トピックス
ビジネスコラム

平成30年度税制改正について

第四回 納税環境整備(大法人の電子申告義務化等)について

第四回目は、納税環境整備(大法人の電子申告義務化等)についてご説明します。

納税環境整備

税務手続における電子化の促進

(1)大法人の電子申告義務化

大法人(内国法人のうち事業年度開始時の資本金の額が1億円を超える法人等)の法人税・地方法人税・消費税の確定申告書、中間申告書及び修正申告書の提出については、これらの申告書に記載すべきものとされる事項を、e-Taxにより提供しなければならないこととされます。

ただし、電気通信回線の故障、災害その他の理由により、電子申告が困難であると認められる場合等には、納税地の所轄税務署長の承認を受けて、申告書及び添付書類を書面により提出できることとされます。その他の理由によって電子申告がなされない場合には無申告として取り扱われますが、期限内に申告書の主要な部分が電子的に提出されていれば、無申告加算税は課さない取扱いとされます。

大法人については、法人住民税・法人事業税の確定申告書等についても、eLTaxにより提供しなければならないこととされます。
大法人が提出する法人税申告書等の添付書類についても、電子申告が義務化されます。ただし、法人税申告書の添付書類については、光ディスクで提出することも認められます。また、電子申告にあたって、別表(明細記載を要する部分)、財務諸表、勘定科目内訳明細書のデータ形式が柔軟化(CSV等)されます。
法人税等については平成32年4月1日以後に開始する事業年度から、消費税については、同日以後に開始する課税期間から適用されます。

<ポイント>

大法人は申告業務を内製化していることが多く、独自の経理・会計システムを利用している法人も多いことから、電子申告への対応は比較的遅れていました。電子申告未対応の大法人は、関係システムの更新を含めて、対応を急ぐ必要があります。
また、今回の改正案では、中小法人は電子申告義務化の対象外となりました。しかし、財務省が平成29年6月に公表した「行政手続きコスト削減のための基本計画」の中では、中小法人についても将来的に電子申告の義務化を検討する旨が明記されています。電子申告未対応の中小法人は、義務化に備えた対応について、検討を進める必要があります。

(2)所得税の年末調整手続の電子化

源泉徴収義務者(雇用者)の事務負担を軽減する観点から、現行制度上、書面で源泉徴収義務者に提出されている生命保険料控除・地震保険料控除・住宅ローン控除に係る年末調整関係資料について、平成32年10月1日以後に提出する控除申告書における電磁的方法による提出が可能とされます。

連結子法人の個別帰属額等の届出の見直し

平成32年4月1日以後に終了する連結事業年度について、連結親法人が連結子法人の個別帰属額等を、電子情報処理組織を使用する方法又は当該個別帰属額等を記録した光ディスク等を提出する方法により、当該連結親法人の納税地の所轄税務署長に提供した場合には、連結子法人が当該個別帰属額等を記載した書類を当該連結子法人の本店等の所轄税務署長に提出したものとみなされます。平成32年4月1日以後の個別帰属額等の異動については、更正の場合の個別帰属額等の異動の届出が不要となります。

共通電子納税システム(共同収納)の導入

一定の地方税について、納税義務者等がeLTAXの運営主体が運営する共通電子納税システムを利用して納付又は納入を行う場合、その収納の事務については、eLTAXの運営主体及び金融機関に行わせるものとし、これらの税は金融機関からeLTAXの運営主体を経由して地方公共団体に払い込まれるものとされます。対象税目は個人住民税(給与所得又は退職所得に係る特別徴収分)、法人住民税、法人事業税及び事業所税とし、平成31年10月1日から適用されます。

地方消費税の清算基準の見直し

地方消費税の清算基準について、抜本的な見直しが行われます。清算基準における統計データの利用方法を見直し、統計データがカバーする比率を現行の75%から50%に改めます。また、統計データのカバー外の消費代替指標については、従業者数(現行:7.5%)は用いないこととし、人口の比率(現行:17.5%)を50%に高めることとされます。

企業の税務機能を取りまくチャレンジとERPシステムの活用

税務を取りまく環境は、昨今大きく変化しています。取引情報の会計帳簿への計上、税務コンプライアンス、税務係争、税務プランニング、という税務のライフサイクルに影響する外的、内的要因の全てにおいて大きな変化が起きています。企業の今後の税務機能の姿を特に大きく変貌させる外的要因となるのがデジタル化です。事業やサービスがデジタル化することにより、今までの認識を超える変革が続くなか、税務機能だけがその影響から免れることはあり得ません。実際、ブラジル、メキシコ、ロシア、中国、オーストラリア、イギリスなど多くの諸外国で税務当局によるデジタル化はすでに始まっており、膨大なデータを吸い上げ、巧妙なリスク評価機能を駆使した上で、効率的な税務調査を遂行しています。日本も他国との自動情報交換の必要性から、近いうちにデジタル化を検討することになるでしょう。この流れは、本年度の税制改正においても散見されています。

よって、企業側でも当局の洞察力に勝るデータの分析機能が必要となります。ERPシステムの有効活用等により、税務データを適切な精度で効率よく抽出・分析できる体制を構築する必要があります。企業の税務部門おいても働き方改革の余波を受けざるを得ない中、特に人材不足が著しい現状において、コミュニケーションの円滑化とプロセスの標準化を促すERPシステムの活用は、有効な効率化の第一歩といえます。税務業務の効率化は今後の企業戦略の一部として進めていく必要があります。税務当局においてもデジタル化のために投資がされている中、税務機能のパフォーマンスの転換期が到来しています。

本コラムは、一般的な参考情報の提供のみを目的に作成されており、会計、税務及びその他の専門的なアドバイスを行うものではありません。EY税理士法人及び他のEYメンバーファームは、皆様が本コラムを利用したことにより被ったいかなる損害についても、一切の責任を負いません。具体的なアドバイスが必要な場合は、個別に専門家にご相談ください。

お問い合わせ・資料請求

資料請求・お問い合わせはWEBで承っております。どうぞお気軽にご相談ください。

WEBからのお問い合わせ
お問い合わせ
資料ダウンロード・資料請求
資料請求