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転換期を迎えているEDI -迫るEDI 2024年問題とは-

第一回 EDIとは?EDIの必要性と課題

1.これまでのEDI

皆さんは、「EDI(Electronic Data Interchange)」についてご存知だろうか。企業間の取引に関して、コンピューター同士を通信回線につないでデータのやり取りを行うことをEDIと呼んでいる。郵送やFAXなど書類を介して行う取引に比べ、低コストかつ効率的な取引が可能だ。

■EDIの主な特長

自動処理

自動処理

取引情報の送受信から業務システムとのデータ連携まで、すべてを自動化。

低コスト

低コスト

電子データでやり取りするため用紙代が不要。インターネットを利用したEDIなら通信費も安価。

高速

高速

特にインターネットを利用したEDIでは高速な通信取引が可能。人手を介した取引業務を自動処理により高速化。

EDIで取引を行う際の大切なポイントは、やり取りを行う企業間同士で、あらかじめEDIに関する約束事を決めておくことにある。異なる企業(=異なる基幹システム)間同士でデータのやり取りを行う以上、データの形式や通信方法などに関するルールを事前に決めておかなければEDI取引は成り立たない。我が国もEDIの黎明期には、大手企業を中心に自社独自のEDIルールが定められ、固有のオンラインネットワークやオンライン端末が用意された。そのような企業と取引を行う受注側の企業では、多数の専用端末が設置されたり、取引企業ごとに異なるデータの変換作業に追われたりと膨大なコスト負担や業務負担が発生した。

そのような過程を経て、EDIを標準的な方法で行おうという発想が次第に芽生えていく。まず1980年代前半に流通業界の標準方式として、JCA手順およびJCAデータフォーマットが日本チェーンストア協会(JCA)によって策定された。さらに銀行業界(銀行とその取引先間の金融取引)の標準方式として全銀手順が全国銀行協会によって策定された。ちなみに、全銀手順は銀行業界に留まらず普及し、後継の全銀TCP/IP手順は現在でも各業界のEDI手順として幅広く利用されている。

さらに1985年に入り「電子計算機の連携利用に関する指針」が政府によって定められると、電子機器業界などを中心に各業界でEDIの標準化に向けた動きが進む。1991年には業界横断的なEDIメッセージ標準としてCII標準が策定され、これは各業界のEDI標準として現在でも幅広く活用されている。なお同時期には、取引企業の間に立って業界標準EDIによるデータ変換を取り持つ業界VANサービスが誕生し、業界ごとのEDI標準化がさらに進んでいった。

その後インターネットが不自由なく利用できる時代が到来し、PCに標準搭載されたWebブラウザーで手軽に取引が始められるWeb-EDIの普及が進んだ。Web-EDIの普及拡大の後には、インターネット時代の共通言語となったXMLをベースとするEDIの策定が進み、いくつかのインターネットEDI標準が誕生して今日に至っている(Web-EDIやインターネットEDIについては、今後のコラムでもう少し詳しく取り上げる)。

  • ※便宜上、一部の通信手順やメッセージの表記を割愛しています(各業界の正確な標準EDIの変遷を保証するものではありません)。

2.迫る“EDI-2024年問題”

さて近年、EDI市場の動向に大きな影響を及ぼしているのが、NTT東西によって発表された「PSTNからIP網への移行計画」である。PSTNからIP網への移行計画とは、皆さんが電話やFAXの際に利用しているアナログ回線やディジタル回線(INSネット/ISDN)の心臓部となる公衆交換電話網(PSTN)を、2024年1月より1年をかけて順次IP網へ移行する計画のことだ。

NTT東西は、PSTNからIP網への移行に伴い「手続き不要」「回線工事不要」「機器の変更不要」の3点を利用者に向けて呼びかけている。原則、移行に伴う利用者の負担は皆無であるということだ。ただIP網への移行を機に、利用者が低減した「INSネット ディジタル通信モード」についても2024年1月でサービスを終了することが発表されている。これにより、長年INSネットをインフラとしてEDI取引を行ってきた国内の産業界および金融業界では、EDIシステムの刷新が余儀なくされる。というのも、移行後のIP網では、これまでのようなEDI取引はまず実現できないことが明らかになっているためだ。このようにPSTNからIP網への移行に伴って生じるEDI環境の弊害を、冒頭の小見出しで示したように「EDI-2024年問題(あるいはEDI-2025年問題)」という言葉で我々EDIの業界には浸透している。

ちなみに、先ほど述べた“移行後のIP網では、INSネット環境のようなEDI取引はまず実現できない”という点について、具体的な検証データがある。これは、NTT東西が用意した“IP網へ移行後のINSネットに相当する検証環境(以下、補完策)”を利用し、弊社を含むEDIベンダー複数社が参加して行った通信テストの結果である。

■補完策の通信品質(ISDN回線との比較)

各検証機器構成において伝送ブロックと伝送速度を変更し、データ処理の正常性確認とファイル送信から送信処理完了までのデータ処理時間を計測する。

  補完策利用時通信可否/処理時間(ISDN回線利用時比較)
検証機器構成 伝送ブロック長 連続受信回数 伝送速度
64Kbps 9,600bps
通信可否 処理時間 通信可否 処理時間
(1)全銀TCP/IP検証構成
(機器持込による接続)
2,048Byte 15 110%程度
32,768Byte 15 100%程度
(2)全銀BSC検証構成
(機器持込による接続)
256Byte 310%程度 210%程度
2,048Byte 200%程度 130%程度
(3)全銀TCP/IP検証構成
(遠隔による接続)
2,048Byte 15 110%程度
32,768Byte 15 100%程度
(4)全銀BSC検証構成
(遠隔による接続)
256Byte 270%程度 200%程度
2,048Byte 190%程度 130%程度

検証結果の通り、接続の可否について特に問題は発生していない。しかしながら検証したケースのほとんどにおいて処理の遅延が発生しており、最大で300%超の遅延となった。伝送ブロックが短いほど、かつ伝送速度が速いほど大きな遅延が発生する傾向が出ている。EDIの取引は1日のうちで決まった時間帯に集中することが多い。そのため、現行よりほぼ確実に遅延が発生する状況を受け入れることは現実的ではないだろう。さらには決算期など大量のデータ処理が予想される時期の負荷を考慮すると、より大きな遅延被害も想定しておかなければならない。

このようなEDI-2024年問題に対する有効な解決策として“従来型EDIからインターネットEDIへの移行”が挙げられる。こちらの動向については今後のコラムでご紹介していきたい。

3.これから求められるEDI製品と業務

EDIの取引は、受発注データの企業間データ転送で利用されることが多いが、実はそれ以外にも多様な業務用途で企業間のデータ転送手段として利用されている。

食品メーカーなどを例にすると、販売業務の「受注」データ受信後、販売管理システムなどで確定された「出荷」データの送信などを行う。また、経理業務のファームバンキング利用や、倉庫に対する出荷指示、仕入先への「発注」データ送信など、一つの企業だけを見ても様々なシーンでEDIは利用されている。

そのEDIが電話回線を利用することが難しくなり、代替えのインターネットプロトコルへ移行しなければならないとなると、これは一大事である。先ほど述べた通り、EDIは通信相手との取り交わしが必須となる。自社だけで移行が完結するものではない。ましてや、受注処理にEDIを利用している企業となれば、発注企業である得意先にプロトコルの変更を申し入れるのは容易ではない。

そうなると必然的に市場の需要としては、マルチプロトコルに対応した上、取引先ごとのデータレイアウトを自社基幹システム用に変換することが出来る製品が求められてくる。
また、その上で、通信~変換~連携の流れを1パッケージで対応したいというのは、当然の要望である。

当社も統合EDIソリューションの販売を開始して約15年となる。当初はマルチプロトコルに対応し、かつデータ変換機能を実装しているだけで多くの需要に応えた。

しかし最近では、仮想化環境やクラウド環境(IaaS)への対応、FAX機能との連携対応など、求められることは多くなってきた。幸いにも、当社は累計14,000社の導入実績を誇るFAXサーバーソフトの「まいと~く」を開発・販売しており、市場のニーズにいち早く対応出来ている。

また、EDI市場の転換期である現在では、得意先から急遽仕様の変更通知がくることも珍しくない。製品の操作性においても重要となってきた。

当社製品においても、ジョブをフローで設定することができる機能を搭載しており、ノンプログラミングで構築ができるよう進化している。EDI製品は、以前のようにミドルウェアとして上位システムに組み込まれ、構築や設定の変更は全て上位システムのSEが行うという仕組みは古くなってきている。構築までは上位システムのSEが担当し、設定変更などはエンドユーザー様が日常業務で行うことができる製品や考え方が当たり前となってきた。

先ほど述べた通り、インターネットEDIへの移行やフォーマット変更などの急な要望にも柔軟に対応できることで、企業としての差が生まれ始めているのも事実である。

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