ERPとCRM解説 ~違いと特徴をわかりやすく解説~

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1.はじめに

「ERP」と「CRM」という言葉を耳にしたことはありますか?
どちらも企業の業務効率化に役立つITツールですが、その役割や特徴は大きく異なります。
本コラムでは、企業の経営層やIT担当者に向けて、ERPとCRMの違いやそれぞれの特徴についてわかりやすく解説します。

2.ERPとは?

ERP(Enterprise Resource Planning:基幹業務システム)とは、企業の様々な業務プロセス(会計、人事、生産管理、販売管理など)を統合し、一元的に管理するためのソフトウェアです。
日本では、1990年代に導入が本格化。当初は外資系のERPパッケージを導入するケースが多かったですが、徐々に国産ERPパッケージが普及。日本の商習慣に対応しているので、カスタマイズが少なく安価に導入できるなどの理由からシェアが拡大しています。
大企業を中心に普及してきましたが、近年ではさらに導入しやすいクラウドERPが増えたことから、中堅・中小企業への利用が拡大しています。

(ERP概念図)

(ERPの主な業務領域と対象業務)

業務領域 対象業務
会計・財務管理 会計処理、財務分析、予算管理
人事・労務管理 採用、給与計算、勤怠管理
生産管理 生産計画、在庫管理、品質管理
販売管理 受注処理、出荷管理、請求管理
購買管理 発注処理、仕入管理

3.ERP導入のメリット

ERPは、企業の大半の部門が利用し、様々な業務プロセス(会計、人事、生産管理、販売管理など)を統合し、一元化できることから、様々な導入メリットがあります。

1)業務効率化

データの二重入力防止、EDIなどの外部データの利用、マスター統合によるデータ精度の向上などの様々な機能で、各部門の情報を一元化し、業務プロセスを自動化することで、各部門の業務効率が向上します。

2)コスト削減

従来型の基幹システムを統合することによる、ITコスト削減。業務の自動化や効率化による、残業時間の減少など、人件費や時間コストを削減できます。

3)経営判断の迅速化

販売管理、生産管理、会計など、業務データが連携、リアルタイムなデータ分析により、迅速な経営判断を支援します。

4)内部統制の強化

各部門の業務プロセスを可視化し、業務処理統制を支援することで、企業の内部統制を強化します。ERPが支援する業務処理統制の主な要素は、次のとおりです。

業務処理統制 説明
入力統制 システムに入力するデータの正確性、完全性、正当性をチェックする
処理統制 処理過程における不正な処理やデータの改ざんを防ぐ
出力統制 システムから出力するデータの正確性、完全性を確認する
マスターデータ管理 マスターデータの正確性、完全性、一貫性を維持する

4.CRMとは?

CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理システム)とは、顧客との関係性を最適化し、顧客満足度向上、売上向上、顧客ロイヤリティ向上などを実現するためのソフトウェアです。
具体的には、顧客情報の収集・分析、顧客とのコミュニケーション履歴を管理し、営業活動やマーケティング施策の評価と最適化を実現することで顧客接点や顧客サポートの向上を支援します。

(CRMの主な機能)

(CRMの主な業務領域と対象業務)

業務領域 対象業務
顧客管理 顧客情報(氏名、連絡先、購買履歴など)を一元的に管理します。
営業支援 営業活動の進捗状況を管理し、営業担当者の生産性を向上させます。
マーケティング メールマガジン配信、キャンペーン管理など、マーケティング活動を支援します。
顧客サポート 顧客からの問い合わせ対応状況を管理し、顧客満足度向上に貢献します。

5.CRM導入のメリット

市場競争の激化により、企業は顧客を獲得し、維持するために、より効果的な顧客戦略を策定・実行する必要があります。加えて、顧客のニーズが多様化し、企業は顧客一人ひとりに合わせたきめ細かい対応やサービス提供を行う必要性が高まっています。
CRMは、企業の顧客対応を支援するソフトウェアで、以下のような導入効果があります。

1)営業活動の高度化による顧客満足度向上

CRMに蓄積された顧客情報や過去の商談履歴などを参照しながら、顧客の問題点や課題を分析。顧客に寄り添った提案やフォローアップ、顧客のニーズに合ったサービスを提供することで、顧客満足度を向上させます。

2)売上拡大

購買タイミングなど、顧客の状況に合わせて情報提供やフォローアップを行う。関連商品や上位モデルへのアップグレードなどを提案するアップセル・クロスセルを効果的に行うことができます。

3)営業効率向上

営業活動の進捗状況を可視化し、営業担当者の生産性を向上させます。加えて、営業活動の進捗状況を営業メンバー内で共有することで、チーム全体の成約率アップにも貢献します。

4)マーケティング効果の向上

顧客属性や購買履歴に基づいて、ターゲットを絞ったマーケティング施策を実施することができます。顧客の興味や関心に合わせた情報提供やキャンペーン展開を行うことで、マーケティング施策の効果を最大化します。
また、マーケティング施策の効果測定に活用することで、今後の改善に役立てることができます。

6.ERPとCRMの違い

ERPとCRMは、どちらも企業の業務効率化に役立つITツールですが、その役割や 目的、管理する情報などが大きく異なります。

区分 ERP
(Enterprise Resource Planning)
CRM
(Customer Relationship Management)
目的 企業の基幹業務全体を統合し、効率化する 顧客との関係性を構築し、強化する
対象業務 会計、人事、生産管理、販売管理など 営業、マーケティング、顧客サポートなど
管理する情報 企業内部のデータ(売上、在庫、従業員情報など) 顧客に関するデータ(氏名、連絡先、購買履歴など)
重視する指標 業務効率、コスト削減、内部統制 顧客満足度、売上向上、顧客維持率

7.ERPとCRMの連携効果

ERPとCRMは、それぞれが企業の業務効率化や顧客関係強化に貢献する強力なツールですが、この2つを連携させることで、さらに大きな相乗効果を生み出すことができます。
例えば、CRM側から、ERPの情報を参照できるようにすることで、顧客からの問い合わせがあった際に、営業担当者が最新の受注履歴や在庫情報、納期情報などを参照することで、迅速かつ的確な顧客対応が可能になります。
また、CRMの顧客サポートデータをERPの品質管理データと連携・分析することで、製品の品質改善に役立てることができます。

8.まとめ

ERPとCRMは、どちらも企業の成長に貢献する重要なITツールです。
また、ERPとCRMを連携させることで、情報の一元化、顧客理解の深化、営業・マーケティング活動の効率化、経営判断の迅速化、顧客体験の向上など、様々な効果が期待できます。
自社の課題やニーズに合わせて、最適なツールを選び、効果的に活用することをお勧めします。

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