「未来を共創する経営基盤へ ~ GRANDITが拓く、DX時代の新戦略」を開催いたしました

インフォコム株式会社は2025年7月22日、東京ミッドタウンカンファレンスにて「【GRANDIT V4発表セミナー】未来を共創する経営基盤へ ~ GRANDITが拓く、DX時代の新戦略」を開催しました。
当日は80名を超えるお客様にご来場いただき、会場は熱気に包まれました。
本セミナーでは、経験豊富な経営コンサルタント2名による基調講演を実施。ERPの最新動向や活用トレンド、導入成功のポイントについて多角的に解説いただきました。
新バージョン「GRANDIT V4」の機能紹介や、パートナー企業と共に行ったクロストークセッションを通じて、業種別活用の具体例もご紹介しました。
ご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。
以下に、当日のイベントレポートをお届けします。


開催について
GRANDIT事業部門 部門長
鳥越 直寿

本セミナーは、最新バージョン「GRANDIT V4」のリリースに合わせ、DX時代におけるERP導入・刷新の成功ポイントを再考する機会として開催されました。
鳥越より開催の趣旨として、人手不足やコスト上昇、サプライチェーンの不安定化など急速に変化する経営環境の中で、DX推進はもはや選択肢ではなく生存条件になりつつあることが強調されました。ERPは業務効率化だけでなく、データ統合や迅速な意思決定を支える基盤として重要性を増しています。
さらに、モジュールを柔軟に組み合わせる「コンポーザブルERP」への注目が高まっており、「GRANDIT V4」もこの思想を反映した製品として紹介されました。
基調講演1 「DXコンサルタントが語る!最新ERP導入計画の成功法則」
務台 博海 氏

みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社の務台氏は、長年にわたりERP導入・刷新プロジェクトの企画段階から支援し、RFP作成やベンダー選定を数多く手がけてきた経営コンサルタントです。本講演では、2018年のDXレポートから続く潮流を踏まえ、最新のERP導入計画における成功の条件と、企業が直面する課題を多角的に解説いただきました。
DX推進の経緯と課題

2018年のDXレポートを起点に、日本企業のデジタル変革は加速しましたが、「2025年の崖」問題の先送りにより一部では機運が鈍化しています。務台氏は、単なるレガシーシステムのリプレイスでは本質的なDXは実現できず、経営ビジョンと一体化した変革が必要だと指摘。DXを推進している企業と未着手の企業で売上高に大きな差が出ているとのことでした。
ERPへの期待と進化

ERPは従来、業務効率化を目的とした「守りのシステム」と捉えられてきましたが、近年はデータ統合や分析を通じて競争優位性を生む「攻めの基盤」へと進化しています。クラウド化やモジュールを柔軟に組み合わせるコンポーザブルERPの潮流により、企業は環境変化に迅速に対応できる体制が求められています。務台氏はこの変化を、クラシックからモダン、ポストモダンへと至る歴史の延長線上にあると解説しました。
Fit to Standardと成功の鍵

近年注目されるFit to Standard(標準機能に業務を合わせる手法)は、コスト抑制やスピード化に寄与します。その一方で、業務の独自性や標準化の限界を見極める必要があります。務台氏は、単に標準化することが目的化してはならず、「全体最適」を見据えた設計が重要と強調。また、評価基準の多角化やプロジェクトメンバーの巻き込み方次第で、成功の確率が大きく変わると語りました。

講演の最後に務台氏は、ERP導入成功の鍵は「関係者全員の自分ごと化」にあると強調しました。経営・業務・ITの視点をつなぎ、熱量を共有することで、システム刷新は単なるIT施策ではなく経営変革そのものとなる──このメッセージは、多くの参加者に強い印象を残しました。
基調講演2 「日本企業におけるERP活用のトレンド」
梶浦 英亮 氏

EYストラテジー・アンド・コンサルティングの梶浦氏は、約30年にわたりERP導入支援を手掛けてきた専門家。小売・サービス業やグローバルビジネスなど豊富な実績を持ち、近年は生成AIとERPの融合にも取り組んでいます。本講演では、日本企業、特に中堅企業におけるERP活用の最新トレンドを解説し、導入・再設計の要点や成功の鍵を提示しました。
日本企業のERP導入・現状と課題

国内では大企業を中心にERP導入が進み、さらには中堅企業にも波及しています。しかし、属人化した業務や多様なアドオン、レガシーシステムの残存がDX推進の壁となっている現状があります。ERPとDX施策が別々に進行し、データ活用が経営判断につながらないケースも多いです。今後は経営層を巻き込み、標準化とデータ統合を前提にした導入が求められます。
ERPの変化・EAの進化

従来の単一基盤型ERPから、API連携やベストオブブリードを前提としたコンポーザブルERPへと進化が進んでいます。業務プロセスやシステム設計を柔軟に組み替えるため、エンタープライズアーキテクチャ(EA)も標準化重視から継続改善型へ転換しています。ERPの使われ方は経理中心から経営データ基盤へと広がり、データドリブンな意思決定を支える役割が求められていると梶浦氏は語りました。
再設計のアプローチ

ERPの再設計では、5つの観点が重要だと梶浦氏。まず、既存業務に慣れた社員の意識を変えるため、経営層が変革を示す文化づくりが必要です。次に、利用ツールを整理し、分散するデータを統合する基盤を構築します。さらに、運用ルールとマスターデータのガバナンス体制を整備し、長期的に活用できる仕組みとすることが成功の鍵になるとしています。これらを段階的に進めることで、DXと一体化したERP導入が実現します。

ERPは単なるシステム刷新ではなく、企業文化や業務の変革を伴う取り組みです。経営層から現場までが課題を自分事として捉え、標準化とデータ活用を軸に継続改善を重ねることが成功の鍵となります。本講演は、変化するERPの潮流を踏まえた導入・活用の新たな指針を提示していました。
新バージョン「GRANDIT V4」ご説明
GRANDIT事業部門 ソリューション企画室長
秋田 道仁

秋田より、ERP「GRANDIT」の最新バージョンV4が紹介されました。
GRANDITは2004年のリリース以来、11社のユーザー系企業が参画するコンソーシアム方式で共同開発され、基幹業務を網羅するモジュールと高い拡張性を備えた統合ERPとして進化を続けてきました。

今回発表されたGRANDIT V4では、以下の4点が主な特徴として挙げられます。

-
共通プラットフォーム:
APIを強化し、外部サービスやSaaSとの柔軟な連携を可能にする拡張性の高い基盤を整備 -
ローコードツール:
Power Appsなどと連携し、テンプレートを活用した効率的なアプリ開発で周辺業務のDXを推進 -
ユーザビリティ刷新:
UXデザインに基づく画面改良で操作性を向上し、複数画面表示やボタン色分けなどで日常業務を効率化 -
グループ統合対応:
グループ企業間での基準や機能を統一し、内部統制やコスト最適化を実現する仕組みを強化
特に共通プラットフォームは「コンポーザブルERP」の思想を取り入れ、必要な機能を組み合わせて柔軟に構成できる点が大きな進化です。従来のファイル連携に加えリアルタイムなデータ連携が可能となり、周辺システムの拡張や迅速な意思決定を支援します。また、ローコードツールでは標準APIを活用しつつテンプレートを基にカスタマイズでき、現場の業務改善をスピーディに進められます。UI刷新によって認知負荷を下げた画面構成や複数画面同時表示など、業務効率を高める改善も盛り込まれています。
最後にロードマップとして、オンプレミスに加えクラウド基盤への展開を進め、グループ経営やDX推進を支える柔軟なERPとして進化していく方針が示されました。
GRANDITの業種別活用について:パートナー企業と当社とのクロストークセッション
アプリケーション事業本部 ERP事業部 営業課 課長
青木 一平 氏
営業本部 営業部 ソリューション営業グループ
青木 健太朗 氏
ERP営業部 マネージャー
大藪 竜也 氏

パートナー企業3社によるクロストークセッションでは、商社・情報サービス業・製造業それぞれの業種におけるGRANDIT活用事例が紹介されました。各社が直面する固有の課題と、それを解決するためのアプローチ、さらに最新バージョンV4やコンポーザブルERPの活用可能性について議論が交わされました。
双日テックイノベーション(商社の事例)

商社向けのサービスや実績を強みとする双日テックイノベーションは、総合商社丸紅の事例を紹介。SAPからのS/4HANAへの移行においてアドオン過多が課題でした。基幹システムの全領域をS/4HANAへ構築するというオールインワンの構成を見直す決断をされ、国内の単体の営業領域と事業会社の営業会計領域においては商社業務への適合性の高さからGRANDITを採用いただきました。一部の本社営業本部と事業会社に導入を終えた結果、S/4HANA で再構築した場合と比較すると3割以上の開発コストダウンが見込まれるとのことでした。また双日テックイノベーションは、本導入に伴い開発した「丸紅版GRANDIT」をベースとし、商社業務アドオンテンプレートを開発。今後このテンプレートならびにERPをコアとしたDXソリューションの提供を通じて、各社のビジネス課題を解決するワンストップ支援を行っていくとした。
ベニックソリューション(情報サービス業の事例)

自動車グループのIT企業でGRANDITの導入を行い、販売・会計システムを統合するタイミングで原価管理方式を見直しを実施。個別原価管理アドオンの標準機能で標準原価方式に変更しました。あわせてリアルタイムなコスト把握を実現。データ連携の自動化で月次処理を大幅に効率化しました。
システムインテグレータ(製造業の事例)

同社の生産管理モジュールを導入いただいた和同産業株式会社の事例を報告。GRANDITの導入で生産・販売・調達を統合することに成功。部門間の情報がシームレスにつながり、手作業で転記していたデータがリアルタイムで同期できるようになりました。これにより、原価計算の迅速化や経営判断の高度化につなげました。
商社は商材や業務プロセスの多様性、情報サービス業は部門間データ分断など、製造業はBOM整備やアフター業務まで含む広範な管理、それぞれ異なる課題を抱えます。これに対し、テンプレート+標準機能を基盤に、ローコードやAPI連携で柔軟に補完する導入戦略が有効であると示されました。

最後に質疑応答コーナーにて「テンプレートがいろいろありますが、顧客側で何が適しているのかわからない、顧客側で適したテンプレートが何か選ぶ必要がありますか」というご質問に対して、GRANDIT事業部門 ソリューション営業部 副部長 東風平より「我々パートナーを含めてご用件を伝えていただければ、最適なソリューションを組み合わせてご提案させていただきます」との回答をいたしました。
本イベント全体を通じて、日本企業のERP活用の現状と課題、進化するERP、ニーズに合わせた柔軟なシステム導入が可能となる「コンポーザブルERP」という新たな概念、新バージョン「GRANDIT V4」の特徴、そして業種別活用事例が共有されました。DX時代の基幹システム刷新に向け、経営と現場の双方が自分事として取り組み、刷新プロジェクトを単なるIT施策にとどめず、事業成長を支える基盤として位置づける重要性が再認識されました。