オペレーティング・リース取引に係る借手の申告調整について

公開日:
更新日:

令和7年6月30日に、国税庁から「オペレーティング・リース取引に係る借手の申告調整について」が公表されました。
これは新リース会計基準導入に伴い、税会不一致となる借手のオペレーティング・リース取引の申告調整の具体例を示したものです。なお当具体例は申告調整の一例である事から、当該処理に限られるものではありません。
今回はこちらを要約(一部加筆)して紹介を行います。

※前提条件
①当取引はオペレーティング・リース取引であり、新リース会計におけるリースを含む
②決算日:3月31日
③リース開始日:X1年4月1日
④借手のリース期間:5年
⑤リース料:月額1,000千円(リース期間の合計額60,000千円、毎月末支払い)
⑥減価償却方法:定額法
⑦割引率:年8%
・特にその他条件は無し。
・具体的な金額の算定方法に関しては、参考資料を確認下さい。
・単位は全て千円で記載。

(1)X1期

会計処理
使用権資産 49,318 リース負債 49,318
リース負債 8,356 現金預金 12,000
支払利息 3,644
減価償却費 9,864 減価償却累計額 9,864
法人税の取扱い
賃借料 12,000 現金預金 12,000
法人税の取扱い(訂正仕訳)
リース負債 49,318 使用権資産 49,318
賃借料 12,000 リース負債 8,356
支払利息 3,644
減価償却累計額 9,864 減価償却費 9,864
【別表四】法人税申告書上の記載例
区分 総額 処分
留保
当期利益又は当期欠損の額 -13,508 -13,508
加算 支払利息否認 3,644 3,644
減価償却費否認 9,864 9,864
減算 賃貸借取引に係る
費用の損金算入額
12,000 12,000
仮計 -12,000 -12,000
【別表五(一)】法人税申告書上の記載例
区分 期首現在
利益積立金額
当期の増減 差引翌期首現在
利益積立金額
利益準備金
リース負債 8,356 49,318 40,962
使用権資産 -49,318 -49,318
減価償却累計額 9,864 9,864
省略
差引合計額 8,356 9,864 1,508

(2)X2期

会計処理
リース負債 9,050 現金預金 12,000
支払利息 2,950
減価償却費 9,864 減価償却累計額 9,864
法人税の取扱い
賃借料 12,000 現金預金 12,000
法人税の取扱い(訂正仕訳)
賃借料 12,000 リース負債 9,050
支払利息 2,950
減価償却累計額 9,864 減価償却費 9,864
【別表四】法人税申告書上の記載例
区分 総額 処分
留保
当期利益又は当期欠損の額 -12,814 -12,814
加算 支払利息否認 2,950 2,950
減価償却費否認 9,864 9,864
減算 賃貸借取引に係る
費用の損金算入額
12,000 12,000
仮計 -12,000 -12,000
【別表五(一)】法人税申告書上の記載例
区分 期首現在
利益積立金額
当期の増減 差引翌期首現在
利益積立金額
利益準備金
リース負債 40,962 9,050 31,912
使用権資産 -49,318 -49,318
減価償却累計額 9,864 9,864 19,728
省略
差引合計額 1,508 9,050 9,864 2,322

(3)X5期(最終期)

会計処理
リース負債 11,496 現金預金 12,000
支払利息 504
減価償却費 9,864 減価償却累計額 9,864
減価償却累計額 49,318 使用権資産 49,318
法人税の取扱い
賃借料 12,000 現金預金 12,000
法人税の取扱い(訂正仕訳)
賃借料 12,000 リース負債 11,496
支払利息 504
減価償却累計額 9,864 減価償却費 9,864
使用権資産 49,318 減価償却累計額 49,318
【別表四】法人税申告書上の記載例
区分 総額 処分
留保
当期利益又は当期欠損の額 -10,368 -10,368
加算 支払利息否認 504 504
減価償却費否認 9,864 9,864
減算 賃貸借取引に係る費用の損金算入額 12,000 12,000
仮計 -12,000 -12,000
【別表五(一)】法人税申告書上の記載例
区分 期首現在
利益積立金額
当期の増減 差引翌期首現在
利益積立金額
利益準備金
リース負債 11,496 11,496 0
使用権資産 -49,318 -49,318 0
減価償却累計額 39,454 49,318 9,864 0
省略
差引合計額 1,632 11,496 9,864 0

<参考>
国税庁「オペレーティング・リース取引に係る借手の申告調整について」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2025/pdf/0025006-179.pdf

著者プロフィール
公認会計士・税理士
植地 亮太(うえじ りょうた)
主な経歴

公認会計士・税理士。大手監査法人勤務を経て現職。
大手監査法人において12年にわたり、公認会計士として、主に会計監査業務及び会計支援業務、内部統制監査業務及び内部統制支援業務、IFRS支援業務に従事するほか、IPO支援業務、任意監査業務、不正対応業務、財務デューデリジェンス業務等を多数手掛ける。上場準備会社を東証1部上場会社まで支援した実績あり。
上場企業はもちろんのこと中小企業の会計支援、管理体制支援及びスタートアップ企業のIPO支援、M&Aを得意とする。
大田区蒲田の税理士 税理士法人Right Hand Associates