効率的な予算管理とは?予算管理システムとERPについて解説
「予算管理」は多くの企業で重要なキーワードとなってくる。予算管理は、紙やエクセルのベースでも実施することは可能だが、予算管理システムを使用することで効率的に実施することが出来
本記事のまとめ
- 効率的な予算管理には「予算管理システム」の活用が有効
- 予算管理システムのなかでも、クラウド型ERPを用いることで「セキュリティ性が高い」「リモートワークに対応しやすい」などのメリットを享受できる
- クラウド型ERPを導入する際には「既存業務の理解」や「変更される業務の周知」が必要
近年では、ビジネスにおいて予算管理の重要性が高まっており、「予算管理システム」を活用する企業が増えています。
予算管理システムとは、予算目標に向けた活動の進捗を管理するためのシステムです。システムを利用することで、予算編成を自動化できるほか、ヒューマンエラーの防止にもつながります。
予算管理システムのなかでも、安価かつ導入のしやすさから人気が高まっているのが「クラウド型ERP」です。通常の予算管理システムのメリットに加えて、セキュリティの向上やリモートワークへの対応などさまざまなメリットを享受できます。本記事では、予算管理に有効な予算管理システムやERPについて、詳しく紹介していきます。
目次
1. 予算管理とは
予算管理とは、企業が達成するべき数値の目標を管理することです。
具体的には、経営管理の要素である、人材、商材、金銭、情報の「金銭」に関わる数値の管理を指します。人事やマーケティングと並んで、企業活動の根幹となる業務の一つといえるでしょう。
予算管理の実施には、おもに以下の3つのメリットがあります。
予算管理のメリット1:会社の最終目標をブレイクダウンできる
ほとんどの民間企業の目標は「利益を出すこと」でしょう。適切な予算管理によって、目標とする利益までどのくらいの乖離があるのかを定量的に把握でき、必要なタスクのブレイクダウンが可能となります。
予算管理のメリット2:業務計画を具体的に作成できる
目標とする利益までの数値を把握できれば、「どんなタスクを」「どのくらいの期間」で達成する必要があるのかが明確になります。部門や担当者レベルで具体的な業務計画を作成するのに役立つでしょう。
予算管理のメリット3:過去の施策を将来に活かせる
予算管理を行えば、「これまでの施策で何が効果的だったか」「その要因は何なのか」といった過去の実績についても整理できます。過去に行った施策を、将来の利益につなげていくことが可能です。
このように、予算管理には様々なメリットがあります。大企業・中小企業問わず、ほとんどの企業が、短期・中期・長期での予算目標を決め、決算に合わせて予算を作成していきます。
2. 効率的な予算管理とは
予算管理の最終目標は「企業に利益をもたらすこと」です。この目標を達成するためには、以下のポイントをふまえて効率的に予算管理を実施する必要があります。
ポイント1:予算管理のプロセスが簡単であること
予算管理を実施する際には、短期・中期・長期の目標を設定します。そして、スパンごとに目標を達成できているか、できていない場合は要因が何なのかを、PDCAを回しつつ精査する必要があります。
PDCAを回すためには、次期に向けて予算の修正を容易に行える仕組みが不可欠です。予算の策定に多くの承認が必要で予算修正に時間がかかってしまうと、PDCAを回すスピードが遅くなり、効率的な予算管理は実現できません。そのため、予算の作成や編成を行う際は、修正が可能な限り簡単にできるようにしておきましょう。
ポイント2:具体的な数字として社内全体に共有されている
予算管理は漠然とした形ではなく、具体的な目標や数値となっている必要があります。そうすることで、社内全体で目標に対する共通の認識を持つことが可能です。また、中小企業では従業員の業務が数字に反映されやすいため、モチベーションの向上にもつながります。
ポイント3:予算管理にかかる無駄な業務を廃していること
「企業に利益をもたらすこと」という予算管理の最終目標につながらない無駄な業務は、可能な限り廃止しなければなりません。たとえば、稟議書を紙で作成し、手作業で判子を押すといった業務は直接企業の利益を生まないため、システムを活用した効率化・電子化が推奨されます。
3. 予算管理システムとは何か
上記で解説したポイントを押さえた効率的な予算管理に役立つのが「予算管理システム」です。
予算管理システムとは、予算目標に向けた活動の進捗を管理するためのシステムを指します。企業は利益を出すために、予算を原価、経費、売上などから策定する必要があり、策定した予算と実績を常に比較して管理を行わなければなりません。予算管理システムを導入することで、以下のようなメリットを得られます。
メリット1:予算編成の自動化による時間短縮
予算管理システムの導入により、予算編成の自動化が実現し、予算編成にかかる工数や人件費を削減できます。たとえば、予算編成のベースとなる請求、支払、仕訳業務の自動化が可能です。
メリット2:予算編成作業を簡易化できる
予算管理を紙やエクセルなどで行っている場合、作業が属人化しやすく、予算管理の手順が担当者以外に分かりにくくなるデメリットがあります。予算管理システムを使用することで、予算編成作業を簡易化でき、システム上で誰にでも分かりやすく管理できるようになります。
メリット3:ヒューマンエラーを防止
予算管理システムを導入すれば、予算編成の精度向上も見込めます。たとえば、予算編成の項目の一つである経費予算を考える場合、前期の経費を計算することになります。その際、紙やエクセルで支払や仕分業務を実施すると、ヒューマンエラーが発生するリスクが高まります。予算管理システムによって作業の自動化を図ることで、このようなヒューマンエラーを軽減できるでしょう。
メリット4:社内への情報共有がしやすい
社内への情報共有がしやすい点も、予算管理システムのメリットです。予算システムの多くは、UI(ユーザーに見える画面のこと)が分かりやすく設定されており、紙やエクセルでの予算管理よりも「見える化」がしやすくなります。
予算管理の大きな目標の一つが、「会社全体としての目標値を部門や担当者レベルに共有して共通認識を持つ」ことを考えると、誰が見ても分かりやすい予算管理システムの導入は非常に有効です。
4. 予算管理システムの選定方法
上記で解説した「予算管理システム」は、大企業向けから中小企業向けまで、さまざまな種類が存在します。ここでは、幅広い種類のなかから自社に合う予算管理システムを選定するためのポイントを4点紹介します。
選定ポイント1:会社の課題に合わせたKPI設定が可能か
会社の課題に合わせたKPIを設定できる必要があります。たとえば、会社の課題が「売り上げの利益率を上げること」であれば、予算管理システム内で、利益に関しての項目(経費や売り上げなど)に関して、項目を詳細にカスタマイズできる必要があります。
ほかにも「従業員を増やしていきたい」という会社の課題がある場合は、人事に関する項目(人件費など)に関して、詳細に設定が出来る予算管理システムを導入する必要があります。
このように、予算管理システムを導入する際は、目標に対してKPIを詳細に管理できるシステムを導入する必要があります。
選定ポイント2:自社のコストに合うか
予算管理システムを導入する場合は、自社のコストに合うものを導入することが重要です。予算管理システムには、主に大企業が使用する大規模なものから、中小企業も使用可能な小規模なものまで、価格帯に幅があります。システムを導入するにあたり、どこまで予算が出せるのかを明確にし、自社の予算に合うシステムを選ぶとよいでしょう。
選定ポイント3:会計基準にマッチするか
自社が求める会計基準に沿った財務諸表管理が可能かも重要なポイントの1つです。特に上場を目指す企業や既に上場をしている企業であれば、日本会計基準や米国会計基準、IFRSなどの基準を考慮する必要があるでしょう。導入前には、会計基準に則した財務諸表への対応が可能かどうかを必ず確認するようにしましょう。
選定ポイント4:ベンダーのサポート体制
予算管理システムを導入する際は、要件定義や設定などさまざまなことを考慮する必要があり、ベンダーからのサポートがあるかどうかは重要なポイントと言えます。一般的に予算管理システムの導入が進んでいる企業では、システム導入の際、専門のコンサルタントに依頼するケースが大半です。導入時や導入後のサポート体制が充実しているか、万が一の時に電話やメールなどで対応してくれるかなど、事前に確認しておくと良いでしょう。
5. ERPとは
予算管理システムの中でも、「ERP」を導入する企業が増えています。ERPとは、Enterprise Resources Planning の略であり、企業経営の基本となる資源要素(ヒト・モノ・カネ・情報)を適切に分配し有効活用する計画やそれを行うシステムのことです。近年では、予算管理システムのなかでも、このERPを採用する企業が増えています。ERPには様々な種類が存在し、一つの業界(製造業、サービス業など)に特化した業界特化型ERPや、一つの業務(経理や人事等)に特化した業務特化型ERPなどがあります。通常の予算管理システムとの違いは以下の2点です。
- 「特定の業務や業界」に焦点をあてたシステムが多く存在する
- クラウド型のERPも増えてきており、比較的安価に導入が可能
中小企業の予算管理向けERP
予算管理システムの多くは大企業向けであるため、導入には高額な費用がかかります。実際、大企業が多く利用するERPベンダーであるSAPなどを導入しようとすると、数億円単位の金額が必要となる場合が多いです。
ERPはクラウド型が主流ですが、なかでも中小・成長企業向けのERPは導入・運用コストが安価に設定されており、さらに予算管理に特化した業務特化型ERPを導入することで、予算管理を効率的かつ低コストで実施できます。
6. 予算管理にERPを用いるメリット
ERPを導入すると、通常の予算管理システムのメリットに加え、以下2つのメリットも享受できます。
メリット1:セキュリティの向上
ERPを使用すると、予算編成のセキュリティ性が向上します。主なERPはインターネットを通じて利用するため、常に最新の予算管理システムを利用可能です。
また、多くのクラウド型ERPでは、常にベンダーがアップデートを行っており、万が一システムの脆弱性が発見された場合でも、すぐに修正が入ります。クラウド上に保管されたデータは、ベンダーによって堅牢に守られているため、サイバー攻撃などのリスクを軽減できるでしょう。実際に多くの大企業が、機密情報が含まれている書類関係の多くを、クラウド型のERPで保管・管理しています。
加えて、エクセルや紙での管理には、メール誤送信や紙の紛失による漏洩のリスクも存在しますが、クラウド型のERPであればこのようなリスクも軽減できます。
メリット2:働き方の多様性に対応可能
クラウド型ERPは、インターネット環境があればどこでも利用できるため、テレワークやフレックス勤務といった多様な働き方にも対応可能です。
従業員にとっては、場所にとらわれずに働けるようになることで、通勤にかかる時間を削減でき、ストレスの解消にもつながります。企業側にとっても、経費の削減や離職率低下など、さまざまなメリットが生まれるでしょう。
メリット3:多くの予算管理システムに比べて安価での導入が可能
業務特化型や業界特化型の中小企業向けクラウド型システムであれば、従来の予算管理システムに比べて比較的安価での導入が可能です。
また、月または年単位で定額料金を支払うサブスクリプションタイプのものには、システム導入に掛かる予算編成がしやすいメリットもあります。
7. ERP導入のポイント
効率的な予算管理のためにERPを導入する際には、以下のようなポイントを念頭において正しいステップで実施することで、ERPのメリットを最大化できるでしょう。
ポイント1:ERPを導入する目標を具体的に設定する
「予算管理を効率化したい」のような漠然とした目標でERPを導入してしまうと、十分な導入効果は得られません。それだけではなく、必要のない部分までERPで管理してしまい、余計な費用がかかるおそれもあります。そのため、「コスト削減」や「予算編成にかかる業務の効率化」など、具体的な目標を事前に設定することが重要です。
ポイント2:ERPを導入して変更したい業務を特定する
目標が明確になったら、その目標を達成するために必要な業務を特定しましょう。たとえば、ERP導入の目的が「予算編成作業にかかる業務の効率化」である場合、予算編成の定型作業をERPで自動化するなどを検討します。
ポイント3:既存の業務と変更される業務への理解
ERPを導入すると、既存業務に大きな変更が生じます。たとえば、予算管理をエクセルや紙ベースで行っている場合は、それらの業務をERP上で実施することになります。「どの業務が変更されるのか」「どのように変更されるのか」、業務フローなどを使って既存の業務を整理し、自動化する業務について理解していく必要があります。
ポイント4:関係者への周知
「どの業務が」「どのように変化するのか」、変更される業務の詳細を関係者に周知しなければなりません。場合によっては、業務フローやマニュアルを作成し、合意を取りながら導入を進めていきます。
まとめ
今回の記事では、予算管理の重要性と、予算管理システムのメリット、ERPを導入する際のポイントについて解説しました。
重要なポイントをまとめると以下のとおりです。
- 予算管理システムは「予算目標に向けた活動の進捗を管理するためのシステム」
- 予算管理システムを利用するおもなメリットは「予算編成の自動化」と「ヒューマンエラーの防止」
- 予算管理システムのなかでもクラウド型ERPを利用する企業が増えている
- クラウド型ERPには、通常の予算管理システムのメリットに加えて、「セキュリティ性が高い」「ヒューマンエラーを防止できる」などのメリットがある
- クラウド型ERPを導入する際は、「目標の設定」「既存業務と変更される業務への理解」「関係者への通知」などが重要なポイント
本記事の内容を参考にして、より効率的な予算管理を検討してみてください。
