ERP (ERPパッケージ)・基幹システムのGRANDIT

Showcase 産業ガス・化学品卸 H社様

産業ガス・化学品卸

「見えない経営リスク」を可視化した化学品卸の基幹システムの全面刷新

導入概要
業種 化学品卸・工業ガス卸(売上高 350億円、従業員 400名)
課題 レガシーシステムの老朽化、売掛・原価管理のリアルタイム化、内部統制整備
導入製品 GRANDIT(国産統合型ERP)
導入範囲 販売管理/債権・債務管理/調達・在庫管理/財務管理会計/原価管理/BI/ワークフロー
主な効果 月次決算 約1週間短縮/与信・在庫のリアルタイム把握/容器管理一元化/内部統制整備

化学品卸業界の現在地

年間商品販売額30.8兆円(※1)——厳格な法規制と多品種少量の徹底した流通管理で日本の製造業を支える化学品卸業界。その現場は今、静かな変革期を迎えている。

H社は、鉄鋼・造船・自動車向けの工業ガス、ハイテク産業向けの特殊ガス、医療用ガス、さらにシリコーン樹脂・溶剤などの化学品まで幅広い品目を取り扱う、売上高350億円・従業員400名の中堅専門商社だ。取引先は産業分野をまたいで広がり、多品種・多取引先・小口という卸業特有の複雑な業務構造を抱えている。

化学品卸業界において、企業の競争力を左右するのは単なる「仲介機能」ではない。調達・販売の一元化、与信管理、トレーサビリティの確保、そして価格変動リスクへの即応力——これらを支える「情報の質と速度」が、生き残りの鍵を握る。とりわけ業績に直結する原材料価格は近年乱高下を繰り返している。この荒波の中で利益を確保し続けるには、仕入原価や在庫評価の変動を即座に可視化し、顧客への価格転嫁(価格改定)や仕入判断を迅速に行えるシステム基盤が欠かせない

業務フローの標準化、承認権限の明文化、監査証跡の保全、これらをシステムで担保できない状態は、法的・信用的な失墜に直結しかねない——そんなリスクに直面していた。

「売上を作っても、与信状況と回収の実態がリアルタイムで見えないまま走っている状態で、これは経営リスクだと判断しました」

こうした環境変化が重なる中、H社の経営陣は2018年、長年使い続けてきた基幹システムの全面刷新を決断する。

※1 総務省・経産省「経済構造実態調査」(2023年)

旧システムの限界——「ブラックボックス」が生んだリスク

情報システム部長が最初に旧基幹システムのソースコードに向き合ったとき、感じたのは「困惑」だったという。

「一言で言うと『ブラックボックス』でした。社内の開発担当者が長年かけて作り込んだ部分が多く、ドキュメントも不完全なまま。何かを修正しようとすると、どこに影響が出るか予測できない状態でした」と情報システム部長は振り返る。

問題は技術的な負債だけではなかった。販売管理システムと会計システムが独立しており、両者のデータ連携は担当者による手入力に依存していた。月末になると各部門から転記作業に追われる悲鳴が上がり、入力ミスや集計のズレが月次決算を遅らせた。「外部ベンダーさんにも『これ以上の改修は難しい』と言われる部分が出てきていた」という段階まで、老朽化は進んでいた。

経営が見えない、現場が動けない

現場の営業部長が口にするのは、「情報の壁」への苦しさだ。「商談中に『今の在庫はどのくらいある?』と聞かれても、倉庫に電話して確認するか、翌日回答するというやり取りが普通でした。売掛の状況も、与信限度に近い得意先への追加受注を断るべきかどうか、経理に聞かないと分からない」。判断が遅れるほど商機は逃げていく。

経営層もまた、「見えない不安」を抱えていた。「月次決算を待たないと前月の数字が分からない。その間にも売上は動き、回収リスクは積み上がっていく。経営者として、それは非常に心もとない」と語る。

「それぞれのサブシステムが独立していて、販売データと会計データが自動連携できず、担当者が手で転記する業務が残っていました」

旧システムの
課題整理
販売・会計面 売掛・買掛のリアルタイム把握不能。原価管理・与信管理が非効率.入力の二重化が多発
システム面 レガシーシステムの改修限界。サブシステム連携不足。拡張性の欠如
情報共有面 顧客情報・在庫・財務が部門ごとにサイロ化。営業の属人化が進む
法令対応面 内部統制フロー・承認証跡がシステムで管理できていない

ERP選定——「10年後も使えるか」を問い続けた

刷新の必要性は共有された。しかし「どのシステムを選ぶか」は、容易な問いではなかった。

プロジェクトチームは複数のERPを比較検討した。最終候補に残ったのはグローバル標準として名高い海外製ERPの中堅版と、国産ERPのGRANDITだった。


海外製ERPとの比較——「日本の商習慣」が分岐点に

 「海外製ERPはブランドとして安心感がある一方、カスタマイズ費用の見積もりが当社の規模では想定を大きく超えていました」と説明する。日本の商習慣への対応の他に化学品卸という業態には、高圧ガス特有の容器貸し出し・容器利用料・回収管理など、日本固有かつ業界特有の商習慣が数多く存在する。パッケージの標準機能がそれらをどこまでカバーできるか、そのギャップを埋めるアドオン開発のコストは無視できなかった。

 一方でGRANDITは国産ERPとして日本の商習慣への親和性が高いだけではなく、業界の専門システムとの連携実績もあり、標準機能で対応できる範囲が広かった。情報システム部長が評価したのは技術的な側面だ。「完全WebベースのアーキテクチャでクライアントPCへのインストールが不要なこと。複数の営業所があるうちの規模では、拠点ごとのメンテナンスコスト削減は重要な判断材料でした」。

「コンソーシアム方式で複数のSIベンダーが開発に関わっているという継続性も評価しました。10年後も会社が続いていて、機能改善が継続されるという安心感です」

選定の決め手——「継続性」という経営判断

H社が最終的に重視したのは、機能の優劣ではなく「長期的な信頼性」だった。GRANDITはコンソーシアム方式——業界を代表する複数のSIベンダーが共同開発に参加する体制——を採っており、特定ベンダーへの依存リスクが低い。また、バージョンアップによる法改正対応(インボイス、新リース会計基準など)が継続的に提供されることも、10年単位での投資回収を見据えると大きな安心材料となった。

一度投資するなら、10年先も使えるパッケージを選びたかった」という言葉は、中堅企業のERP選定の本質を突いている。

GRANDIT選定の決め手
経営視点 国産・コンソーシアム方式による長期保守性。法改正対応が継続提供される安心感
IT視点 完全Webベースによる拠点展開の容易さ。EDI連携の実績とAPI対応方針
現場視点 日本の商習慣に対応した標準機能の広さ。カスタマイズ対応

導入プロセス——「業務を合わせるか、システムを合わせるか」

刷新プロジェクトで最も時間を要したのは、システムの構築ではなく「業務の棚卸し」だった。

要件定義フェーズで情報システム部長が直面したのは、現場業務の複雑さだった。「現場の業務がどれほど複雑かを、改めて棚卸しすると想像以上でした。特に容器管理と原価管理の部分は、業界特有の仕組みで、ERPの標準機能とのギャップが大きかった」。
プロジェクトは、標準機能とのFit&Gap分析を丁寧に重ねた。「システムに業務を合わせる」か「アドオンで業務を実現する」か——この判断を繰り返しながら、業務プロセスの標準化と、どうしても外せない固有要件のみのカスタマイズという方針を固めた。

段階的リリースという現実解

全機能を一括導入するのではなく、販売管理・債権債務管理・財務会計を先行させ、BI分析は後続フェーズに回す段階的リリースの戦略を取った。「プロジェクト期間内に全てを解決するのは難しく、一部は段階的なリリースとしました。これが費用対効果を検討しながら拡張できるという柔軟性につながっています」と情報システム部長は語る。

現場への定着も一つの山場だった。「最初は抵抗もありました。操作が変わることへの不安と、入力項目が増えることへの負担感。年配のメンバーからは『今まで通りでいい』という声もありました」と営業部長は振り返る。しかし導入から半年〜1年が経過すると、情報が見えることの実感が抵抗感を上回っていった。「Webベースで操作が直感的なこと、どの端末からでも使えることは、定着の早さに貢献したと思います」。

「使い始めると情報が見えるメリットが実感できて、半年〜1年経つと『これがないと動けない』という声が出てくるようになりました」

導入後の変化——「後追い確認型」から「即断即決型」へ

システムが本番稼働してから、H社の仕事の進め方は確実に変わっていった。

経営のスピードが変わった

最も大きな変化としてH社が挙げるのは、月次決算の早期化だ。「月次決算が従来より一週間ほど早く締まるようになったことが、一番大きな変化です。以前は月初に前月の数字を見て判断していたのが、今は月の途中でも当月の概算の損益が見えます」。

この変化が威力を発揮した場面として挙げるのが、原材料価格の高騰だ。「週次で売上総利益率を確認して即座に価格交渉の判断ができた。これが経営のスピードという意味では非常に大きかった」と語る。原材料コストが業績を直撃する化学品卸において、情報の鮮度は経営上の競争力そのものである。

営業の武器が変わった

現場では「情報の壁」が取り除かれた。「在庫と与信状況をリアルタイムで確認できるようになった。お客様の問い合わせに即答できる場面が増えました」と営業部長は言う。

また、これまで担当者ごとに分散していた顧客対応履歴や見積状況が全社で共有されるようになり、「あの件はAさんに聞かないと分からない」という属人化が解消されつつある。営業会議の中身も変わった。「以前は『先月の振り返り』が中心でしたが、今は『今月あと何をすべきか』というアクション指向の議論ができるようになっています」。

「商品別・得意先別の粗利率も見えるようになって、利益の出ない取引を見直す判断が現場でできるようになりました」

化学品卸特有の課題も解消

工業ガスのボンベ等の容器管理は、GRANDITから専用システムへのデータ連携によって「どの得意先に何本貸し出し中か」がシステム上で即座に把握できるようになった。法令上のガス使用履歴管理も、トレーサビリティ機能によってシステムで担保されている。

システムのメンテナンス作業の負荷が格段に下がりました。以前は夜間バッチの監視や、サブシステム間のデータ突合チェックに担当者を張り付ける必要がありましたが、今はほぼ自動化されています」と情報システム部長は付け加える。法改正対応もアップデートとして提供されるため、自力で調査・改修する必要がなくなった。

導入効果サマリー
月次決算 約1週間の早期化。月中に概算損益が把握可能になり、価格交渉・経営判断のスピードが向上
与信管理 売掛・与信状況をリアルタイム把握。営業が商談中に即座に回答・判断が可能に
在庫管理 複数拠点・品目の在庫を一元管理。欠品リスクの低減と在庫効率の改善
容器管理 ガス容器の貸し出し・回収管理をシステム化。法令上のトレーサビリティも確保
内部統制 ワークフロー・承認フローをシステムで管理。J-SOX対応の基盤を整備
IT運用 完全Webベースにより拠点メンテナンスが不要に。バージョンアップ・法改正対応が大幅に省力化

次のステージへ——ERPを「リアルタイム経営の基盤」にする

基盤が整った今、H社が次に見据えるのは「データを使う」フェーズだ。

情報システム部長が最優先で取り組もうとしているのはAPIを使った外部サービス連携の拡充だ。「一部の取引先との受発注がまだFAX・メールベースで、これをEDIやAPIで自動化できれば営業事務の工数をかなり削減できます」。GRANDITは、APIを本格実装しており、これにより経費精算サービス・ECサイト・物流管理システムとのリアルタイム連携が現実的になってきた。

もう一つの目標は、BIによる現場の「データ自走」だ。 「GRANDITのBI機能を使って、商品別・得意先別の収益分析を営業担当者自身がセルフで見られる環境を作りたい。しかし、それはゴールではありません。単に数字を眺めるのではなく、現場の一人ひとりが『次の一手』を自ら導き出し、自分のデータを持って能動的に動ける組織にしていきたいのです」。情報の可視化が、提案型営業への転換を加速させる。

「現場の人間が自分のデータを持って動ける組織にしていきたい。ERPはその基盤です」

おわりに——化学品卸へのメッセージ

うちも長い間、現行システムで何とかしようと考えてきました。でも今振り返れば、もっと早く決断すべきだったと思っています」——と情報システム部長は取材の最後に語った。

旧システムへの改修費用を積み上げると、結果的にERPへの移行コストと大差なかった。

それよりも大事なのは、情報が一元化されることで、「どの取引で利益が削られているか」「どこで供給ボトルネックが起きているか」といった潜在リスクが発現する前に察知できることだ。「これは数字では表しにくいが、『経営のブラックボックス』がなくなる安心感は、精神的な負荷の面でも全然違います」。

化学品卸業界は今、原材料価格の変動、物流コストの上昇、サプライチェーンの強靱化、カーボンニュートラル対応と、複数の構造変化が同時進行する局面にある。その変化に対応できるかどうかは、現場が「何が起きているか」をリアルタイムで把握し、即座に動けるかどうかにかかっている

H社の事例は、化学品卸がERP刷新によって何を得られるかを、経営・IT・現場の3つの視点から具体的に示している。GRANDITが提供するのは「システム」ではなく、「リアルタイム経営の基盤」——そのメッセージが、同業他社の一歩を後押しするきっかけになれば幸いだ。

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