building Energy Management System）を導入し、リアルタイムでエネルギー使用状況を可視化・最適制御することが、設備の無駄な稼働を抑制し、省エネ行動の促進につながります。 |
| 再生可能エネルギーの活用 | 太陽光発電や地中熱利用など、再生可能エネルギーによる自家発電や電力会社との連携で余剰電力の売電や蓄電池との併用などが視野に入ります。 |
3.ZEBの導入メリット
ZEB導入の主なメリットは以下のとおりです。
| 項目 | メリット |
|---|---|
| 光熱費の削減 | 初期費用は増えますが、長期的な運用コストを大幅に低減することができます。 |
| 建物の付加価値向上 | 環境配慮型として企業のESG評価やブランド力に貢献。建物の価格など資産価値にも影響します。 |
| 補助金・支援制度の活用 | 国土交通省や環境省による補助金などの導入支援が充実しています。 |
| 脱炭素社会への貢献 | 2050年カーボンニュートラル目標への具体的対応策。 |
４.課題と今後の展望
ZEBの導入には初期コストや設計技術の課題がある一方で、国や自治体の補助金活用、BIM（ビルディング・インフォメーション・モデリング）との連携によって、その実現性は年々高まっています。今後は「新築」だけでなく、「既存建築物のZEB化（ZEBリノベーション）」も注目されており、設備工事業界・設計業界にとって中長期的なビジネスチャンスといえるでしょう。
ZEBは単なる省エネ対策ではなく、持続可能な建築の新しい常識となりつつあります。設計者・設備工事業者・建物オーナーが一体となって、ZEB実現に向けた知識と技術の向上が今後ますます求められます。