企業こそ取り組むべき!業務自動化で生産性向上とコスト削減を実現
1.はじめに
企業を取り巻く環境は常に変化しており、その中で生き残り、成長していくためには、常に新しい技術や手法を取り入れる必要があります。
大企業は、潤沢な資金とIT化を推進する人材などのリソースを活用して積極的にITへの投資を行っていますが、事業規模の異なる大企業では同様の対応が難しいとされています。その中で、近年、特に注目されているのが「業務自動化」です。
(業務自動化が注目されている背景)
- 企業を取り巻く現状と課題(人手不足、コスト削減、生産性向上など)
- 業務自動化が企業にもたらすメリット(効率化、人材活用、競争力強化など)
本コラムでは、企業の経営層やIT担当者向けに、最新の業務自動化のトレンドやツール、ユースケース、業務自動化を推進する際の課題や解決策を紹介いたします。
2.業務自動化のトレンド
コンピュータを利用した業務自動化の歴史は、決して最近始まったものではありません。以下にコンピュータを利用した業務自動化の歴史を簡単にまとめてみます。
第1段階:コンピュータ利用の黎明期(1960年代~1980年代)
コンピュータが登場、広く一般でも利用されるようになり、事務処理の自動化が進み始めました。メインフレーム、オフコン、ワープロ、表計算ソフトなど様々なソフトウェアを、システム開発会社が開発し、企業に導入、利用されるようになりました。
第2段階:ネットワークコンピューティングの時代(1990年代~2000年代)
個々の企業に合わせたシステム開発から、予め特定の目的向けに開発されたパッケージソフトウェアが普及。基幹業務システム(ERP)や顧客管理システム(CRM)、生産管理システムなど、様々なパッケージソフトウェアが使われるようになり、ソフトウェアのコストや導入期間が大幅に短縮。幅広い企業でコンピューターシステムを活用できるようになりました。
第3段階:インターネット時代
インターネットが普及し、企業でも利用されるようになりました。これにより、アプリケーションの形態は、クライアントサーバー型からWebアプリケーション型にシフト。基幹業務システムをはじめとした多くのシステムがインターネット経由で利用できるようになり、いつでも、どこでも利用できるようになるなど利便性が大幅に高まりました。
第4世代:AI・RPAの時代(2010年代~現在)
従来、「業務自動化」というと、システム会社に委託してシステム開発を行うといったイメージでしたが、AI(人工知能)やRPA(Robotic Process Automation)、ローコード/ノーコードツールなどの新たな技術が登場し、これまで人間が行っていた複雑な業務や判断を伴う業務も自動化できるようになりました。
このように、業務自動化の歴史は、コンピュータ、インターネット、そしてAI・RPAへと進化してきました。企業もこれらの技術を活用し、積極的に業務効率化や生産性向上を図ることが重要です。
3.活用しやすい「業務自動化ツール」の紹介
企業が業務自動化ツールを導入する際、以下の要件を満たしていることが重要です。
1)活用しやすい自動化ツールの要件
要件 | 内容 |
---|---|
導入・運用コスト | ライセンス料、導入支援費用などが、予算に合っている |
使いやすさ、習得しやすさ | ITスキルが高くない従業員でも、直感的に操作できる |
設定の容易さ | プログラミングの知識がなくても、簡単に自動化設定ができる |
サポート体制 | 導入時のサポートや、運用中のトラブル対応などが充実している |
機能 | 自社で自動化したい業務に対応できる機能が搭載されている |
他システム連携 | 既存システムや外部サービスとデータ連携ができる |
セキュリティ | 顧客情報や社内情報などを安全に管理できるセキュリティやアクセス制御ができること |
加えて、ツールを提供しているベンダーが、信頼できる企業であることや他の企業での導入実績や成功事例があることも重要な要素です。
2)活用しやすい業務自動化ツール
-
生成系AIツール
生成系AI(Generative AI)ツールとは、学習済みのデータをもとに、新たなテキスト、画像、音声、動画などのコンテンツを生成するAI技術を活用したツールです。
生成系AIツールは、深層学習(ディープラーニングといって、 大量のデータを学習することで、データの特徴やパターンを把握します。
プロンプトというテキストで指示や質問を与えることで、AIが内容を理解し、学習データの中から最適な情報を組み合わせて、アウトプット(テキスト、画像、音声、動画など)を生成するので、誰でもAIを活用できると期待されています。
主な生成系AIツール:OpenAIのChatGPT、GoogleのGemini、DeepSeekなど -
RPAツール
RPA(Robotic Process Automation)ツールとは、人がパソコンを使って行う定型的な業務を、ソフトウェアロボット(RPA)が代行・自動化するツールです。
RPAはソフトウェアのUIをまるで人間のように操作し、データ入力、コピー&ペースト、ファイル操作などの作業を自動化することができます。
RPAツールは、シナリオ(自動化する作業を定義する手順書)、ロボット(シナリオに基づいて作業を実行するソフトウェア)、管理ツール(ロボットの稼働状況を管理、シナリオ編集ツール)で構成されています。
従来のような特別なプログラミング知識が不要、既存のシステムに変更を与えずにシステムを構築できる点が注目されています。
主なRPAツール:UiPath、Automation Anywhere、BizRobo! など -
AI搭載型ツール
AI搭載型ツールは、従来の自動化や業務効率化ツールにAI機能を搭載し、その機能や利便性を高めたツールの総称です。
例えば、AI機能を搭載した「AI-OCR」と呼ばれる製品は、従来型のOCRと比べて以下のような機能の違いがあります。
項目 | AI-OCR | 従来型OCR |
---|---|---|
文字認識精度 | 手書き文字や複雑なフォントも高精度に認識可能 | 活字は得意だが、手書き文字や複雑なフォントは苦手 |
学習機能 | あり(機械学習により認識精度が向上) | なし |
レイアウト解析 | 非定型フォーマットにも柔軟に対応 | 定型フォーマットのみ対応可能 |
誤認識時の対応 | AIが自動で修正候補を提示 | 修正作業が必要 |
主なAI搭載型ツール:AI-OCR、チャットボット、自動翻訳ツールなど
-
ローコード/ノーコードツール
ローコード/ノーコードツールとは、プログラミングコードをほとんど、あるいは全く書かずに、Webアプリケーションやモバイルアプリケーション、業務システムなどを開発できるツールの総称です。
ローコード/ノーコードツールの違いは、開発にする際のコーディング作業の有無ですが、ローコードツールでも、従来型の開発ツールと比べて、コーディングする量は最小限に抑えられているので、IT業務の未経験者でも習得しやすいことが特徴です。
主なローコード/ノーコードツール: kintone、Magic xpa、Power Apps など -
その他のツール
身近な業務自動化ツールとして、ExcelマクロやGoogle Apps Scriptがあります。
Excelは、表計算ソフトとして広く知られていますが、マクロ(繰り返しの作業を自動化する機能)やVBA(Visual Basic for Applications)というプログラミング言語を使って、複雑な処理を記述することも可能です。マクロは、記録機能を使えば、簡単な操作であればプログラミングなしで自動化することができます。
また、Google Apps Script (GAS) は、Google Workspaceの各種サービス(スプレッドシート、ドキュメント、カレンダーなど)や外部のシステムとWebサービスAPI連携で、様々な処理を自動化できる強力なツールです。
どちらも、多くの企業で既に使われているツールやサービスなので、追加投資しなくても身近な業務を自動化できることや解説書籍などが豊富に出回っていて、学習コストが低い点が大きなメリットです。
主なその他のツール:Excelマクロ、Google Apps Script など
4.企業における業務自動化の例
実際に業務自動化を行う例として、RPAでEPR周辺業務の自動化を行うソリューションをご紹介します。
【RPA Solution for GRANDIT】
「RPA Solution for GRANDIT 」は、単なる自動化ツールではなく、企業のフロント業務から基幹業務までまたがった業務プロセスを自動化するシステム開発基盤です。
従来、カスタマイズやアドオンなどで開発を行う必要のあったERP周辺業務は、RPAを使って自動化。ERP本体や既存のシステムに手を入れずに、周辺業務を統合できるので、費用対効果の関係で従来システム化が難しかった業務を自動化することができます。
(概要イメージ)

(適用業務領域)
業務領域 | 主な業務 | |
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販売・調達在庫・製造 |
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経理・資産・経費 |
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債権・債務 |
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人事・給与 |
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システム関連 |
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5.業務自動化を導入する際の注意点
業務自動化ソリューションは、企業の生産性向上やコスト削減に大きく貢献する技術ですが、導入にあたって注意すべき点がいくつかあります。以下に、導入における主要な注意点とその対策について解説します。
-
目的の明確化と対象業務選定
導入の目的が曖昧なまま進めてしまうと、期待した効果が得られない可能性があります。また、すべての業務が自動化に適しているわけではないので、ツールの導入事例などを参考にして、対象業務が自動化できるかを十分に吟味する必要があります。 -
導入計画策定の必要性
手軽に開発できる反面、ある程度のシステム規模になると一般的なシステム開発と同様に計画的な管理が必要で、計画なしに導入を進めると、スケジュール遅延や予算超過、システム連携の失敗などが起こる可能性があります。
導入スケジュール、予算、体制などを明確にする。段階的な導入を検討する。PoC(Proof of Concept)で効果を検証してから本格導入するといったことで、失敗を防止できます。 -
ツールの選定
自動化ツールは多種多様であり、自社の業務に合ったツールを選ばないと、十分な効果が得られないことがあります。
導入にあたっては、各ツールの特徴や機能を比較検討し、自社の業務要件に合ったツールを選ぶようにしてください。無料トライアルやデモなどを活用して、実際に試してみることも有効です。
また、導入後の運用・保守体制も必ず検討するようにしてください。
6.まとめ
業務自動化ソリューションは、企業の生産性向上やコスト削減だけでなく、働き方改革や競争力強化にも貢献する重要な技術です。
今後も、AIやRPAの進化、ローコード/ノーコードツールのさらなる普及、クラウド化の進展などにより、その可能性はさらに広がることが期待されます。
企業は、業務自動化ソリューションを積極的に導入し、業務効率化やイノベーションを推進していくことが重要です。
※記事の内容は、制作時点に一般公開されている情報に基づいています。また、記載されている会社名・製品名・システム名などは、各社の商標、または登録商標です。
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