平成30年度税制改正について
第三回 その他の改正・見直しについて
第三回目は、その他の重要な改正事項についてご説明します。
その他の改正・見直し
(1)収益認識基準の見直し
企業会計基準委員会が収益認識に関する会計基準案を公表したことに伴い、消費税における長期割賦販売等に該当する資産の譲渡等について延払基準により資産の譲渡等の対価の額を計算する選択制度が廃止されます。ただし、一定の経過措置が講じられます。また、ファイナンス・リース取引については、現行通りとなります。
(2)簡易課税制度の見直し
消費税の簡易課税制度について、農林水産業のうち消費税の軽減税率が適用される食用の農林水産物を生産する事業を第2種事業とし、そのみなし仕入率を80%(現行:70%)とすることとされます。平成31年10月1日を含む課税期間から適用されます。ただし、同日前における食用の農林水産物を生産する事業については、適用されません。
(3)有価証券譲渡に係る内外判定の見直し
券面のない有価証券等の譲渡については、現行制度では、その譲渡又は貸付けを行う者の当該譲渡又は貸付けに係る事務所等の所在地によって、消費税の内外判定を行うこととされています。この判定の基礎が、以下の通り改められます。
イ.振替機関等が取り扱う券面のない有価証券等: 振替機関等の所在地
(注)上記イの有価証券等には、券面の発行された有価証券のうち振替機関等が取り扱うものが含まれます。
ロ.上記イ以外の券面のない有価証券等:当該有価証券等に係る法人の本店、主たる事務所その他これらに準ずるものの所在地
(4)外国人旅行者向けの消費税免税制度の利便性向上
外国人旅行者の利便性の向上等の観点から、免税販売手続の電子化が進められます。また、免税販売の対象となる下限額の判定に際しては、現行制度では一般物品と消耗品を区分して、購入金額がそれぞれ5,000円以上である場合に免税となりますが、平成30年7月1日以後は、一定の条件下で一般物品と消耗品の購入金額を合算して判定することが認められます。
(5)輸入消費税の脱税犯の厳罰化
金の密輸事件が多発している状況を踏まえて、輸入に係る消費税の脱税犯に係る罰金刑の上限について、脱税額の10倍が1,000万円を超える場合には、脱税額の10倍(現行:脱税額)に引き上げられます。
「紙巻きたばこ」に係るたばこ税が、平成30年10月から平成33年10月にかけて、1本あたり3円増税されます。激変緩和や予見可能性の観点から、増税は3回に分けて、段階的に実施されます。また、「加熱式たばこ」に係るたばこ税も、平成30年10月から平成34年10月にかけて、5回に分けて段階的に増税されます。
本邦から平成31年1月7日以後に出国する観光客等に対して、出国1回につき1,000円の国際観光旅客税が徴収されます。
温室効果ガスの吸収源である森林を支えるため、国民が等しく負担を分かち合う観点から、森林環境税が創設されます。平成36年度から、市町村が個人住民税均等割と併せて、年額1,000円の森林環境税を賦課徴収します。国の特別会計に払い込まれた森林環境税は、市町村及び都道府県に対して森林環境譲与税として譲与され、間伐や人材育成、木材利用の普及啓発等に充当されます。
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