平成27年度税制改正について
第一回 全体像について
1.はじめに
今回から4回にわたり、平成27年度税制改正について、その重要ポイントを解説していきたいと思います。組立としては、次を予定しています。
第1回目 全体像について
第2回目 法人税の改正について
第3回目 消費税の改正について
第4回目 その他の税目の改正について
皆様のビジネスにお役に立てる解説を行って参りたいと思います。最後までどうぞお付き合いください。
2.平成27年度税制改正の全体像について
平成26年12月30日に自民党及び公明党の共同により、平成27年度税制改正大綱(以下、大綱といいます)が公表されております。この内容に基づき改正法案が起案され、国会を通過する予定です。大綱では平成27年度改正の柱を次の7つに置き、それぞれの柱に位置する改正項目が示されています。
1. 法人税率の引下げと課税ベースの拡大
世界の主要先進国の中で高いといわれている法人税率(正確には法人の実効税率)を段階的に引き上げるとともに、税収減をできるだけ食い止めるために課税ベース の拡大が行われます。
(ア)税率
まず法人税率について平成27年度改正(平27年4月1日以降開始事業年度から)から、現行25.5%→23.9%に引き下げられます。なお、中小法人の軽減税率の 特例(現行15%)は2年間延長されます。また事業税は外形標準部分の税率が引き上げられる結果、所得割の税率が引き下げられます。また地方法人特別税率の税率は引上げられます。さらに事業税の所得割と地方法人特別税の税率は、平成28年度もそれぞれ引下げと引上げが行われる結果、法人の実効税率(資本金1億円超法人かつ標準税率ベース)は、
年度 | 平成26年度 | 平成27年度 | 平成28年度 |
---|---|---|---|
実効税率 | 34.62% | 32.11% | 31.33% |
となります。以後数年で20%台となることを目指すとされています。
(イ)課税ベースの拡大
(ア)のように法人の実効税率が段階的に引下げられる結果、税収の減少が当然に予測されます。
これに対処するため、以下の通り課税ベースの拡大(課税所得 が多めに計算される措置)が行われます。
- 欠損金繰越控除限度枠の強化
現行資本金1億円超の大法人に対して適用されている、当年度所得の80%限度が、平成27年度4月以後開始事業年度65%、平成29年4月以降50%となります。なお現行の繰越期間は9年間ですが、平成29年4月以降開始事業年度発生欠損金から10年間となります(これは緩和措置)。
- 受取配当金の益金不算入措置の縮減
現行、一般株式については50%の益金不算入割合ですが、これが50%と20%になるなどの不算入措置の縮減が行われます。
2. NISAの拡充(所得税)
ジュニアNISAの創設と、現行のNISAの年間投資限度の拡充(年間100万円→200万円)が行われます。
- 地方へ本社機能を移転した場合の税額控除制度の創設
- ふるさと納税制度の拡充
- 国家戦略特区の税制(平成26年度創設)の拡充
- 結婚・子育て資金の一括贈与制度の創設 など
- 消費税率10%引上げ時期の延期
- 消費税の軽減税率制度の具体的検討の進捗 など
デフレ脱却を最優先課題とし、負担調整措置及び条例による減額制度を継続
- 国外事業者が国境を越えて行う電子商取引の日本での課税対象化
- 海外へ居住を開始する個人に対する株式等のキャピタルゲイン課税制度の創設(これは既に富裕層に大きな影響を及ぼし、適用開始の平成27年7月1日に向け出国ラッシュの様相を呈している)
- 租税条約等に基づき金融機関に対し非居住者の口座情報を求める制度の整備 など
避難解除区域等に帰還して事業再開するための投資費用積立制度の創設 など
- 国外居住親族の扶養控除等の事実確認のため、親族関係書類の添付等の義務付け
- マイナンバー制度の普及のために金融機関へ管理方法の義務付け
など
次回(2回目は)法人税改正について述べることとします。