ERP概論
第一回 ERPの概要
はじめに
2000年代の中盤以降、中堅企業におけるERP導入も一般的になってきました。
しかし、一口にERPと言っても、様々な製品がありますし、メリットだけでなくデメリットも存在します。従来のように会社ごとに独自開発するシステムとは、導入方法も異なります。
本連載では、中堅企業において基幹システムに関わりを持つ方、ERPに興味を持っている方を主な対象として、ERP導入に関するトピックをユーザー企業の視点で分かりやすく解説していきます。
今回は連載の初回として、「ERPとはどんなものなのか?」を理解していただくために、ERPの概要や特徴について説明します。
ERPとは
ERPとは、"Enterprise Resource Planning"の頭文字を取ったもので、企業全体の経営資源を統合的に管理し、有効活用するためのシステムの総称です。従来の業務別に構築されたシステムとは異なり、全社最適を志向した統合型の基幹業務システムです。
ERPは、1990年代に欧米で登場し、日本でも2000年問題を契機に大企業から導入が進み、2000年代中盤からは中堅企業でも導入事例が増えています。
従来の基幹システムは、販売管理や生産管理、会計などの個別業務の自動化・効率化を目的に導入されてきましたが、ERPは自動化・効率化だけでなく、企業経営の視点から経営効率や経営資源の最適化を目的としています。
ERPの特徴
次に、ERPにはどのような特徴があるのかを説明します。
1つ目は、"ERPには必ず想定業務が存在する"ということです。
ERPは、開発企業が考える標準的な業務プロセス(ベストプラクティスとも呼ばれる)をベースに、機能が実装されています。
想定業務どおりに稼働させたときに最も効果が得られるのですが、想定と大きく異なる業務に無理やり適用させると、かえって非効率になってしまいます。 よく、「ERPでは追加開発をせず、標準機能を利用することが望ましい」と言われますが、それは前述の理由によるものです。ERPの導入では、数あるERP製品の中から、自社の業務に適合する製品を選定することが非常に重要です。
一般的に、高額なERP製品ほど、想定業務のパターンを多く保有しており、多様な業務に対応できる傾向があります。
2つ目の特徴は、"ERPはパッケージ製品と呼ばれる既成のシステムである"ということです。
ERPの導入は、ユーザー要件に従ってプログラムを開発するのではなく、既に組み上げられたシステムに対して、パラメータと呼ばれる各種項目を設定することで、システムを構築していきます。
理論的には、パラメータを設定し、必要なマスタデータを整備するだけで、システムを稼働させることが可能です。従来のように、一から自社仕様に従ってオーダーメードで開発する場合に比べ、短期間且つ低コストでシステムを導入することが可能です。
3つ目は、"ERPは幅広い業務をカバーする統合型システムである"ということです。
ERPは、販売管理や生産管理、在庫管理、会計など、様々な基幹業務に関する情報を一元的に管理できるように設計されたシステムです。取引先や製品などのマスタ情報や取引情報が統合データベースで一元管理されるため、業務横断的に情報を取得することが可能になります。
また、受注や発注など取引の発生時点でデータがシステムに入力され、それがリアルタイムで更新されます。この"発生源入力"と"リアルタイム更新"により、取引の発生タイミングで情報が取得できたり、会計の仕訳が計上される前の非財務データ(受注や発注など)を取得することができます。
今回は以上になります。
次回は、ERPの導入効果について説明します。
企業がERPを導入すると、どのような効果を得られるのか、具体的に解説したいと思います。
「第一回:ERPの概要」はここまでとなります。
第二回「ERPの導入効果」を是非ご覧ください。