ERPコラム

ERPにおける統制とは?
ITと業務による両立

統制の定義から目的と手段、ITで可能になる統制、不可能な統制を知ることで、ERPの役割がより明確になります。

統制とは

ERP(Enterprise Resource Planning)は、企業資源計画とも訳されるように、企業は人的リソース、販売リソースなどさまざまなリソースを持っています。他にも、購買、生産、会計などのクリティカルな業務を、大企業になればなるほど、内側に持っています。

リソースの振り分け

そのリソースを、いかに効率よく配分していくかが経営をマネジメントしていく上で大切になります。リソースを有効活用し、全体最適をつねに見据えながら、リソースを振り分けていくことが大切です。そこで、ERPパッケージが重視されます。

ガバナンスとリスク回避

また、統制とは、企業の内部を統治することでもあります。ガバナンスとも呼びます。
企業の内部では、さまざまなことが起こります。故意であろうと、意図的ではなかろうと、不正は起こってしまう可能性があります。

SOX法が2006年に日本でも施行され、企業は特に、内部のガバナンスを強化するよう求められています。コンプライアンスは非常に重要であり、近年、BtoB企業であっても、従業員が安易な気持ちで投稿したSNSや、制作した広告によって炎上し、企業イメージが大きく毀損されるというケースも増えています。また、勤怠管理をしっかり行っていないなどの理由で残業を不正に請求したり、反対に残業を申告させなかったり、労務上のトラブルなども表面化する時代になりました。

それだけではなく、不正の未然防止、顧客に対する不正入札の禁止など、企業が日々の業務を遂行していく上で、リスクとなるものは予防しなくてはなりません。

統制の目的と手段

統制とは財務を適正なものにすることから始まり、効率化や生産性の向上、不正防止やコンプライアンスなどを行っていくものです。
業務プロセスを明確化していくこと、効率化のためITによってそれらを実現することも重要です。

統制の目的

統制の目的は、企業の倫理観を高めるものです。インターネットによって情報が拡散されやすくなった昨今、悪い噂はすぐに駆け巡ってしまいます。また、メディアも、企業不正に敏感で、それが上場企業・大企業・社会的知名度の高い企業ほど、ささいな不正でもニュースバリューがあると判断されて、大々的に取り上げられてしまう場合もあります。

統制の手段

それらを未然に防止し、企業活動をリスクなく進めていく必要があります。ERPパッケージには、業務を効率化するための機能が搭載されています。また、前述したとおり、リソースの有効配分などもERPパッケージで行うことができます。社内に点在していたデータベースを統合し、システム・サービス同士を連携させ、業務が重複しているものがあれば、それらを除外することもできます。

こうしたERPパッケージの機能は、企業統制を行う上でとても大切な役割を果たします。たとえば、電子決裁の機能を考えてみましょう。交通費や消耗品費を正しく決裁し、社内の適切な承認を得て、しかるべきルートで従業員から挙げられた稟議がまわっていくことが可視化されます。これによって、不正が起こりがちなボトルネックや人的エラー、故意の不正などを除外することができ、透明性の高い予算が確保できるようになります。ERPの電子決裁システムは不正を防止し、企業の健全化に役立つのです。

ITによる統制とは

ITによる統制によって、企業統制を合理的に行っていくことができます。

セキュリティの向上

電子決裁の例に続き、アクセス制限の機能を考えてみましょう。
社内には、さまざまな機密文書があります。ITによるアクセス制限を行っていない社内では、せいぜい、「社外秘」と文書に書く程度しかできなかったことでしょう。これでは、機密文書を従業員が持ち出してしまうことを未然に防ぐことは困難です。

ITによってアクセス制限がかけられればどうでしょうか。ディレクトリごとに、ここは部長以上、ここは取締役以上、ここは特定部署に限定などのアクセス制限を実施すれば、セキュリティが大幅に向上します。こうしたITによる統制は、人力ではできないものです。

効率の向上・不正の防止

また、在庫を抱える必要のある企業では、在庫管理システムを導入することで、紛失や盗難を防ぐことができます。データの改ざんなどを防ぐ機能や、在庫管理レポートの保管など、従来では人力で行っていたものを、より機能的に、効率よく、さらに発展させた機能をITで実現することができます。とくに、不正が発生する時、同時にデータの改ざんなどが発生します。ITではこうした改ざんを検知し、事前にアラートを出すことができます。これによって、会社の資産を守り、また、従業員を守り正しく導いていくことができるのです。

こうしたITによる統制を、ERPで実現することができます。業種ごとにパッケージが提供され、自分たちにあったシステムをパッケージで導入することができます。同業他社への導入実績が豊富なものを選べば、より確実かつスムーズに、ERPパッケージを適用することができます。

業務による統制とは

業務による統制は、ITでは実現できない、人間の意思決定などが介在するシーンなどをカバーしていきます。
人間が行う価値があるもの、そしてシステム化してはならない業務などが企業には存在するため、そこを業務によって統制します。

システムだけでは統制できないこと

企業では、監査法人などに決算や会計監査を依頼することが多くあり、監査法人などは、統制ができているかを厳しくチェックし企業に突きつけます。

たとえば、外部メモリや私物PCの持ち込みを禁止するもの。まだPCは、登録していないPCが社内システムに接続されれば検出できるなどITを使って統制することができますが、外部メモリなどは、たとえば課内にセキュリティ担当などを設けて、個別にPCをチェックしていく必要があるでしょう。また、入退出の場所にセキュリティゲートなどを個別に設けて、台帳で私物を預かるなどの施策も有効です。

従業員の理解に、導入初期は苦労するかもしれませんが、社会的責任を持った企業で働いているという意識を持って、日々の業務を遂行してもらうためには、教育なども施していく必要があります。こうしたことも、日々の業務に組み込み、意識を高めていく必要があります。

責任意識と倫理観こそ大事

不正は人の手によって起こります。常に人の目があること、不正には大きなリスクがあること、個人や企業が責任を負わなければならないことなどを周知し、倫理観を高めていく必要があります。

また、日本は人口減少時代に突入し、人口構成に変化が見られています。多様な人材を活かす戦略として、日本でもダイバーシティが推進されていますが、人権教育については、ITではできない分野です。従業員の人権意識を高め、ダイバーシティを実現していく必要があります。

切り分けと両立

できる限りシステムによって解決すべきです。
しかし、意思決定などを後押しするシステムはあっても、組織がビジネスとしてどちらの方向に向かうかは、最終的には人が判断します。
ERPパッケージは、人もリソースとして管理しますが、人でなければならない業務もあり、その部分は人間が行うことになります。

人の業務をサポートするシステムという理解

多くのことは、人間が行うよりITとシステムでソリューションをしたほうが効率もよく、生産性も高まり、機能的です。しかし、業務でしかできないこと、人間しかできないことがあります。

それだけではなく、従業員のエンパワーメント、勇気づけなども、ITとシステムではまかなえない範囲です。業務に誇りを持ち、やりがいを持って勤務してもらうことなども、人間にできる仕事です。ERPを始めとしたITでさまざまなことが大規模かつ容易に実現できますが、現場で働いているのは人間です。その人間をよりスキルアップさせるための動機付けを行うのも、企業にとっては業務の一環となります。優秀なプロジェクトリーダーを抜擢することも、ITでは不可能です。現場の力を大いに利用して、企業活動に邁進する必要があります。

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