GRANDITコンソーシアム パートナー会
開催レポート
ERPやクラウドの最新動向から読み解く
GRANDITコンソーシアムの進むべき道とは?
2019年5月21日、GRANDIT コンソーシアム パートナー会が開催されました。今回は初の試みとして、GRANDIT AWARDの発表や懇親会に加え、ERPやクラウドの最新動向をテーマとした基調講演を開催。有意義な情報に触れるとともに、参加した約80社のパートナーと今後も多様な働き方を支援する進化系ERP「GRANDIT」を通じて、お客様のビジネスの可能性を拡げ、企業価値を最大化し、満足していただくために、参加者一同が決意を新たに協力していくことを確認しました。
1. 開催のご挨拶「2018年度総括と今後の展望」
GRANDIT株式会社 代表取締役社長
石川 研一
石川社長は、2018年度の総括として、コンソーシアム発足15周年でGRANDIT導入社数が1,000社を達成したことについて、改めてパートナーに感謝の意を伝えました。
また、2018年に市場投入した「GRANDIT Ver.3.0」と、同時リリースした「RPA Solution for GRANDIT」について触れ、GRANDITが基幹業務をがっちりと抑え、RPAなどの製品群が周辺業務をGRANDITに繋いでいくことで幅広いサービスを提供できると訴えるとともに、今後もサービス拡充に繋がる製品群の投入に意欲を示しました。
話題は今後の展望に移り、クラウドについて取り上げました。GRANDITでも2019年に入り、「GRANDIT on Azure」の提供を始めています。GRANDIT社がサポートするマイクロソフト社のAzure環境と併せて、月額定額制のサブスクリプションサービスを提供し、クラウドと親和性の高いライセンス形態の提供を行うことで、より幅広いお客様にGRANDITをご利用いただくのが狙いです。
大手ERPの保守期限切れが起こる「2025年問題」を抱え、現在ERP業界では、非常に多くの案件が動いています。そのため、大型案件を抱えている会社にも参加しやすい制度をつくり、GRANDITを紹介してもらえるパートナーを増やしていきたいと、石川社長は意気込みを語りました。
最後に、石川社長は「ERPのコストモデルを変えていく必要がある」と訴えました。従来のように、導入の際に膨大なコストがかかり、バージョンアップでもそれなりに大きなコストがかかるというコスト変動の激しいビジネスモデルから脱却し、一定のコストでERPを使い続けたいというユーザーニーズに応える必要があるという主張です。そのために、アドオン・カスタマイズをできるだけ抑え、パッケージでできる範囲にシステムを絞っていく。その上で、他の周辺サービスとの連携を図っていけば、プロジェクトリスクが低減し、お客様にとってはもちろん、GRANDITのパートナー各社にとっても、大きなメリットに繋がると言います。
そして、成長という名のERP「GRANDIT」の更なる成長に向けて、一丸となって前進していきましょうと、集まったパートナーに向けて発信しました。
2. 基調講演:「最新ERP市場動向2019」~進化するERP、守りのERPから攻めのERPへ~
株式会社フロンティアワン
プロフィール:
1989年 同志社大学工学部化学工学科(生化学研究室)卒業
1989年 米国大手総合化学会社デュポン社の日本法人へ入社。
農業用製品事業部に所属し事業部の営業、マーケティング、広報を担当。
1998年 ERPベンダー最大手SAP社の日本法人SAPジャパンに転職し、マーケティング、広報、プリセールスコンサルタントを経験。その後、アライアンス本部にて戦略担当マネージャーとしてSAP Business All-in-One(ERP導入テンプレート)の立ち上げを行った。
2003年 SAPジャパンを退社しコンサルタントとして業務コンサルティングおよびERP/SCMなど基幹系システムなどの導入支援・提案活動に従事。
2005年 独立し株式会社フロンティアワン設立。ITベンダーのERP/SCM、クラウドなどソリューションの企画開発支援、ユーザー企業のシステム導入支援など業務アプリケーションに関わるビジネスを行う。2015年より一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)のサポート会員として活動(総合企画委員会委員、エバンジェリスト)
基調講演として、株式会社フロンティアワンの鍋野氏が登壇しました。テーマは、最新のERP市場動向です。
鍋野氏は、大きくマーケットが動いている現在、特にここ2~3年で、基幹系へのIT投資の考え方が変わってきたと語ります。中でも2019年以降、ERPに求められるニーズとして、次の5つを挙げました。
1) グループ経営の情報インフラシステム
(会計中心→会計とロジスティクス)
これまでは会計システムの延長だったERPが、今はERPにBIを組み合わせて、販売や購買などのニーズへ導入範囲が拡大している。
2) ガバナンス強化と経営目的に合わせたERPの使い分け(2階層ERP:2Tier ERP)
これは、グループでERPを導入する際の考え方。決算やグループ全体の業績管理を担う本社のERPと、変化に対応する柔軟性や機動力に優れたグループ会社(関連会社)のERPという2階層構成を組むことにより、ガバナンス強化と経営目的に合わせたERPの使い分けが可能になる。
3) ウェブ親和性、柔軟性の高いハイブリッド型ERPシステム(ハイブリッド型ERP)
ウェブ親和性は既に当たり前になりつつあり、その先駆けとしてGRANDITがある。今後は、ERPに機能をアドオン・カスタマイズするのではなく、Webサービス連携によって、ERPの外から機能を補完するハイブリッド化が進むと予想される。
4) 低価格高機能な業種特化型ERP、疎結合での逐次導入も可能(レゴブロック型ERP)
低価格高機能なERPが登場してくるという予想。キーワードは「疎結合」。ブロックを組み合わせるように、ある特定の機能に特化したパーツを組み合わせて一つのシステムを作る流れが生まれる。なお、その際に強みを発揮できるのが、コンソーシアム方式を採用しているGRANDITだとも主張する。
5) 守りのERPから攻めのERPへ「ERP+」で個別サービス化(SoR/SoE、モード1/モード2)
最後に攻めのERPという考え方。これまでは、コスト削減や業務効率化といった内向きの目的にERPを導入する企業が多かったのに対し、今後はERPに何かを足して、売上や成果といった外向きの目的達成を担うERPが求められる。
鍋野氏は更に、「ポストモダンERP」というERP像について解説しました。ポストモダンERPは、テクニカルトレンドと、ビジネストレンドに分類され、合わせて8つのトレンドキーワードで成り立つと語ります。
【テクニカルトレンド】
- ① クラウドERP(リフト・アンド・シフト)
- 今後の主流はSaaS型で、一旦クラウドに上げて、その上で作業を行うのが当たり前になる。
- ② RPA/AI:人口知能(自動化、省力化/省人化)
- 今後はRPAも判断機能を備え、非定型業務も任せられるような「クラス2」と呼ばれるものが主流になってくる。
- ③ IoTとERP(モノ+コト、サービス化)
- 保守・保全、機器メンテナンスといった分野で、IoTとERPを組み合わせた仕組みが既に作られている。
- ④ API連携とERP(疎結合、マイクロサービス)
- アドオン・カスタマイズをするのではなく、外部のシステムやWebサービスで機能補完するERPが増える。
【ビジネストレンド】
- ⑤ 2階層ERP(HDと事業会社・グループ会社)
- 親会社と事業会社とでは、道具立てやシステムが変わった方がいい。
- ⑥ DXデジタル・トランスフォーメーション
- 人が行っていたアナログサービスをデジタルに置き換えることで、サービスが深化、または全く新しい領域をデジタルに置き換えて、全く新しいサービスや市場が生まれる。
- ⑦ マルチプラットフォーム&マルチアプリケーション
- オンプレミスかクラウドかではなく、ケースバイケースで使い分けるようになる。
- ⑧ 守りのERPから攻めのERPへ(SoR/SoE)
- サブスクリプション/リカーリングなど、ビジネスモデルに対応した、攻めのIT(SoE)を実現する次世代ERPが台頭してくる。
また、鍋野氏は、8つのキーワード一つずつについて事例などの資料を添えて解説し、より具体的に従来のERPとは異なる「ポストモダンERP」について紹介した上で、この新たな潮流をしっかりととらえ、ビジネスに繋げていくべきだと訴えました。
3. 基調講演:「『Azure』最新動向」
日本マイクロソフト株式会社 パートナー技術総括本部 ハイブリッドクラウド担当
プロフィール:
日本マイクロソフト株式会社所属。
インフラ系技術担当エバンジェリストとして約12年活動した後、現在はパートナーとのビジネス協業を支援する技術部隊に所属。ハイブリッドクラウド技術の専門家としてイベントやセミナーでの講演、記事執筆、コミュニティ支援などを通じたマイクロソフトの最新技術の啓発活動を行っている。
日本マイクロソフト 高添氏の講演では、今年の5月6日にアメリカのシアトルで開催された開発者向けのイベント「Microsoft Build 2019」から、Azureの最新動向について次の4つを紹介しました。
1) GitHub
「GitHub」は、ソースコードを集中的に管理するサービスで、世界中の開発者が集う「場」として、オープンソースプロジェクトに加え、一般業務システム開発でも利用され始めています。今回AzureとGitHubが、認証で相互連携し、開発環境と一緒にリポジトリを低価格で購入できるようになりました。
2) サーバーレス コンピューティング
ユーザーがサーバーを意識しないで済む「サーバーレス」が注目されており、Azureでもソースコードを簡単に持ち込める「App Service」や「Azure Functions」というサービスを提供しています。さらに、コンテナがサーバーレスの基盤として利用されることも増え、コンテナ管理のデファクトスタンダード「Kubernetes」をベースにした「Azure Kubernetes Service(AKS)」にも積極的な投資を行い、利用者のニーズに応じて複数のサーバーレス環境から最適な解を提供します。
3) AzureのAI
マイクロソフト社では、「Azure Cognitive Services」というサービスを提供しています。これは、AIを活用したAPIサービスで、顔認識を含む視覚情報の処理、音声とテキストの双方向変換や翻訳などを実現します。最新のイベントでは、フォームの自動認識や、決定のためのレコメンド機能の追加なども発表されています。
4) クラウド+エッジ
「Azure SQL Database Edge」のプライベートプレビューも開始されました。これは、「Azure SQL Database」をオンプレミスで動かせるのが特徴で、x86だけでなくARMのプロセッサにも最適化されており、クラウドデータベース風のモバイルアプリを開発しようとした場合、モバイルの中で一旦アプリを完結させることができます。
このようにマイクロソフトは、「インテリジェントクラウド」の強化に加えて、利用者の近くのITも進化させる「インテリジェントエッジ」にも注力しています。クラウドから始まったサービスがオンプレミスにも進出し、様々な機能がハイブリッドで使えるようになってきたため、「クラウドvsオンプレミス」ではなく「クラウド+エッジ」を意識してみるとよいでしょう。
また、業務システムについて考えたときに、ソフトウェアとハードウェアの双方で問題解決を図るアプローチもあると提言しました。
例えば、システムの負荷が高い場合に、ソースコードの見直しというアプローチがある一方で、最新のハードウェアに刷新するというアプローチもあると言います。具体的には、インテル社からストレージのように使える不揮発性のメモリが発表されており、オンプレミスであってもクラウドに負けない高速なITを実現でき、他のシステムも高速さの恩恵が得られるようになります。
「マイクロソフトは、クラウドを推進することで、お客様とITとの距離を縮めている」と高添氏は語ります。ただ、「クラウドの世界は基盤そのものが進化するので、運用も変えていく必要があります。基盤の進化が不要な場合は、仮想化基盤の継続利用もいいでしょうが、コスト高などのデメリットをいかに解消していくかを考える必要はあります」と語り、クラウドの有効活用と、クラウド利用以外の、目の前にあるITを変えて行くことの必要性も訴えました。
2019年2月には、GRANDITでもクラウドを利用したサブスクリプション型のライセンス提供がスタートし、Azureはこのプラットフォームに採用されています。GRANDIT社がサポートするAzure環境と併せて、GRANDITを提供することが可能となっています。
今後も、GRANDITとマイクロソフト社の技術・サービスが手を組み、マイクロソフトのプラットフォームで全方位から皆様の業務をサポートしていきます。
4. 新規パートナーのご紹介
2018年12月にサービスパートナーとして加わった、株式会社エル・ティー・エスの紹介をしました。
株式会社エル・ティー・エス企業情報
5. GRANDIT AWARD 発表
GRANDIT事業に最も大きく貢献したプライムパートナーに授与される「Prime Partner of the Year」、GRANDIT事業に最も大きく貢献したビジネスパートナーに授与される「Business Partner of the Year」、アドオンモジュールやテンプレート、サービスの提供や事例の公開によりGRANDIT事業に大きく貢献したパートナーに授与される「Solution of the Year」を発表しました。
各AWARDの受賞パートナーについては以下の通りです。
◎Prime Partner of the Year:NECネクサソリューションズ株式会社
◎Business Partner of the Year:株式会社インフォセンス
受賞インタビュー記事
◎Solution of the Year:日鉄日立システムエンジニアリング株式会社
(GRANDIT電子帳簿保存法申請支援パック)
『GRANDIT』は、これまでもビジネス環境の変化や技術の進化に合わせて、様々な業種テンプレートの対応、グループ企業で有効に使えるERPパッケージとして成長してきました。今後のデジタル化時代においても、最適なERPとして進化を続けていきます。
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