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ビジネスコラム

現実解としての戦略

第二回 経営資源としての時間

前回、そもそも経営資源とは何を指すのか、という問いかけで終わりました。これは経営戦略を語るには重要な話です。繰り返しますが、経営戦略とは、経営資源の配分の方針であると定義したからです。

ここで、今一度、経営資源についてお話しましょう。

一般に経営資源とは、ヒト、モノ、カネといわれています。これは正しいと考えています。
そして、これにジカン、時間ですね。これを加えたものが、2012年現在の経営環境下では正しい解釈であると考えています。

なぜ時間も資源として考えたいか、と言えば、すべての活動には時間が必要であり、そして、活動する私たちの側から見れば、時間は有限であるからです。

時間自体は無限なのでしょう。しかし、私たちにとっては有限です。なぜなら、時間の経過とともに、私たちに関わるものはすべて変化するからです。それは経営に関係のあるもの、つまり他の経営資源も同じです。

会社は創業時の形のまま、永遠に継続することはまずありません。成長して規模が拡大するのは当然として、途中で分割したり、吸収されたりすることもあるでしょう。

そこで働く人も、新人から同じポジションやスキルのまま、ずっと働き続けることもないでしょう。また、売っている商品もずっと形を変えずに売れ続けることはないでしょう。資金でさえも、銀行に預けていれば金利が加わったりしますし、仮に金庫の中で眠らせていても、インフレやデフレによって価値は変わってきます。

つまり、経営資源として語られている要素は、すべて時間の経過とともに姿や意味、価値などが変化していくのです。戦略を企画する場合に、その基軸となった資源の意味が時間の推移とともに変化するのであれば、当然それを計算に入れなければいけなくなるわけです。

そのために、すべての戦略は時間的制約を考慮した上で企画し、運営される必要があるというわけです。時間が有限であるなら、それの使い方、すなわち配分も考えたうえで戦略を決定し、実行しなければならないわけです。

そして、上記の説明でもお分かりでしょうが、この時間の配分というのは、別の面で、戦略の成否にも大きくかかわってきます。上記の説明は、戦略に活用する内部資源の話です。しかし、時間がすべてに平等に働く以上、戦略遂行中の外部環境にも同じことがいえるのです。

戦略の立案時にすべての要件を見通すことはできません。すべてを見通せないので戦略が必要になる、ともいえますが、結果的に、或る程度は結論を出さずに、実行に移さざるを得ない部分も残るのが普通です。

しかし、時間が経過するほど、外部の環境は変化する可能性が増えますし、近年は、変化のスピードが、以前よりも早くなってきている印象があります。業務の現場を見ていると、商品・サービスの浸透とそれらの陳腐化のスピードが速くなり、また競合の商品やサービスの現出が早くなっている印象があります。

従って、近年では長い時間をかけて戦略を企画し、実行しても、成果を出す前に経営資源や経営環境が変化してしまう可能性が高くなったのです。結論を出さずに実行に移した揚句、環境まで変化してしまっては、所期の結果を期待することは難しくなるでしょう。こうなると、もはや戦略は変更せざるを得ません。こういった企業で、「戦略は立てても無意味」と、いうような意見が幅を利かせるようになるのです。

いいかえれば、戦略を成功させるには、資源を立体的に配分する必要があるということです。単に資源を配分するだけでなく、投下した資源が変質しないうちに、企画時の外部環境が変わらないうちに、結果を残すよう、時間軸を考慮して企画しなければいけない、ということです。

まんべんなく資源投下を行うのではなく、個々の投下範囲を精査して、期待度を満たす可能性が高いものには思い切って人員や資金を投下し、成果を出すまでの期間を短縮することが必要ということです。

個人的な経験論では、うまくいかないと言っている企業は、いわゆる‘Too little, too late’に近い配分をしている印象があります。戦略を成功させていく企業は、もっと大胆に、必要と思われる領域に一気に投下する印象があります。いわゆる、選択と集中でしょうか。

では、どのようにしたらそれを実行できるのでしょうか。何の根拠もなく、大胆な資源投下を決定するのはただのギャンブルです。

一般的には、こうした高度判断には、かなり高度で複雑な手法が求められると考えがちでしょう。しかし、あまり複雑になっては、実用的ではありませんし、実現できる企業も限られてきます。

実は、比較的簡潔で、実用的な手法があるのです。あまり知られていないのは、それはある意味では当たり前の手法であり、徹底できている企業が少ないだけ、ということでしょう。次回はそれをお話したいと思います。

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