ERPコラム

API連携で劇的に変わる、システム連携の未来

0.はじめに

近年、クラウドサービスの普及により、企業は様々なシステムを簡単に導入できるようになりました。しかし、その一方で、システム間のデータ連携が手動で行われるといったことが増え、業務の煩雑化や人的ミスによるトラブルが深刻化するケースも少なくありません。

ここでは、APIによるシステム連携について解説します。APIを活用することで実現できる、業務の効率化や新たなビジネスモデル創出への期待といった点についてご紹介します。

1.API、API連携とは何か?

API(Application Programming Interface)とは、異なるソフトウェア同士が互いに情報をやり取りするためのインターフェースです。インターフェースはシステムで情報をやり取りするための場所で、ソフトウェア間の情報の「かけ橋」のようなものです。
例えば、ECサイトで商品を購入する際、クレジットカード決済を行うために、ECサイトのシステムと決済システムが連携します。この時、両システムはAPIを通じて情報をやり取りし、安全かつスムーズに決済処理が行われます。
多くの場合、ECサイトと決済システムは別々なシステムとして動いていますが、これらを自動的に接続し、商品の購入から決済までの一連の処理をあたかも一つのシステム(仕組み)を使っているかのように連携させるのがAPI連携の役割です。

図.API連携イメージ

2.API、API連携で実現できること

APIやAPI連携を積極的に活用することで、「異なるシステム間のデータ連携の自動化」、
「APIを組み合わせた新しいサービスの開発」、「作業の自動化による業務効率化」、「利用者の利便性の向上」などを実現することができます。

1)異なるシステム間のデータ連携の自動化

今まで、手作業で行っていたデータ入力やコピー&ペースト、CSVファイルのダウンロード/アップロードなどの作業を自動化します。自動化によって人的な作業ミスを減らすこともできます。

2) APIを組み合わせた新しいサービス

既存のシステムの機能を組み合わせることで、新たなサービスを開発することができます。例えば、旅行業界では航空会社、ホテル、レンタカー会社などの各社が提供するAPIを組み合わせることで、ユーザーが一つのプラットフォームで旅行の全てを予約できるようにする一括予約システムなどの新サービス。金融業界では、銀行口座の情報をAPI経由で会計アプリや投資アプリとの連携させることによって、新しいサービスが提供されています。
これらの新しいサービス提供によって、利用者の利便性が向上。ビジネスの拡大につながっています。

3.API連携のメリット

API連携を積極的に推進することで、企業は「業務の削減」、「業務スピードアップ」、「競争力強化」といったメリットを得ることができます。

1)コスト削減

汎用的なAPI連携を活用することで、すべての作業を手作業で行った場合の人件費や既存のシステムを変更し、運用、維持管理を行う場合のシステム経費などのコスト削減が期待できます。

2) 業務のスピードアップ

短時間で多くの処理を手作業で行う場合と比べて、API連携の活用による業務自動化は、処理数の増加と業務処理を短縮といった効果が期待できます。
例えば、企業同士の受発注処理は常に締め切り時間に追われていますが、API連携を活用することで、処理能力を向上させることができます。

3) システムの柔軟性

システムの変更や拡張が容易になり、ビジネス環境の変化に迅速に対応することができます。例えば、ECサイトでは、新しいカード会社、金融機関の追加、近年利用が拡大しているQRコードなどのデジタル決済など、新しいサービスが増えるたびに大幅なシステム改修が必要になりますが、外部の決済APIサービスを活用することで、自社の負担を低減することができます。

4) 競争力強化

旅行業界、金融業界での新サービスの例のように、利便性の高い新たなサービス提供により、顧客体験を向上させることで、競合他社との差別化につなげることができます。
例えば、Uber EatsのようなデリバリーサービスではAPI連携によりレストランのPOSシステムなどと接続することで、注文受付から配達までの一連の業務を自動化することで生み出した、利便性の高いサービスが競争力の源泉のひとつとなっています。

4.API連携の具体的な事例

ここでは、ECサイトと物流システムやERPシステムを連携させることで、販売/購買/在庫/債権債務の一元管理を実現。適格請求書対応や収益基準変更などの財務会計基準への対応を行うとともに、「ECプラットフォーム」、「ERP」、「WMS」間で密連携を実現することで、「結果」だけではなく「状態変化」などのより詳細な情報連携を実現した導入事例をご紹介します。

(エクスプライス株式会社様 導入事例)
https://www.grandit.jp/showcase/detail/xprice.html

エクスプライス株式会社様(以降、エクスプライス社)は、家電を中心とした「Eコマース事業」「プライベートブランド事業」「法人向け事業」を展開。2022年3月にDCMホールディングス株式会社との資本業務提携に伴い、販売商品の種類が益々増え続けており、家電を中心とした幅広い商品を扱うECサイトとして多くのお客様に利用されています。
中長期的な更なる成長達成に向け、自社ECサイトをはじめ楽天市場、Yahoo!ショッピングなど各モールの一層の強化が必要となっており、これまでの人に依存したシステムから、「ECプラットフォーム」、「ERP」、「WMS」を連携させた新システムに移行。
ECサイト上での販売処理からバックエンドでの会計処理まで一貫したデータの整合性を保ち、業務を標準化して属人的な業務体系を解消、決算の早期化、事業活動における内部統制の強化等を実現しました。

5.API連携を始めるために

API連携を始めるには、「現状システムの洗い出し」、「APIの選定」、「API連携の実装」といった3つのステップが必要です。以下に各ステップの概要をまとめますので参考にしてください。

1)現状システムの洗い出し

どのシステムを連携させたいのか、どのようなデータをやり取りしたいのかを明確にします。連携するデータの種類、フォーマット(内容)、連携する頻度(リアルタイム、時間など)を調査する必要があります。特に頻度については、リアルタイム化することでデータの鮮度があがりますが、一方でシステムの負荷増加にもつながるので注意が必要です。

2)APIの選定

各システムが提供しているAPIの種類や機能を比較し、最適なAPIを選定しましょう。
以下に主なAPIをまとめました。

APIの種類 特徴
WEB-API HTTPプロトコル、RESTful APIなど。様々なプログラミング言語やプラットフォームからアクセス可能で柔軟性が高い。
広く利用されているため、インターネットなどで簡単に情報が取得でき学習コストが低い。リアルタイムなデータ更新にも対応可能。
CSV連携 カンマなどの区切り文字で区切られたシンプルなテキスト形式のファイルで、2次元の表形式のデータを保存する。
構造が単純でシンプルなため、レガシーシステムを含む多くのアプリケーションで読み書きが可能で汎用性が高い。
バッチ処理などによる、定期的なデータ処理(一括処理)に適している。
SOAP API XMLベースのメッセージ交換形式で、複雑なデータ構造を表現することができる。
データベースAPI データベースへのアクセスをAPIの形で提供し、SQLクエリなどを実行する。

APIの使い分けは、取り扱うデータ量やリアルタイム性、データ構造の複雑さ、汎用性、セキュリティなどの非業務要件を考慮する必要があります。

3)API連携の実装

API連携を行う際、システム間で直接API接続する場合と外部のAPI連携サービスを利用する方法があります。どちらの方式を採用するかは、プロジェクトの規模や要件によって大きく変わってきます。それぞれにメリットとデメリットがあり、最適な方法を選ぶことが重要です。

メリット デメリット
直接API接続する場合 APIの細かい設定やカスタマイズが自由にできるため、より複雑な連携を実現できます。また、サーバーなどのインフラ費用などが初期コストとして必要になりますが、長期的に見ると、API連携サービスの利用料金よりも安くなる場合があります。 認証処理、エラー処理、レート制限など、API連携に必要な機能を全て自前で実装する必要がある。開発に専門知識が必要。開発工数もかかるので、リリースまでの時間が長くなります。
また、APIのアップデートやセキュリティ対策を自社で行うので維持コストがかかります。
API連携サービスを利用する場合 認証処理、エラー処理、レート制限など、API連携に必要な機能が既に実装されており、直感的に使える管理画面などから設定できるので開発工数やリリースまでの期間を短縮できます。
また、サービス提供者がAPIのアップデートやセキュリティ対策を行ってくれるため、メンテナンスコストを削減できます。
様々なサービスとのAPI接続に対応しているため、一つのサービスで複数のAPIと連携させることができます。
利用頻度やデータ量によって課金されるなど継続的に利用料が発生します。
また、連携サービスが対応していないAPIとの接続を行う場合は、直接API接続を行う必要があり、管理が煩雑になります。
特定のサービスに依存してしまうため、サービスの提供が終了したり、料金体系が変更されたりした場合に、システムの変更が必要になる可能性があります。

これらの選定にはシステム導入の知識・ノウハウが必要になります。自社にITに精通した人材がいない場合は、外部のITコンサルタントを採用するといった方法の検討も必要です。ITコンサルタントを採用することにより、知識・ノウハウの習得、検討のスピードアップ、 客観的な分析・評価といった効果が期待できます。

6.まとめ

APIは、異なるシステム同士を連携させるための強力なツールです。APIを活用することで、業務の効率化、新たなビジネスモデルの創出、そして競争力強化に繋がります。
近年、ローコード/ノーコードツールなどの登場により、ITに関する専門知識がなくても、APIの概念を理解し、そのメリットを活かすことも可能になりました。
API活用は、DXの実現に向けて必要不可欠な技術といっても過言ではありません。

※記事の内容は、制作時点に一般公開されている情報に基づいています。また、記載されている会社名・製品名・システム名などは、各社の商標、または登録商標です。

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第2回 ERPの歴史
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第7回 ERPにおける統制とは?
ITと業務による両立
第8回 ERPにおける情報連携
第9回 2層ERPモデルの活用法
第10回 ERP導入を成功させるための、
プロジェクト推進方法 その1
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