セミナーレポート

GRANDITユーザー会 2020
開催レポート

2020年、GRANDIT は製品リリースから16年が経過し、導入企業数は1,180社を超えました。また、7月には新バージョン「GRANDIT Ver.3.1」をリリースし、周辺システムとの連携強化、汎用性機能の向上など、企業成長に寄与するビジネスプラットフォームとして、更なる進化を実現しています。
例年、ユーザー様へ日頃の感謝を込めて「GRANDITユーザー会」を開催してきましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、2020年の「GRANDITユーザー会」は、11 月26 日(木)に、オンラインでの開催となりました。

1. 開催のご挨拶

開催のご挨拶:
GRANDIT株式会社 代表取締役社長
  石倉 努

開催挨拶にあたり、石倉社長は「皮肉なことに、COVID-19(新型コロナウイルス)感染症拡大によって遅れていた日本のデジタル化が急速に進み始め、ソフトウェア投資に限ると企業の投資意欲は増しています。それだけ私たちITベンダーへの期待は大きく、ERPの重要性も高まっています」と語り、コロナ禍において企業が基盤強化の必要性に直面し、ERPの重要度が増しているとの認識を示しました。

そして、2020年7月にリリースしたGRANDIT Ver.3.1について触れ、主な強化内容として、主要営業支援システムとの相互連携の実現や、取引先マスタや商品マスタの管理コード桁数を大幅に拡張することで大規模システムとの円滑な連携が可能になった点をアピールしました。

また、同じく7月にGRANDITの業務自動化に特化したRPAロボットをテンプレート化してサービスとして提供したことにも触れ、「お客様パートナー様の声に耳を傾けて成長という名の ERP に恥じない進化を続けてまいります」と、改めてその姿勢を明らかにしました。

2. 講演:「DXで変わる、企業の未来」

講師:
株式会社エル・ティー・エス ビジネスコンサルティング第2部 マネージャー
鈴木 稔 氏

プロフィール:
大手ITベンダーとそのグループ会社でのDX活動支援に従事。また、製造業、食品加工メーカーの製造現場へのAI適用実験、モーターメーカーや自動車部品メーカーでの新規ビジネス創出支援等に従事。現在は、京都大学と連携して「エフェクチュエーション」理論を大企業へ適用するモデルづくりと、ビジネスへの適用を実践中。

2020年のGRANDITユーザー会最初の講演は、株式会社エル・ティー・エスの鈴木稔氏によって行われました。

株式会社エル・ティー・エス ビジネスコンサルティング第2部 マネージャー 鈴木 稔 氏

エル・ティー・エス社は、2002年創業の企業変革を専門とするコンサルタント集団です。DXというテーマに対してデジタル活用の導入支援だけではなくビジネスプロセスそのものにこだわり、それらをしっかりと社内に浸透させていくコンサルティングを行っています。

鈴木氏は、まず「DXとは何か」の確認から講演を始めました。DXの定義は様々ですが、ここでは経済産業省、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)、日本マイクロソフト株式会社の吉田仁志社長、それぞれが提唱するDXの定義に触れ、その上で、経済産業省の定義を基にしたDX実現への変革レベルを整理しました。変革レベルは、デジタイゼーション、デジタライゼーションを経てデジタルトランスフォーメーション(DX)に至ると言います。

次に、これら3つの変革レベル別に事例の紹介に入りました。
事例①は、デジタイゼーション(アナログ作業のデジタル化)で、部品の保守作業の故障予測を前提としたプロセスに変革した事例です。
企業は、装置メーカーX社。X社は以前より装置に組み込まれる部品の保守について、定期的な巡回と故障発生時の人力対応を行っていました。しかし、日常点検の削減や故障の事前予測、適切なタイミングでの保守ができていない課題を抱えていました。そこで、保守と営業・開発が連携するプロセスの構築を目指して、保守データを活用して故障予測をするAI実験を実施しました。この結果、保守プロセスの変革はもちろん、AIの活用による装置故障予測システムの外販への企画までに発展しました。

事例②は、デジタライゼーション(業務横断プロセス変革)の事例です。AIを導入することにより、商品アイテムの変更にあわせたラインの生産性向上を図りました。
企業は、食品メーカーY社。Y社は、食品製造工程での品質検査において、熟練した作業員に依存した品質検査を行っており、これが生産性向上と商品アイテムの変更をタイムリーに行う際のボトルネックになっていました。そこで、お客様ニーズの変化に対して、タイムリーに商品提供できる開発・生産プロセスの構築を目指し、商品開発から製造プロセスへのAI活用実験に取り組みました。この結果、効果的なAI導入箇所が特定され、今後の商品開発プロセスの自動化構想へと発展しました。

事例③はデジタルトランスフォーメーション(経営イノベーション)で、BI活用による全社の労働生産性向上を実現した事例です。
企業は、総合商社Z社。Z社では現場主導のデータ分析について、ERPは密結合が実現できていましたが、現場のデータ活用が従来型の帳票依存になっていました。そこで、全社統合のデータ分析基盤構築による労働生産性の向上を目指し、BI基盤構築、啓発・トレーニング、社内向けデータ分析コンサルティング等による、現場データ分析業務の高度化に取り組みました。数年に及ぶ継続的なレベルアップ施策によって現場主導のBI活用は浸透し、現在は本格的な経営イノベーションのフェーズへと到達しています。

次に鈴木氏は、DX実現に必要な要素について解説を進めました。
DXの推進には、組織の成熟度レベルを高めていく必要があります。しかしながら、IPAの分析レポートによると、レベル1~5の成熟度のうち、全企業平均で1.4、先行企業平均でも3.4にとどまっています。多くの企業がDXに取り組んでいるものの上手く進んでいません。それは一体なぜなのでしょうか。
鈴木氏によると、「具体的なプロセスや成果が不明瞭、施策に必要な組織が巻き込まれていない、各部門のつながりを意識したデジタル化ができていない、手段の目的化が起きているなどの理由がある」と言います。
そして、DX推進に必要な要素として、「経営サイクル、既存ビジネス変革、新ビジネス創出、これら3つのデジタライゼーションと、それらをつなぐプラットフォーム(情報のエコシステム)が重要。それぞれがつながり、サイクルとして回ることで、競争優位の創出につながる」と、訴えました。

それでは、DX実現に向けて、どのようにアプローチすればよいのでしょうか。
鈴木氏によると、「現状の延長線上を超えた“DXで変わる企業の未来(Moon Shot)”を描き、そこからのバックキャストが大事になります。さらに、そのバックキャストに合わせて、組織の変革・組織の進化をデザインして進めていくことが重要です」とのこと。ただし、このやり方をいきなり現状の指針や進行中のプランに当てはめるのは難しいため、「まずバックキャストの思考を、経営層と現場でDXを推進するメンバーが身に着けることから始めるのが第一歩」と、現実的なアプローチを提示しました。

最後に鈴木氏は、DXを実現するために必要なこととして

  • スモールスタート、でもビジネス意図・狙いや理想の姿を意識する
  • プロセス全体で課題を共有し、全体がつながるサイクルを回す
  • デジタル技術導入と同時に、人と組織を育てる
  • ERPは、その始まり(活用するデータがあるはず)
と整理し、「未来を予測する一番良い方法は、自らそれを創ること」というAlan kayの言葉で、本講演を締めくくりました。

3. GRANDIT活用事例・ソリューションのご紹介:「単純作業からの解放。そしてコロナで増えた業務に対応したGRANDIT× RPA事例のご紹介」

講師:
日商エレクトロニクス株式会社 DX第二事業本部 デジタルレイバー推進部 一課 課長
三浦 王介 氏

プロフィール:
独立系システムコンサル企業で基幹業務システムSE、監査法人系ITコンサルファームでの多数のERP・BI・SCM案件のコンサル・PM活動を経て2010年より日商エレクトロニクスへ入社。
GRANDIT、ECMの導入コンサル、PMとして活動の後、2017年よりデジタルレイバービジネス (RPA+AIOCR) の立ち上げ・推進とエンジニア育成を行っている。

GRANDIT活用事例・ソリューションの紹介は、GRANDITとRPAの連携について、日商エレクトロニクス株式会社の三浦氏から解説がありました。

日商エレクトロニクス株式会社 DX第二事業本部 デジタルレイバー推進部 一課 課長 三浦 王介 氏

日商エレクトロニクス社は、ユーザー向けにGRANDITおよびRPAの導入支援を行っているほか、自社内でもGRANDITとRPAを活用しています。そこで、本事例紹介では、自社で実際にGRANDITとRPA活用するユーザーの視点から、具体的な話を聞くことができました。

まず、同社がPRAを導入した動機について、三浦氏は次の点を挙げました。

  • 働き方改革の推進
  • 仕事の精度を向上させたい
  • PRA化の過程で業務の標準化を進めたい
その上で、日商エレクトロニクス社自身がPRAを使いこなし、運用ノウハウを蓄積することが、お客様への提供価値向上に直結すると、サプライヤー視点での効果にも触れました。

今回紹介する事例は、目的別に大きく分けて2つ(単純作業を自動化した事例、コロナ禍で増えた作業を自動化した事例)あります。

  • 単純作業を自動化した事例

    GRANDITに関する単純作業を自動化した事例の1つ目として、出荷帳票の確認、印刷、台帳への記載といった一連の作業を自動化した例を紹介しました。
    日商エレクトロニクス社では、サーバーなどの出荷業務にあたり、GRANDITへアクセスして出荷に必要な帳票が来ているか確認した上で、印刷を行い、エクセルの管理表に転記してチェックするという作業を繰り返していました。この作業は、朝8:45~17:00まで、15分おきに、1日30回ずつ繰り返されていたとのことです。
    この膨大な作業を自動化して、帳票印刷と管理台帳への記載をロボットが行うようにしたところ、チェック以外の9割を自動化することに成功しました。これにより、業務負担が軽減されたことはもちろん、副次的な効果もあったと、三浦氏は言います。
    「PRA化をきっかけとして業務の見直しが進みました。他にも、業務確認の過程で、手作業でやっていることが既存システムの機能でできることを発見することが割とあったのです」

    GRANDITに関する単純作業を自動化した事例の2つ目は、GRANDITとAIOCR、及びPRAを活用して、支払データと請求書の突合を自動化した事例です。
    従来は紙の請求書をベースに、人が支払予定のデータを呼び出し、照合していましたが、ロボット導入後は、紙の請求書をスキャンして電子データにした上で、ロボットが支払予定データと照合を行うように自動化し、作業効率が大幅に向上しました。

  • コロナ禍で増えた作業を自動化した事例
  • 続いて、コロナ禍で増えた作業を自動化した事例の1つ目に移ります。
    多くの会社と同じく、同社ではコロナ禍で社員の出社日数が減りました。そのため、以前は社員に対して通勤費(定期代)を一括前払いしていましたが、日別に全て立替交通費精算に変更されました。この立替交通費は、通常であれば人が約15分かけて直接GRANDITに入力する必要があります。それを1000人分なので、1ヵ月では約250時間かかる計算です。
    その作業にRPAを導入すると、人が日別の交通費をエクセルに入力してロボットがメールするのに約3分、そのエクセルをロボットが自動でGRANDITに登録(このときGRANDITには保留で登録して申請者にメールする設定)し、その後申請者が保留から申請に変更するのに約2分、人の作業時間としては1件あたり約5分で済むことになります。
    つまり、人の作業時間は5分×1000人×1ヵ月=約83時間となり、自動化前のわずか17%まで削減できる見込みとなります。
    なお、この事例について三浦氏は、「GRANDITの良い点は、申請や承認を設定できるところにあり、内部統制を考えたときにロボットが入力したものを人がチェックできる点が強み」であると、GRANDITの優位性を強調しました。

    次に、コロナで増えた入力作業を自動化した例の2つ目です。
    日商エレクトロニクス社は、早期からZoom販売代理店だったため、コロナ禍で取引量が激増したと言います。受注売上はGRANDITとCRMで管理しており、自動化以前は、GRANDITに入れた受注情報を売上見込としてCRM/SFAシステムへ取り込むエクセルフォーマットへ二重入力していました。この作業を時間に換算すると、1000時間/年かかる計算です。しかし、この作業にロボットを導入したところ、作業時間は半減したと言います。
    まず、人がGRANDITに受注情報を入力し、ロボットがそれを汎用出力でCSV出力した後にエクセルへ変換します。そして人がCRMに一括登録するという手順です。この際、GRANDITの機能を有効に活用することも必要だと、三浦氏は語ります。
    「突然業務が増えることはあります。その時でも、いきなり人を増やすことは教育を含め困難で、現有戦力で乗り切らなければならないことが大半です。残業でカバーしても、人を増やしても、ミスが多くなります。手戻りや、そもそも業務が回らなければ、ひいてはコンプライアンス違反、機会損失を招き、事業リスクを顕在化させてしまうでしょう」
    そして、こういったリスクに対しては、「デジタルレイバー」を活用するのが解決策の候補となると、訴えました。

最後に、GRANDIT関連でPRA化した業務の一覧を紹介するとともに、自動化による効果のまとめとして次の点を挙げました。

  • 労働時間削減(費用削減)の効果
  • 突発的に増えた業務への人力による最低限の対応
  • 業務やシステム利用の見直しする機会になる
  • 定型・単純作業を減らして、社員のモチベーションを向上
  • 人手の問題で2週間かかっていた作業が5分でできる
  • 月初のみ大量に発生するが人を定常的に増やすほどではない業務への対応

詳しくはこちら
日商エレクトロニクス ERP事例サイト
※日商エレクトロニクス株式会社のERP事例サイトへリンクします

4. 講演:「ニューノーマルな働き方を支援!~法対応に向けた取引書類の「電子化」の進め方~」

講師:
SKJ総合税理士事務所 所長・税理士
袖山 喜久造 氏

プロフィール:
平成元年、国税局採用。約15年間にわたり、大企業の法人税調査事務に従事。
平成21年から情報技術専門官として電子帳簿保存法担当となり、申請書類の審査や企業の申請相談に携わる。
平成24年に退職し、税理士事務所を開業。現在、「適正な会計情報のディスクローズのための企業の電子化」に向けた税務・電子帳簿保存関連のコンサルティングを行っている。

コロナ禍でテレワーク対応が迫られる中、取引書類の扱いも紙ベースから脱却して電子化への対応が急がれています。
本講演では、SKJ総合税理士事務所の所長・税理士の袖山氏から、電子化対応の進め方について解説がありました。

SKJ総合税理士事務所 所長・税理士 袖山 喜久造 氏

袖山氏ははじめに、ニューノーマルへの対応として、経理業務の課題と解決策を整理しました。
「紙の書類には様々な問題点があります。例えば、共有するにはコピーが必要、移動は持ち運び、現物を確認・処理しなければなりませんし、保管も現物を保管する必要があります。しかし、これらの問題点は電子化で解決することができます。紙で受け取った書類はスキャナ保存して電子化(解決策①)、書類の授受をデータでの授受に切り替え(解決策②)て、電子取引にする。今、印鑑は不要だという意見もありますが、契約書などへの押印はどうすればいいでしょうか。電子化にあたっては、印鑑に代えて電子証明書を採用する(解決策③)という方法があります。帳簿や書類は紙ではなく作成したデータを保存する(解決策④)。社内の認証行為も、電子ワークフローの導入(解決策⑤)で代替できます」
袖山氏は、上記によってニューノーマルな経理業務への対応が可能になると訴えました。

では、実際に電子化を検討するにあたり、どのような書類や帳簿をどのように電子化すればいいのでしょうか。それには、税法で申請が必要か、保存が義務づけられているかで対応が変わると言います。
「国税関係帳簿・国税関係書類は、法人税法で保存が義務付けられており、データ保存に当たっては申請が必要です。作成データがない相手方から受領した請求書などは紙の書類をスキャナ保存することで対応可能ですが、その際にはスキャナ保存の申請も必要になります。国税関係書類以外の書類、例えば電子契約書や請求書を添付したメールデータ、Web請求書などは、申請は不要ですが、データの保存が義務づけられています」
ここで袖山氏は、電子帳簿保存法の仕組みを整理しました。
電子帳簿保存法は①国税関係帳簿書類の保存方法の特例と、②電子取引に係るデータの保存義務の2つの構成に分かれると言います。
「①国税関係帳簿書類の保存方法の特例について、原則として法人税法・消費税法等では紙による備付け・保存が必要ですが、特例として電子帳簿保存法でデータによる備付け・保存が認められています。これには、事前に所轄税務署長の承認が必要であり、一定の入力・保存等の要件があります。
一方、②電子取引に係るデータの保存義務について、取引情報をデータで授受した場合のデータの保存義務規定によって、電子取引に係るデータの保存が義務付けられています。これはすべての電子取引が対象であり、データへの措置・保存要件があります」

次に袖山氏は、スキャナ保存に焦点を当てて解説を進めました。
「スキャナ保存の法令要件には大きく分けて2方向あります。1つは機器とシステムの要件、もう1つは社内の入力体制、つまり運用の要件です」
そして、それぞれについてポイントとなる要件を取り上げて解説しました。
「まず機器とシステムの要件ですが、システムの要件としては、タイムスタンプ付与機能があること、訂正削除データの保存及び確認ができること、入力者情報の確認ができること、証憑画像データと仕訳明細データが紐づけられていること、検索機能があること」
これらを主なポイントして挙げた上で、システムの要件以上に大変なのが、運用要件だと言います。
「社内の入力体制としては、業務サイクル後に速やかに入力する(約67日以内に入力)こと、原本確認が受領者のみの場合には、自署後、速やかに入力する(概ね3営業日以内)ことが求められます。また、適正事務処理要件という不正防止のための要件があり、社内規定・業務フローを作成して申請書に送付する必要があります。それには、①相互けん制体制(2人以上の体制で入力)、②定期検査体制(入力担当者以外の者が行う)、③改善体制(一定の権限者に報告する体制)などの要件を満たす必要があります」
なお、適正事務処理要件は、中小企業には過重な負担のため規制緩和される可能性があると述べた一方、大企業はガバナンスのためにも必要な要件であると位置づけました。

次に、電子取引データの保存要件の解説に移ります。
「電子取引に係る電磁的記録の保存要件について、申請は不要ですが、以下の(1)~(4)の要件に従って保存する必要があります」

  • (1)保存場所:送付側、受信側ともに、納税地において閲覧・出力可能であること
  • (2)保存期間:7年間
  • (3)措置:以下の4つの措置のいずれかの措置で対応が必要
    • ①送信者側のタイムスタンプ付データを送信。受信者側は検証機能付き
    • ②取引情報の授受後、遅延なくタイムスタンプを付与・保存担当者情報を確認できるよう措置
    • ③訂正削除できない(又は訂正削除履歴が保存)システムでデータを授受及び保存
    • ④正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理規定を備付け・運用
  • (4)保存要件
    授受方法によって下記の対応を行う
    • 関係書類の備付け
    • 見読性の確保
    • 検索機能の確保

なお、上記(3)の③については、クラウドサービスを活用すれば可能になります。

次に、袖山氏は「スキャナ保存されたデータや電子取引のデータを一元管理できる仕組みが、これからの電子化対応のポイントになる」と述べ、領収書・請求書等の電子化イメージを解説しました。
それによると、電子化された上できちんと管理されていなければ内部統制上問題となるため、以下のような仕組みの導入が理想的だと言います。

  • 全てデータ化し、一元的に書類保存システムを活用して保存
  • 仕訳の明細データと紐づけてこれらのデータを保存
  • 帳簿を作成するシステム(GRANDITなど)のデータをDB上で保存(帳簿保存システム)し、帳簿データの仕訳データと、証憑データを紐づけて保存する

最後に、袖山氏は「こうした取引書類を社内で入力・承認する際に、自動入力するRPAやOCRの導入、電子的に承認が行える電子ワークフローの採用などで、ニューノーマルな対応が可能になる」と訴え、本講演を締めくくりました。

5. GRANDIT活用事例・ソリューションのご紹介:「GRANDIT導入とあわせた電子帳簿保存法への対応事例」

講師:
日鉄日立システムエンジニアリング株式会社 産業流通ソリューション事業本部 ソリューション営業部 シニアマネジャー
柿木 満 氏

プロフィール:
15年以上、基幹系システム(販売・生産・会計)と周辺ソリューションを活用した業務改善提案を経験。昨今においては新型コロナウイルスの影響により、テレワーク/リモートワークや電子帳簿保存法に関する多数の問合せ・提案を実施。課題を持たれている顧客の基幹システム状況を把握し、課題解決に向けたソリューション提案を担当。

GRANDIT活用事例・ソリューションの紹介として、日鉄日立システムエンジニアリング株式会社の柿木氏から、GRANDIT導入とあわせた電子帳簿保存法への対応事例の紹介がありました。

日鉄日立システムエンジニアリング株式会社 産業流通ソリューション事業本部 ソリューション営業部 シニアマネジャー 柿木 満 氏

まず、電子帳票システムに求められる主な要件についてです。
「主な要件は、上位システムとの連携要件、帳票運用の要件、セキュリティ上求められる要件の3つに分けることができます。特に、既存の基幹システム帳票がシームレスに取りこめること、アドオンや新規帳票作成が容易なこと、帳票データの二次活用、ペーパーレス化や運用コスト低減につながること、基幹帳票の長期保存に耐えうること、電子帳簿保存法における利用、などがポイントになります」
これらの要件に対して、日鉄日立システムエンジニアリングが提供する電子帳票システム「Paples(パピレス)」では、基幹システム、ドキュメント、データなどから帳票自体を取りこみ(または作り)、それらを保存・管理し、出力することが可能となっていると言います。

次に、電子帳簿保存法への対応概要についてです。
「PaplesはJIIMAによる認定ソフトウエアを取得しており、GRANDIT専用インターフェースを含め、電子帳簿保存法の帳簿・書類・スキャナ申請を実現するためのソリューションとして提供しています。なお、オプションで電帳法サポートサービスの提供も行っています」
また、導入におけるメリットについても次の通り説明がありました。
「税法上データ保存期間は7年(欠損金繰り越し時10年)必要ですが、基幹システム側にデータを保持せずPaplesにて保管することで、データ量増大による基幹システムのレスポンス低下を回避できます。また、250件を超える電子帳簿保存法の申請ノウハウと、提携税理士の充実した支援をご提供できます。GRANDIT会計系機能のみ導入の場合でも、電子帳簿保存法への対応が可能であり、さらにオプションを追加することでGRANDIT活用範囲を拡張することも可能です」

続いて、帳簿・書類への対応については、「財務会計システムからPaplesへ帳簿・書類データを連携し、見読可能性と検索機能を担保して、電子帳簿保存法の要件に対応している」と言います。

スキャナ保存への対応としては、分散入力と集中入力という2通りの実現方法に対応しているとのこと。
「分散入力は、証憑をスキャンしてファイルサーバーに保存したPDFファイルを伝票入力時に登録し、専用インターフェースでPaplesにキー情報と共に連携することにより、相互関連性と検索性が確保されます。集中入力は、QRコード付きの表紙を印刷し、証憑文書と共にスキャニングすることにより文書データと帳簿データが紐づいて保管され、相互関係性と検索性が確保されます」

電子取引への対応としては「WEB配信サービスとPaplesを連携させて注文書や請求書など従来郵送していた帳票を取引先に電子公開することが可能です。電子契約サービスを利用した場合、双方のペーパーレス化が実現します」と解説がありました。

また、日鉄日立システムエンジニアリング社が新たにリリースした電子契約(署名)サービス「DocYou」についても紹介がありました。
「これは、電子署名やタイムスタンプ、個人認証の機能を持つ電子契約のクラウドサービスで、専用サーバーや電子署名の取得などが不要なため、低コストですぐに利用でき、コスト削減や業務効率化、コンプライアンスの強化、テレワークの推進をサポートします」

最後に柿木氏は、「これらのシステムやサービスを駆使して、帳票業務全般の最適化をサポートする真のオールインワンソリューションをご提供します」と訴え、本事例紹介を締めくくりました。

6. GRANDIT 今後の展望

GRANDIT株式会社
GRANDIT 今後の展望

GRANDITの今後について紹介しました。

まず、ERP市場の最新動向についてです。昨今、DXの実現、業務プロセスのデジタル化といった市場ニーズが高まっており、ERPもクラウド化のニーズが高まっています。
ERP市場の成長について、2021年はやや落ち込むものの、2022年には回復すると推測されています。またERPパッケージの運用形態の比率に関しては、クラウド化が進み、2021年には63%以上の企業でクラウド化する、とマーケットレポートの予測もあります。

ERPパッケージに期待する項目は、利用する立場によって様々であり、様々な立場の方の期待に応えることが求められています。GRANDITの導入社数の推移をみると、過去5年間で年平均は80社となり、様々な業種・業態のお客様に導入いただいています。

次に、2020年度のトピックスについてです。最大のトピックスとして、2020年7月に、GRANDITの新バージョン、Ver.3.1をリリースしました。
このバージョンで機能強化された点としては、SFAとGRANDITを連携するAPIの開発、オペレーション領域、統合データベースの桁数拡張、データマートのテーブル拡張などを挙ることができます。
WEB-APIによるSFA連携について見ますと、案件管理~見積管理までの営業活動をSFAで管理し、受注以降の取引情報はGRANDITで一括管理するなど営業活動~取引情報を統合管理することが可能になりました。
また、汎用性の向上については、各種伝票入力画面のヘッダー情報に項目を自由に追加できるようになりました。以前はカスタマイズで対応してきた内容ですが、標準機能として項目追加を実現。追加した項目は検索項目のキーとして使えたり、帳票への印字に対応したりと、汎用性が高まりました。
RPAによる周辺業務の自動化についても機能強化が図られています。RPAをどの業務に適用すべきかというお悩みに対して、業務の自動化に特化したロボットをテンプレート化して、サービスとして提供しています。業務カテゴリーは、大きく分けて、マスタ更新、監査・チェック、バッチ実行の3つとなっています。業務シナリオとしては全78業務。GRANDITの78機能に対しての業務シナリオとなっています。

GRANDITは、コンソーシアムパートナーのソリューションと連携し、お客様の課題をトータルサポートできるソリューションを順次拡充しています。例えば、生産領域、EDI、勤怠・人事給与など、周辺業務に関しても様々な企業とアライアンスを組み、カバーできる業務領域を広げています。

また、情報発信に関しては、今後はウェビナーによる情報発信に積極的に取り組んでいく予定です。

改めてGRANDITの進化を振り返ってみると、GRANDITはお客様の声、コンソーシアムの叡智、外部環境の変化とともに進化し続けてきたことが分かります。今後の主な開発・強化テーマとしては、業務デジタル化、テレワーク対応、生産性向上、クラウドサービスなどがキーワードとして挙げられます。

今後もパートナー企業の叡智から生まれる製品・サービスとの協業を通じて、お客様のビジネスの可能性を拡げ、企業の更なる成長を支援していきます。引き続きGRANDITの進化にご期待ください。

※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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