会計システムとは?メリットや機能、選び方などを解説
会計システムは、企業が会計業務をスムーズに進めるために導入が検討されます。しかし、会計システムの基本的な仕組みや提供される機能について理解がないと、導入の際に色々と悩むことになりかねません。そこで、この記事では「概要が知りたい」「導入に伴うメリットについて気になる」といった方に向けて、会計システムの概要や機能、選定の際のポイントなどについて解説します。この記事を読むことで実際の導入に役立つ情報を得ることができます。
1. ERPの種類と特徴
この章ではまず、会計業務の主な課題を4つ説明します。
業務量が多い
経理部門は業務量が非常に多いにもかかわらず、十分な人員が配置されていないケースが見受けられます。
経理の業務は日々の取引の仕訳からスタートし、月次業務では従業員の給与計算や請求書の発行などが行われ、年次業務では決算書を作成するなど多岐にわたります。しかし、経理部門は直接的に利益を生み出す部署ではないため、人員を増やすことが難しいケースもあります。そのため、少ない人数で非常に多くの業務をこなさなければならない場合があります。
会計状況のタイムリーな把握の難しさ
各部門のデータが連携されていない場合には、会社全体の状況をタイムリーに把握することが難しいことが想定されます。
予算管理が困難
未来の予測数値などを計画数値に織り込むことには手間がかかり、通常予算管理や計画策定に別の手段が必要となります。
会計基準や法改正への対応負荷が高い
会計業務においては法改正に適切に対応しなければなりません。会計基準や税法が変更されると、経理担当者は最新の規定に基づいて業務を遂行する必要があります。例えば2022年に電子帳簿保存法が大きく改正され、施行された際、領収書や請求書などの取引情報を電子で授受する「電子取引」への対応が必要となりました。
このように、通常業務に加えて法令の変更に迅速に適応することは決して容易ではありません。
2. 会計システムとは
会計システムは、会計業務を自動的に処理し、会計担当者の負担を減らし、人為的なミスのリスクを低減するためのシステムです。このシステムを導入すれば仕訳の入力などの業務を自動で行うことができます。
会計システムなしで会計業務を行う場合、取引の仕訳や決算書の作成など、多くの業務を手作業で実施しなければなりません。組織が大きく取引が多くなると、業務量はさらに増加し、担当者に莫大な負担がかかるためミスのリスクも高まります。
こうした課題に対処するために、多くの企業で会計システムが導入されています。
3. 会計システムのメリット
会計システムは経理を含む会計業務の効率向上を目指したものであり、このシステムを導入することで、以下のようなメリットがあります。
会計業務をスピーディーに効率的に進めることができる
会計システムの導入により、会計業務の負担が軽減され、業務が効率的になります。例えば、会計システムに入力された取引データは自動で仕訳されます。他部署から未経験の従業員が異動してきた際も簡単に会計業務を担当できるようになり、業務の効率向上が期待できます。
また、一部の会計システムでは、銀行明細やクレジットカードなどの取引データを自動で取り込める機能や領収書やレシートをスキャンし、証憑データとして格納できる機能があります。これにより、紙での管理が不要となります。
会計システムの導入は、バックオフィス業務全体の効率化を促進し、各種帳簿の自動更新も実現できます。販売管理や経費精算、給与計算など他のシステムと連携でき、会社全体の業務効率向上が図れます。
複数拠点でデータ共有
会計システムの導入により、複数の拠点でデータを共有でき、会計業務を効率的に進めることが可能となります。
取引の記録を蓄積した会計データは、企業の現状を把握し経営戦略を策定する上での貴重な資料です。的確な経営判断を行うためには、経営者がスムーズに会計データを確認できる体制が必要です。
特に複数の拠点を有する企業では、紙ベースの会計業務の場合、帳簿を確認するだけでも手間がかかります。しかしインターネット経由でアクセス可能なクラウド型の会計システムを使用すれば、離れた場所からでもデータをリアルタイムで確認できます。同様に、顧問の税理士や会計事務所とデータを共有する際も、クラウド上でデータを共有すれば手間を省くことが可能です。
ミスを軽減できる
ミスを軽減できるのも会計システムの導入に伴うメリットの一つです。手作業で帳簿を作成する場合、伝票から帳簿への転記作業などが必要であり、その過程でミスが発生する可能性があります。
一方、会計システムは各帳票を一から手作業で作成する必要がありません。通常、一回の伝票入力で、関連する帳票にデータが自動的に反映される仕組みが備わっています。データ修正が必要な場合でも、元データを修正するだけで関連する帳票に修正が自動で反映されるため、ミスを最小限におさえながら業務を進めることができます。
制度に対応した処理ができる
通常、会計システムに従って作業を進めることで、現行の制度に合わせた会計処理を実行できるようになっています。
なお、後に説明するインストール型の場合、法改正や新制度への対応をするためにアップデートが必要ですが、クラウド型は自動的にアップデートされるため、インストールなどの手間は不要です。
4. 会計システムの主な機能
会計システムは主に3つの機能を有しており、それぞれが活用されています。これらの機能を組み合わせて提供しているケースもあります。以下ではそれぞれの機能について解説します。
管理会計に関する機能
管理会計に関する機能は、経営層が事業の把握と意思決定を行うために必要な数字や書類の作成をサポートします。この機能を利用することで、部門ごとの業績を理解し、資金調達や投資に関する戦略的な判断を行うことが可能です。
具体的な機能は以下の通りです。
- 予実管理: 部門ごとに予算を設定し、実績と比較することで進捗をモニタリングします。
- 会計情報の分析: プロジェクトや部門、地域別に会計データを分析し、業績の傾向を把握します。
- 経理管理: 日々の資金の流れを記録・可視化し、効率的な資源配分を支援します。
- シミュレーション: 仮定をもとに未来の数字を予測し、戦略の柔軟な検討を可能にします。
- レポート: 上記の情報をまとめ、経営判断のための重要な指標として提供します。
財務会計に関する機能
財務会計に関する機能は、株主や債権者など外部に向けた財政状態・経営成績などの説明をサポートします。つまり、財務会計の目的を達成するための業務、例えば財務諸表の作成などを効率的に行うための機能です。入力された伝票などのデータは自動的に会計帳簿や貸借対照表などの財務諸表に反映されるため、資料作成にかかる時間を大幅に短縮できます。具体的な機能は以下の通りです。
- 伝票入力: 日々の仕訳データを入力し、入金伝票や出金伝票、振替伝票などを作成できます。また、日付や種類、取引先などで検索することも容易です。
- 決算書作成: 入力された仕訳データを元に、損益計算書や貸借対照表などの決算書を迅速に作成できます。
- 帳票作成: 作成した決算書を印刷するだけでなく、PDFやCSV形式での出力も可能です。
- 自動仕訳: 過去の入力データから仕訳を予測し提案する機能があります。これにより、仕訳入力にかかる手間を大幅に削減できます。
- データ連携: 銀行の入出金データやクレジットカードの情報などをシステムと自動的に連携させることで、業務をスムーズに進め、入力ミスを減らします。
債権債務に関する機能
債権債務に関する機能は、債権・債務の残高や回収・支払状況の整理をサポートします。取引先ごとの入金・出金管理だけでなく、部署間での連携、仕訳処理、キャッシュフロー残高の確認など、様々な会計関連業務に役立てることができます。具体的な機能は以下の通りです。
- 請求書処理: 受領した請求書の記録を行います。
- 支払い条件管理: 支払条件の設定、更新、適用を行います。
- 支払いの調整と処理: 支払スケジュール設定、支払方法の選択、実際の支払の実行をサポートします。
- 支払消込: 支払済みの債務を帳簿上から削除することで、買掛金の管理を効果的に行います。手動での消込だけでなく、システムが自動で明細と照合し消込を行う機能を備えているケースも少なくありません。
- 支払分析: 残高や実際の支払金額を分析することで、どの支払いが多いのか、債務が適切であるかを管理できます。支払分析により、業務プロセスを最適化し、コストの効果的な管理が可能です。
5. 会計システムの利用形態
会計システムの利用形態は3つに分類されます。それぞれ異なる特徴やメリット・デメリットを持っているので、自社のニーズに合った形態を選ぶことが必要です。
クラウド型
クラウド型会計ソフトは、利用者がサービス提供会社に利用料を支払い、それによってインターネットを介してアクセスできる会計ソフトウェアです。インターネット接続があれば、場所や端末に依存せず利用でき、通常は自動仕訳入力やアカウント共有の機能が組み込まれています。
月額または年額の定額制で提供され、一般的には導入時に初期費用が発生しません。銀行口座やクレジットカードのデータとの連携が可能なのも、クラウド型会計ソフトの大きなメリットです。
オンプレミス型
オンプレミス(on-premise)型は、サーバーや他のIT設備を自社内やデータセンター内に設置し、ユーザーが自ら管理運用する方式を指します。以前はこの方式が一般的でしたが、クラウド型のシステムが現れて以降、区別するためにオンプレミス型と呼ばれるようになりました。
最も大きなメリットは、費用はかさむものの、自社の事業や環境、業務フローに最適なシステムを構築できることです。
インストール型
インストール型会計ソフトは、ソフトウェアをコンピュータにインストールして利用します。このタイプの会計ソフトは、インターネットに依存せず安定して動作する利点があり、情報漏洩などのセキュリティリスクが低いとされています。ただし、導入したパソコンでしか利用できない制約や、アップデートに関連する追加費用、再インストールの手間といったデメリットも存在します。
6. 会計管理システムの選定ポイント
この章では会計管理システムの選定ポイントを6つ解説します。
操作性
操作性は非常に重要です。経理業務では、日々多くの伝票処理や仕訳、記帳などのタスクが発生します。そのため、システムの使い勝手が良いかどうかは作業者のストレスや作業効率に大きな影響を与えます。
例えば、自動仕訳機能が使いやすく作業をスムーズに進められるか、書類作成プロセスが簡潔で効率的かなど、実際にシステムを触って確かめることも重要と言えます。ガイド機能が邪魔にならず、的確にサポートしてくれるかどうかも検討材料です。
自社の目的に合った機能が備わっているかどうか
例えば、決算書作成に必要な帳票や伝票の入力も、各拠点ですみやかに行えるか確認しましょう。また会計システムは、データをまとめるだけでなく、データを分析して今後の経営に役立てる役割も担っています。部門別損益管理や予算実績比較、セグメント分析など、経営判断に必要な機能が備わったシステムを選ぶことで、経営に有益な情報を得ることができます。
拡張性や柔軟性
拡張性や柔軟性があるかどうか、以下のポイントを検討しましょう。
-
拡張性
企業の成長に伴い、より高度な機能が求められることがあります。選んだシステムが拡張可能であれば、将来的なニーズに柔軟に対応できるでしょう。対応できない場合、新たなシステムの導入が必要となり、コストや手間がかかる可能性があります。
-
柔軟性
システムが柔軟であるかどうか、変化する業務ニーズに適応できるかどうかが重要です。また、連携可能な業務モジュールが提供されているかも確認しましょう。連携がスムーズであれば、他の業務領域とのシームレスな連携が実現でき、全体の業務プロセスが円滑に進むでしょう。
法改正や環境の変化にしっかりと対応できるか
法改正や環境の変化にしっかりと対応できるかどうか、以下のポイントを検討しましょう。
-
法改正への対応
会計システムは、アップデートにより法改正に迅速に対応できる場合がほとんどです。法改正があった際に、選んだシステムが柔軟に対応できるか確認しましょう。これにより、最新の法規制に即座に適合でき、法令遵守が確保されます。
-
IT環境の変化への適応
OSの進化やクラウドサービスの普及など、IT環境は日々変化しています。選定した会計システムがこれらの変化に適応できるかどうかも考慮が必要です。柔軟な構造であれば、新しい技術やサービスとの連携がスムーズに行え、システムの長期的な利用が可能となります。
サポート体制や分かりやすいマニュアル
しっかりとしたサポート体制や分かりやすいマニュアルが整っているか、以下のポイントを検討しましょう。
-
サポート体制の充実
システムの導入初期や日常の業務で疑問や問題が生じることは避けられません。選んだ会計システムが十分なサポートを提供しているか確認しましょう。迅速で適切なサポートが得られると、業務の停滞やトラブルへの対処がスムーズになります。
-
マニュアルの充実
使いやすく詳細なマニュアルがあれば、効率的にシステムを活用できます。分かりやすいマニュアルがあることで、新しい機能や操作方法に迅速に適応でき、業務の効率向上につながります。
他のシステムや銀行とのデータ連携
自社が必要とする全ての機能を一つのシステムだけで網羅することは難しい場合があります。そのため、柔軟性があり他のシステムとの連携や拡張が容易な会計システムを選ぶことがおすすめです。金融機関と連携を行えば、自動で入出金明細データを取得し、仕訳をほぼ自動化してくれるタイプもあります。また、給与計算システム、勤怠管理システム、経費精算システムなど、他のシステムやツールと連携することで、バックオフィス全体の効率化も実現できます。
7. まとめ
会計システムは、企業内の会計業務をスムーズに進めるためのシステムで、主に財務会計、管理会計、債権・債務の3つの機能があります。導入前に必要な機能を明確にしておくことが重要です。また、サービスの提供形態にはクラウド型、オンプレミス型、インストール型の3つがあります。自社の目標や経理業務の実情に応じて、最適な会計システムの採用を考えてみましょう。
今回の記事が皆様の会計システムに関する理解を深めるきっかけとなれば幸いです。
この章ではまず、会計業務の主な課題を4つ説明します。
業務量が多い
経理部門は業務量が非常に多いにもかかわらず、十分な人員が配置されていないケースが見受けられます。
経理の業務は日々の取引の仕訳からスタートし、月次業務では従業員の給与計算や請求書の発行などが行われ、年次業務では決算書を作成するなど多岐にわたります。しかし、経理部門は直接的に利益を生み出す部署ではないため、人員を増やすことが難しいケースもあります。そのため、少ない人数で非常に多くの業務をこなさなければならない場合があります。
会計状況のタイムリーな把握の難しさ
各部門のデータが連携されていない場合には、会社全体の状況をタイムリーに把握することが難しいことが想定されます。
予算管理が困難
未来の予測数値などを計画数値に織り込むことには手間がかかり、通常予算管理や計画策定に別の手段が必要となります。
会計基準や法改正への対応負荷が高い
会計業務においては法改正に適切に対応しなければなりません。会計基準や税法が変更されると、経理担当者は最新の規定に基づいて業務を遂行する必要があります。例えば2022年に電子帳簿保存法が大きく改正され、施行された際、領収書や請求書などの取引情報を電子で授受する「電子取引」への対応が必要となりました。
このように、通常業務に加えて法令の変更に迅速に適応することは決して容易ではありません。
会計システムは、会計業務を自動的に処理し、会計担当者の負担を減らし、人為的なミスのリスクを低減するためのシステムです。このシステムを導入すれば仕訳の入力などの業務を自動で行うことができます。
会計システムなしで会計業務を行う場合、取引の仕訳や決算書の作成など、多くの業務を手作業で実施しなければなりません。組織が大きく取引が多くなると、業務量はさらに増加し、担当者に莫大な負担がかかるためミスのリスクも高まります。
こうした課題に対処するために、多くの企業で会計システムが導入されています。
会計システムは経理を含む会計業務の効率向上を目指したものであり、このシステムを導入することで、以下のようなメリットがあります。
会計業務をスピーディーに効率的に進めることができる
会計システムの導入により、会計業務の負担が軽減され、業務が効率的になります。例えば、会計システムに入力された取引データは自動で仕訳されます。他部署から未経験の従業員が異動してきた際も簡単に会計業務を担当できるようになり、業務の効率向上が期待できます。
また、一部の会計システムでは、銀行明細やクレジットカードなどの取引データを自動で取り込める機能や領収書やレシートをスキャンし、証憑データとして格納できる機能があります。これにより、紙での管理が不要となります。
会計システムの導入は、バックオフィス業務全体の効率化を促進し、各種帳簿の自動更新も実現できます。販売管理や経費精算、給与計算など他のシステムと連携でき、会社全体の業務効率向上が図れます。
複数拠点でデータ共有
会計システムの導入により、複数の拠点でデータを共有でき、会計業務を効率的に進めることが可能となります。
取引の記録を蓄積した会計データは、企業の現状を把握し経営戦略を策定する上での貴重な資料です。的確な経営判断を行うためには、経営者がスムーズに会計データを確認できる体制が必要です。
特に複数の拠点を有する企業では、紙ベースの会計業務の場合、帳簿を確認するだけでも手間がかかります。しかしインターネット経由でアクセス可能なクラウド型の会計システムを使用すれば、離れた場所からでもデータをリアルタイムで確認できます。同様に、顧問の税理士や会計事務所とデータを共有する際も、クラウド上でデータを共有すれば手間を省くことが可能です。
ミスを軽減できる
ミスを軽減できるのも会計システムの導入に伴うメリットの一つです。手作業で帳簿を作成する場合、伝票から帳簿への転記作業などが必要であり、その過程でミスが発生する可能性があります。
一方、会計システムは各帳票を一から手作業で作成する必要がありません。通常、一回の伝票入力で、関連する帳票にデータが自動的に反映される仕組みが備わっています。データ修正が必要な場合でも、元データを修正するだけで関連する帳票に修正が自動で反映されるため、ミスを最小限におさえながら業務を進めることができます。
制度に対応した処理ができる
通常、会計システムに従って作業を進めることで、現行の制度に合わせた会計処理を実行できるようになっています。
なお、後に説明するインストール型の場合、法改正や新制度への対応をするためにアップデートが必要ですが、クラウド型は自動的にアップデートされるため、インストールなどの手間は不要です。
会計システムは主に3つの機能を有しており、それぞれが活用されています。これらの機能を組み合わせて提供しているケースもあります。以下ではそれぞれの機能について解説します。
管理会計に関する機能
管理会計に関する機能は、経営層が事業の把握と意思決定を行うために必要な数字や書類の作成をサポートします。この機能を利用することで、部門ごとの業績を理解し、資金調達や投資に関する戦略的な判断を行うことが可能です。
具体的な機能は以下の通りです。
- 予実管理: 部門ごとに予算を設定し、実績と比較することで進捗をモニタリングします。
- 会計情報の分析: プロジェクトや部門、地域別に会計データを分析し、業績の傾向を把握します。
- 経理管理: 日々の資金の流れを記録・可視化し、効率的な資源配分を支援します。
- シミュレーション: 仮定をもとに未来の数字を予測し、戦略の柔軟な検討を可能にします。
- レポート: 上記の情報をまとめ、経営判断のための重要な指標として提供します。
財務会計に関する機能
財務会計に関する機能は、株主や債権者など外部に向けた財政状態・経営成績などの説明をサポートします。つまり、財務会計の目的を達成するための業務、例えば財務諸表の作成などを効率的に行うための機能です。入力された伝票などのデータは自動的に会計帳簿や貸借対照表などの財務諸表に反映されるため、資料作成にかかる時間を大幅に短縮できます。具体的な機能は以下の通りです。
- 伝票入力: 日々の仕訳データを入力し、入金伝票や出金伝票、振替伝票などを作成できます。また、日付や種類、取引先などで検索することも容易です。
- 決算書作成: 入力された仕訳データを元に、損益計算書や貸借対照表などの決算書を迅速に作成できます。
- 帳票作成: 作成した決算書を印刷するだけでなく、PDFやCSV形式での出力も可能です。
- 自動仕訳: 過去の入力データから仕訳を予測し提案する機能があります。これにより、仕訳入力にかかる手間を大幅に削減できます。
- データ連携: 銀行の入出金データやクレジットカードの情報などをシステムと自動的に連携させることで、業務をスムーズに進め、入力ミスを減らします。
債権債務に関する機能
債権債務に関する機能は、債権・債務の残高や回収・支払状況の整理をサポートします。取引先ごとの入金・出金管理だけでなく、部署間での連携、仕訳処理、キャッシュフロー残高の確認など、様々な会計関連業務に役立てることができます。具体的な機能は以下の通りです。
- 請求書処理: 受領した請求書の記録を行います。
- 支払い条件管理: 支払条件の設定、更新、適用を行います。
- 支払いの調整と処理: 支払スケジュール設定、支払方法の選択、実際の支払の実行をサポートします。
- 支払消込: 支払済みの債務を帳簿上から削除することで、買掛金の管理を効果的に行います。手動での消込だけでなく、システムが自動で明細と照合し消込を行う機能を備えているケースも少なくありません。
- 支払分析: 残高や実際の支払金額を分析することで、どの支払いが多いのか、債務が適切であるかを管理できます。支払分析により、業務プロセスを最適化し、コストの効果的な管理が可能です。
会計システムの利用形態は3つに分類されます。それぞれ異なる特徴やメリット・デメリットを持っているので、自社のニーズに合った形態を選ぶことが必要です。
クラウド型
クラウド型会計ソフトは、利用者がサービス提供会社に利用料を支払い、それによってインターネットを介してアクセスできる会計ソフトウェアです。インターネット接続があれば、場所や端末に依存せず利用でき、通常は自動仕訳入力やアカウント共有の機能が組み込まれています。
月額または年額の定額制で提供され、一般的には導入時に初期費用が発生しません。銀行口座やクレジットカードのデータとの連携が可能なのも、クラウド型会計ソフトの大きなメリットです。
オンプレミス型
オンプレミス(on-premise)型は、サーバーや他のIT設備を自社内やデータセンター内に設置し、ユーザーが自ら管理運用する方式を指します。以前はこの方式が一般的でしたが、クラウド型のシステムが現れて以降、区別するためにオンプレミス型と呼ばれるようになりました。
最も大きなメリットは、費用はかさむものの、自社の事業や環境、業務フローに最適なシステムを構築できることです。
インストール型
インストール型会計ソフトは、ソフトウェアをコンピュータにインストールして利用します。このタイプの会計ソフトは、インターネットに依存せず安定して動作する利点があり、情報漏洩などのセキュリティリスクが低いとされています。ただし、導入したパソコンでしか利用できない制約や、アップデートに関連する追加費用、再インストールの手間といったデメリットも存在します。
この章では会計管理システムの選定ポイントを6つ解説します。
操作性
操作性は非常に重要です。経理業務では、日々多くの伝票処理や仕訳、記帳などのタスクが発生します。そのため、システムの使い勝手が良いかどうかは作業者のストレスや作業効率に大きな影響を与えます。
例えば、自動仕訳機能が使いやすく作業をスムーズに進められるか、書類作成プロセスが簡潔で効率的かなど、実際にシステムを触って確かめることも重要と言えます。ガイド機能が邪魔にならず、的確にサポートしてくれるかどうかも検討材料です。
自社の目的に合った機能が備わっているかどうか
例えば、決算書作成に必要な帳票や伝票の入力も、各拠点ですみやかに行えるか確認しましょう。また会計システムは、データをまとめるだけでなく、データを分析して今後の経営に役立てる役割も担っています。部門別損益管理や予算実績比較、セグメント分析など、経営判断に必要な機能が備わったシステムを選ぶことで、経営に有益な情報を得ることができます。
拡張性や柔軟性
拡張性や柔軟性があるかどうか、以下のポイントを検討しましょう。
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拡張性
企業の成長に伴い、より高度な機能が求められることがあります。選んだシステムが拡張可能であれば、将来的なニーズに柔軟に対応できるでしょう。対応できない場合、新たなシステムの導入が必要となり、コストや手間がかかる可能性があります。 -
柔軟性
システムが柔軟であるかどうか、変化する業務ニーズに適応できるかどうかが重要です。また、連携可能な業務モジュールが提供されているかも確認しましょう。連携がスムーズであれば、他の業務領域とのシームレスな連携が実現でき、全体の業務プロセスが円滑に進むでしょう。
法改正や環境の変化にしっかりと対応できるか
法改正や環境の変化にしっかりと対応できるかどうか、以下のポイントを検討しましょう。
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法改正への対応
会計システムは、アップデートにより法改正に迅速に対応できる場合がほとんどです。法改正があった際に、選んだシステムが柔軟に対応できるか確認しましょう。これにより、最新の法規制に即座に適合でき、法令遵守が確保されます。 -
IT環境の変化への適応
OSの進化やクラウドサービスの普及など、IT環境は日々変化しています。選定した会計システムがこれらの変化に適応できるかどうかも考慮が必要です。柔軟な構造であれば、新しい技術やサービスとの連携がスムーズに行え、システムの長期的な利用が可能となります。
サポート体制や分かりやすいマニュアル
しっかりとしたサポート体制や分かりやすいマニュアルが整っているか、以下のポイントを検討しましょう。
-
サポート体制の充実
システムの導入初期や日常の業務で疑問や問題が生じることは避けられません。選んだ会計システムが十分なサポートを提供しているか確認しましょう。迅速で適切なサポートが得られると、業務の停滞やトラブルへの対処がスムーズになります。 -
マニュアルの充実
使いやすく詳細なマニュアルがあれば、効率的にシステムを活用できます。分かりやすいマニュアルがあることで、新しい機能や操作方法に迅速に適応でき、業務の効率向上につながります。
他のシステムや銀行とのデータ連携
自社が必要とする全ての機能を一つのシステムだけで網羅することは難しい場合があります。そのため、柔軟性があり他のシステムとの連携や拡張が容易な会計システムを選ぶことがおすすめです。金融機関と連携を行えば、自動で入出金明細データを取得し、仕訳をほぼ自動化してくれるタイプもあります。また、給与計算システム、勤怠管理システム、経費精算システムなど、他のシステムやツールと連携することで、バックオフィス全体の効率化も実現できます。
会計システムは、企業内の会計業務をスムーズに進めるためのシステムで、主に財務会計、管理会計、債権・債務の3つの機能があります。導入前に必要な機能を明確にしておくことが重要です。また、サービスの提供形態にはクラウド型、オンプレミス型、インストール型の3つがあります。自社の目標や経理業務の実情に応じて、最適な会計システムの採用を考えてみましょう。
今回の記事が皆様の会計システムに関する理解を深めるきっかけとなれば幸いです。
ERPコラム一覧
ITと業務による両立
プロジェクト推進方法 その1
プロジェクト推進方法 その2
-働き方改革を実現するには-