セミナーレポート

GRANDITユーザー会 2018
開催レポート

2018年は、GRANDITコンソーシアム発足15周年という節目の年であり、『GRANDIT』製品リリースから14年目にあたります。また、9月には導入企業も1,000社の大台に達し、もうひとつの節目を迎えました。そこでユーザーの皆さまへ日頃の感謝を込め、2018年11月20日に「GRANDITユーザー会」が開催されました。ユーザー会では、前いすみ鉄道株式会社 社長 鳥塚 亮氏による基調講演をはじめ、パートナー企業による事例紹介、ソリューション紹介など、これからのビジネスのヒントとなる講演が行われました。

会場スナップ
懇親会

1. 開催のご挨拶

開催のご挨拶:
GRANDIT株式会社 代表取締役社長
  石川 研一

2003年、ユーザー系SIer7社が集まって立ち上げたGRANDITコンソーシアムは、60社を超えるまでに拡大し、2018年9月には、GRANDITの導入企業も1,000社を超えました。

GRANDIT株式会社 代表取締役社長 石川 研一

さまざまなニュースに触れるにつけ、先の見えない世の中になってきたことを実感する今日この頃、ERPがはたしてきた内部統制等の従来の取り組みが重要さを増してきています。

技術面では、AI、IoT、RPAといったデジタル技術が急速に身近になり、ビジネストランスフォーメーションや働き方改革といった新たなトレンドのけん引役になっています。

石川社長は、このような状況を踏まえ、「GRANDITも進化を遂げ、RPAソリューションの提供や、マルチブラウザに対応した新バージョンのリリースを行いました。今後も、さまざまなデバイスやクラウドサービスとの連携を通して、従来のERPの枠にとらわれない幅広い業務範囲をサポートしていきます」と展望を述べました。

2. 基調講演:「新規事業創出に向けた常識にとらわれない発想と経営戦略」

講師:
講師:前いすみ鉄道株式会社 社長
鳥塚 亮 氏

プロフィール:
1960年東京都出身。明治大学卒業後、学習塾講師、外資系航空会社勤務などを経て、2009年に廃線寸前のローカル線いすみ鉄道の公募社長に応募し、就任。さまざまな発想と戦略でいすみ鉄道を再生させた。現在は、「ローカル線を廃止にしない」という公募社長としての第一ステージを完了し、いすみ鉄道での経験をもとに、全国各地で地方を活性化すべく活躍中。

千葉県の房総半島の内陸部を走るいすみ鉄道は、国鉄がJRに変わるときに廃止を迫られたローカル線です。その後、第三セクター方式で存続するも、厳しい状況は続きました。しかし現在、いすみ鉄道は多くの観光客が訪れる地域の宝へと生まれ変わりました。その立役者である前いすみ鉄道社長の鳥塚氏に、いすみ鉄道復活の経緯と、その過程で打ち出したさまざまな施策について語っていただきました。

前いすみ鉄道株式会社 社長 鳥塚 亮 氏

「年配の人は、ローカル線と聞いていいイメージはないはず。しかし、国鉄からJRになって今年で31年。時代は変わりました」と、鳥塚氏は語ります。
確かに、テレビ番組でたびたびローカル線が取り上げられるように、今ローカル線は大人気です。
「私は気づきました。ローカル線は、地域の広告塔になる。どうやって都会の人に田舎に来てもらって、産品を買ってもらおうかと考えたとき、ローカル線は使えると思ったのです」

いすみ鉄道は、国の廃止の意向に背いたため、国からの補助金は望めません。そのため、地域の人たちが自らの意思で集まって、駅の掃除や草むしりなどをやっています。
「ある日、駅の掃除をしている地域住民の一人に、なんで掃除するのですかと聞いてみました。すると、『駅は町の玄関口。玄関が汚かったら、お客さんが来たときに恥ずかしい』という返事でした。でも、お客さんなんかどこにもいません」 地域住民の言葉をきっかけに、鳥塚氏は、お客さんを連れてきて喜ばせてあげたいと思うようになります。
そこで、「用がないなら、乗ることそのものを目的にすればいい」と考えます。そして、いすみ鉄道を観光鉄道にしようと、さまざまな施策を打ち出すことにしたのです。

最初に実行したのが、ムーミンのキャラクターのシールを張った「ムーミン列車」です。すると、テレビや雑誌が取材に来て、それを見た観光客も大勢やって来ました。
「シールを張っただけですが、かわいいといって、テレビや雑誌でムーミン列車を取り上げてくれました」
観光客が来た、といってもバスで来るため、すぐには運賃収入に結び付かなかったといいます。それでも、鳥塚氏は前向きに考えます。
「運賃収入はせいぜい、300円~400円。でも、その人たちが地域の特産品等のお土産を買ってくれれば千円以上の収入に結びつきます。なにより、田んぼの中の無人駅に観光客が来ることは、すごいことなのです」

前いすみ鉄道株式会社 社長 鳥塚 亮 氏

ムーミン列車のターゲットは女性でした。次は男性です。昭和40年製の国鉄型ディーゼルカーを導入し、男性人気を獲得しました。
「なぜ人気なのだろうと考えました。いすみ鉄道は元国鉄の鉄道であり、その鉄道に国鉄型の昭和の車両が走っている。そして沿線風景もまさしく昭和です。そうだ、昭和の世界観が求められていたのです」
昭和の車両と沿線の様子を写真に収めようとする鉄道マニア、通称「撮り鉄」という人たちが、いすみ鉄道に押し寄せるようになりました。

「撮り鉄の人たちは、列車に乗りません。しかし、私達いすみ鉄道は歓迎しました。例え運賃収入に結び付かなくても、地域に人が来るということは、何らか地域にプラスになるからです」
すると、「撮り鉄」の人たちが、撮った写真をいすみ鉄道に対する好意的なメッセージを添えて拡散してくれました。そのメッセージを見た人が、昭和41年製の三輪自動車や、昭和39年製のボンネットバスを沿線の線路と並行する車道に展示しに来て、いすみ鉄道の国鉄型ディーゼルカーと一緒に写真に収め、昭和の世界観が増強されていきます。

その昭和の雰囲気に吸い寄せられるように、フォークソングのグループも協力してくれるようになり、フォークソング列車が走ることになりました。
「これなら、乗ることが目的です。やっと運賃収入に結び付きました」と鳥塚氏。

テレビや雑誌で取り上げられるようになると、「来てみたら何もないじゃないか!」と怒り出すお客さんが出てきました。そこで、いすみ鉄道ではポスターを作成して駅や車両内に張りました。キャッチコピーは、“ここには、『なにもない』があります。”です。
このポスターは、「よさがわかる人だけ来てくれればいい」というメッセージなのです。

その後も、車内でイタリアンのコースや船盛を提供するグルメ列車を走らせるなど、さまざまな施策を打ち出していき、いすみ鉄道は大いに賑わうようになりました。

しかし、なぜ鳥塚氏は、いすみ鉄道の社長公募に応募して、ここまで精力的にやってきたのでしょうか? その原点となる1枚の写真を見せながら説明してくれました。
「この写真の列車の前に立っている中学生が私です。子どもの頃に行った場所は、思い出の場所、大切な場所、なくなって欲しくない場所、わたしにとってはこのいすみ鉄道なのです」
そして、かつての自分がそうだったように、いすみ鉄道が子どもたちにとっての思い出の場所になるよう、子どもたちに向けてさまざまな取り組みを行ってきたといいます。

今年6月、鳥塚氏は社長を退任しました。
「公募社長としての私の役割は、この鉄道を廃止にしないこと。いすみ鉄道の広告宣伝効果は3年間で15億円だそうです。地域にとってなくてはならない鉄道だと示すことができました。これで、廃止にしないという目的は達成したのです」

最後に鳥塚氏は、目先にことにとらわれず、物事をトータルに考えることが重要だと訴えて、この講演を締めくくりました。

3. 事例紹介:「GRANDIT導入・稼働開始とあわせて電子帳簿保存法申請を短期間で実現」

講師:
講師:日鉄日立システムエンジニアリング株式会社 営業統括本部 シニアマネージャ
倉持 岳大 氏

プロフィール:
システムエンジニアの経験を活かし、15年以上、基幹系システム(販売・生産・会計)とその周辺ソリューションを活用した業務改善の提案経験を持つ。電子帳簿保存法に関する提案も多く、申請への課題を持つ顧客の基幹システム状況を把握し、さまざまな業種への同法対応提案の経験を持つ

事例紹介には、日鉄日立システムエンジニアリング株式会社の倉持氏が登壇し、まず電子帳簿保存法の概要に触れました。

日鉄日立システムエンジニアリング株式会社 営業統括本部 シニアマネージャ 倉持 岳大 氏

電子帳簿保存法とは、紙での保存が前提となっている国税関係の帳簿書類について、所轄の税務署に申請し、一定の要件を満たしていれば、電子データによる保存を許可するという特例法です。
電子帳簿保存法申請には、業務効率化、コスト削減、内部統制の維持、情報漏えい対策など、さまざまなメリットがあり、申請には「帳簿の申請」「書類の申請」「スキャナ保存の申請」の3つがあると倉持氏は解説します。

しかし、国税庁ホームページに例示されている通りに申請に必要なシステムを構成すると、会計側のインターフェースをユーザー側でつくらなければならないなど新たな課題が浮上してきます。
「その課題を解決するための提案が、『GRANDIT電子帳簿保存法申請支援パック』です」と倉持氏は語ります。システム導入の具体例として、自身が関わったA社のプロジェクトについて取り上げました。

それまでA社では、個別最適システムによって会計データを参照していたため、サマリーでしか内容分析ができず、情報収集に時間がかかり、経営判断が迅速に行えないという課題を抱えていました。そこで、ERPの導入を検討するのですが、ERPでは詳細なデータを取得・参照できるというメリットがある一方、仕訳の細分化によって伝票枚数が増えてしまうという問題点もありました。そこで、紙に印刷して保存する必要のない帳票に関しては、電子帳票化を進めることになったのです。

申請にあたっては、優先順位をつけ、帳簿の申請と書類の申請を先行し、申請の締め切りに向けてGRANDITの導入作業を進めつつ、3ヵ月間で電子帳簿保存法申請を完了しました。
導入にあたっては、『Paples』という電子帳票のシステムを導入して、インターフェースも含めて提供しました。

日鉄日立システムエンジニアリング株式会社 営業統括本部 シニアマネージャ 倉持 岳大 氏

「採用の決め手として、システム構築に関する効率化が図れる点と、ベンダーの電子帳簿保存法に関する豊富な知識を評価いただきました」と、倉持氏は語ります。

次に倉持氏は、A社では来期以降対応としたスキャナ保存対応について取り上げました。
スキャナ保存対応には、表紙印刷方式と、スキャン先行方式の2通りがあり、それぞれのメリット・デメリットや、フローについて解説。GRANDITとの連携画面イメージも提示して、利便性の高さをアピールしました。

最後に、ERPの帳票環境に関する課題から必要とされる帳票基盤化の事例にも触れ、このセッションを締めくくりました。

4. ソリューション紹介:「失敗しないRPA導入術」

講師:
ナイスジャパン株式会社 エンタープライズグループ ソリューションコンサルタント
小林 勇人 氏

プロフィール:
1986年に日立ソフトに入社後、2000年にRockwell International Japanに転職、この頃よりコンタクトセンターを中心としたソリューションの販売に従事。ナイスジャパンには2年前より在籍しRPAを中心に音声分析やWFM等様々なソリューションのセールスエンジニアを担当し現在に至る。

ソリューション紹介では、ナイスジャパン株式会社の小林氏が登壇し、NICE社が提供するRPAについて、ケーススタディを踏まえながら解説しました。

ナイスジャパン株式会社 エンタープライズグループ ソリューションコンサルタント 小林 勇人 氏

NICE社のRPAには、全自動型のRobotic Automationと、アシスト型のDesktop Automationがあり、この2つのロボットが連携することによって、ITアプリケーションで行うルール化が可能な業務を、人が行うのと同じように処理することができるといいます。

実際、ERP GRANDITとの連携においても、全自動型とアシスト型を適材適所で配置することによって、業務の効率化が図ることができます。

小林氏は、現場主導型でロボットの選定を進めてしまうと、目の前の効率化にだけ目が向いてしまったり、属人化によってコントロールできない「野良ロボット」が発生したりといった、さまざまな問題が発生する恐れがあるため、導入にあたっては、会社としてポリシーを持ってトップダウンで行う必要があると説きます。

また、RPAに対して、誰にでも簡単にできる、勝手に操作を覚えてくれる、なんでも自動化できるといった認識は誤解であり、現実には、継続的なスキル習得が必要であり、RPAはあくまで支援や補助が本質であることを訴えました。

導入・運用にあたっては、RPAを意識した組織構成も重要であるとして、RPA管理部門/チーム(CoE)を設け、そこが中心となって各部署を調整、ハンドリングしていくことを推奨しました。

ナイスジャパン株式会社 エンタープライズグループ ソリューションコンサルタント 小林 勇人 氏

次に小林氏は、導入事例の解説に入りました。
B社では、月間5万件に上る支払処理があり、業務の効率化が急務となっていました。そこでRPAとERPの連携による業務効率化を図ったとのこと。
ベンダーからメールで送られてきた請求書の書式を送信元アドレスから自動判別し、OCRでデータ化します。基幹システムの発注データと照合して問題がなければそのまま支払処理をし、問題があった場合でもデータの自動修正を行い、支払処理するというものです。これによって、業務効率は78%向上し、エラーは100%撲滅という効果が得られました。

また、国内のコンタクトセンターの事例についても取り上げました。
3社コンペで、他社が画像認識の技術を提案したのに対して、NICE社はオブジェクト型での認識技術を提案し、730秒かかっていた作業を10秒台で収めることに成功。その結果、見事採用されたとのことです。

そのほか、動画によるOCR活用事例の紹介や、総務省でNICE RPAが採用されたことも紹介されました。

最後に小林氏は、ポイントとして、「ロボット導入がゴールではなく、業務効率向上を目標にすること」「企業内にロボット導入の体制づくりが必須であること」「技術は進歩・変化し続けるので一回つくって終わりにはならないこと」の3つを挙げ、このセッションを締めくくりました。

製品戦略紹介:「進化系ERPとしてのGRANDITの方向性と今後の展望について」

セミナーの最後に、GRANDIT株式会社のマーケティング室長 高橋から、「進化系ERPとしてのGRANDITの方向性と今後の展望について」と題して、説明しました。

GRANDIT株式会社のマーケティング室長 高橋 昇

まず、2018年4月から採用している新たなメッセージ「進化系ERP」について、このメッセージには「さらなる成長を目指す企業のために進化を続ける」という意味が込められていると解説しました。
改めてお客さま目線に立って発信されたこのメッセージは、「日本企業の成長を支える」というビジョン、「ビジネスの可能性を拡げ、企業価値を最大化し、満足していただく」というミッション、そして「『成長』という名のERP」というアイデンティティから導き出されています。

次に、5月にリリースしたGRANDITの最新バージョン「GRANDIT Ver.3.0シリーズ(以下、「GRANDIT 3.0」)」の説明をしました。
GRANDITのコアとなるベースの機能は、10のモジュールを組み合わせて『統合ERPパッケージ』として使えることです。コアの部分は変えず、このコンセプトを守って成長を続けていきます。
そして、従来は周辺機能だったワークフローや、EDIなどを標準搭載している点もGRANDITの大きな特長のひとつです。こういった点を伸ばしていくのが、今後の成長の方向性の軸です。また、多言語対応やスマートデバイス連携についても、引き続き進めていきます。

また、GRANDITの大きな強みとして、コンソーシアム方式で開発されている点を挙げました。
オリジナルのパッケージに加え、さまざまな業種業態で強みを持つパートナーが豊富なテンプレートを提供しています。テンプレートもGRANDIT本体の進化に合わせてリリースされ、本体と組み合わせて使うことで、より多くのお客さまの業種業態に対応できる上、導入期間短縮といったメリットが生まれます。

次に、「GRANDIT 3.0」から大きく変化した点について解説していきます。
一つ目として、「モダンブラウザ対応」を挙げました。「GRANDIT 3.0」では、企業の多様な働き方を支援するために、モダンブラウザ(Internet Explorer、Microsoft EdgeやGoogle Chrome)への対応を強化しました。モダンブラウザ対応によって、GRANDITと各種デバイスや外部のクラウドサービスとの連携もシームレスに行えるようになり、これからの企業システムにふさわしい基盤を構築しました。

GRANDIT株式会社のマーケティング室長 高橋 昇

また、グループ管理機能については、前バージョンから力を入れている点であると前置きしながら、「GRANDIT 3.0」からはさらに機能強化を図ったといいます。
具体的には、「グループ統合データマート」の提供です。これにより、GRANDIT内のデータをまとめることはもちろん、グループ内にGRANDITを導入していない会社がある場合でも、データ統合によって一元管理を行い、集計・分析することが可能となります。

「GRANDIT 3.0」からの変化で最も大きなものが、RPAとの連携です。
NICE社のRPAエンジンを採用し、連携を図ることで、これまでIT化が難しかった基幹業務の前処理や後処理といった手作業の業務を代行することが可能になるといいます。
アンケートによって、さまざまな自動化ニーズも明らかになりました。例えば、販売系の見積作成や経理系の仕訳、経費計算などの基幹業務に関するもの。そして、基幹業務以外では、経営会議資料作成やレポート作成、外部サービスのデータ活用などです。
自動化の一例としてWEB-EDIからの受注EDI取込イメージのデモ映像を放映し、自動化によって担当者の負担が大きく軽減される上、ミスが抑えられ、業務効率化が図れる点を強調しました。

「GRANDIT 3.0」の製品ロードマップについても触れ、「まずはRPA搭載のERPとしてリリースしましたが、今後はAPIやAIとの連携についても積極的に取り組み、今後も導入案件や連携ソリューションのノウハウを取り込んで順次拡充予定です」と述べました。

GRANDITコンソーシアム発足15周年を迎え、導入ユーザー企業様も1,000社の大台に達しました。今後ともGRANDITは、進化系ERPとしてユーザー企業様の成長に向け、コンソーシアム一体となって邁進してまいります。

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