セミナーレポート

第11回 経営戦略スペシャルセミナー2018 レポート
「不確実性の時代の舵取りと実行」-知的経営と事業運営-

11月6日、11月13日の2日間、ステーションコンファレンス東京にて第11回経営戦略スペシャルセミナー2018が開催され、大盛況のうちに終了しました。
本レポートでは、各日の講演内容を要約して掲載しております。

臼井誠一 氏
臼井誠一 氏

【DAY1/役員要件:実益の戦略】

1.創業者、去りし後の経営

講師:
スカイライト コンサルティング株式会社 プリンシパル
臼井誠一 氏

プロフィール:
監査法人系コンサルティング会社や独立系コンサルティング会社を経て2001年より現職。ビジネス/ITコンサルタントとして20年以の実績があり、関係プロジェクトは100件以上。M&A、戦略立案、IPO支援など経営案件提案、実践に定評がある。また、各事業単位のKPI活用、ERP導入など具体的な実務面までカバーできることが強み。経営企画室の参謀的な働きを続けている。

カリスマ的な創業者が舵取りをしているうちは良かったものの、その創業者が退いてしまった後、混乱に陥る企業が少なくありません。なぜ、そのような事態に陥ってしまうのでしょうか?
また、そうならないために、どのような手を打つべきなのでしょうか?

臼井誠一 氏

まず、臼井氏は「企業家に備わっている4つの資質、ドリーマー(夢想家)、デタミネーション(思い込み)、アントレプレナー(実業重視)、キャリアアップ(出世・拡大)の中でも、ドリーマーとデタミネーションの資質が濃い創業者が率いてきた会社ほど、創業者が去った後、混乱に陥りやすい」と説きます。
ドリーマー型というのは、楽観的に夢を追いかけていく資質。デタミネーション型というのは、強い想い込みを持って意思決定していく資質をいいます。

どんな製品・サービスでも、永久に、売れ続けることはない、と臼井氏はいいます。例えば、製品のライフサイクルが下降局面に入った段階で、できるだけ早く次の展開を考え、対応しなくてはなりません。

臼井氏は、そのライフサイクルの下降に入る状態を、クリフ(崖)と表現します。臼井氏によると「現場のことをよく知っている創業者は、クリフ(崖)の現れる境目を見事に見抜く」といいます。しかも、そのクリフの見極めが、「取引先のAさんの顔が曇り始めた」「取引先のB社の在庫が余っているように見える」など、感覚的な情報に基づいているのが特徴で、一般社員からは不思議に思えるこの意思決定方法が、ときに「カリスマ」と呼ばれる所以だそうです。

そして、ドリーマー型、ディタミネーション型の経営者は、この修正に関しても迷いが少なく、果断ともとれる決断を行うことが多いといいます。その結果、意思決定がカリスマ経営者の個人的能力に依存しがちになるといいます。

臼井氏によると、「危険に気づくのが早い、つまり顧客ニーズの変化の拾い上げが早いので、危機に陥った早い段階で何らかの手を打つことができ、結果として、事業が安定する」と解説します。さらに「創業者がクリフの出現にいち早く気づけるのは、自己資産を投げ打って、常に緊張感を持って経営にあたっているからだろう」と推測します。

しかし、このように創業者の属人的な意思決定に頼っている場合、創業者の不在が事業に大きな影を落とすことになります。

「実際には、創業者が去ってもしばらくの間はオペレーションを維持することはできるものの、再び下降し始めた局面で、創業者の勘や意思決定がない中、どのような手を打つことができるのか、そこが焦点になる」と臼井氏は忠告します。

また、臼井氏は、創業者の影響力が強い会社は、その自己修正が効きにくい状況にあることを指摘します。
臼井氏によると「企業経営は、ビジョン→中期経営計画→短期経営戦略→現業戦術→戦術遂行」の順番で意思決定が現実化していくといいます。

そして、カリスマ性のある創業者の場合、自身の観察眼や洞察力により、顧客のニーズを見抜くことで、このサイクルが不要にしていることが多いといいます。上記プロセスの関係者の中で一番ニーズやシーズに敏感なため、他の人が意見を言う文化が育たないのも一因なのでしょう。

そのため、カリスマが抜けた後は、本来必要なプロセスが形成されていないため、自力で改善策を作りにくい状態になると考えられます。すなわち、カリスマの抜けた後の経営は、本来必要な意思決定プロセスを、カリスマ抜きで実現することにあると言えます。

「特に、創業者のカリスマ性を再現し、意思決定プロセスを運用するには、中期経営計画の部分が重要」と臼井氏はいいます。「なぜなら、経営計画は戦略を実現するために、経営資源の活用方法を示したものだからです。これ抜きでは、正しく経営資源が配分されず、また実行の目的もあいまいになるため、戦術の遂行に結び付かなくなります」では、どのようにして中期経営計画を作成すればよいのでしょうか?

「まず戦略がきちんとできている必要があります」と臼井氏。「そのうえで、中期経営計画は、単純に前年度の何%アップというように、根拠のない数字を置くのではなく、根拠がきちんと担保された数字を基に作成しなければなりません」

現実的であり、論理的でもある中期計画とは、必要な利益を算出し、そこから逆算して作った基本案、市場の状態がよく、良好な成績が期待できる楽観案、不測の事態が起きるなど、ある程度成績が落ち込む想定にした案の三つを作成し、そこから具体的な実行案を導くことが重要だと説きます。

そして、「このようにして、中期経営計画を作成し、現実の計画に落とし込んでいきます」と、このセッションを締めくくりました。

2.M&Aの成功と価値

何かと話題に上ることが多いM&Aですが、以前よりは身近になってきたという印象です。このM&Aについて、臼井氏は「M&Aの本質は時間を買うこと」と解説します。

臼井誠一 氏

経営資源は、一般的に、ヒト、モノ、カネといわれていますが、臼井氏は、この3つに「時間」を加える必要があると主張します。

「ヒト、モノ、カネは全て時間に支配されています。例えばヒトの場合、新入社員を育てるのは時間がかかるので中途社員を雇う判断をするなどがいい例でしょう。この例からも、ヒトという経営資源が時間に影響を受けていることがわかります」

「経営とは、経営資源を有益に使って事業を最大化すること。時間を資源として扱うのは、すべての製品・サービスにライフサイクルがあるからです」と、臼井氏。

さらに、「昨今の情報化社会では、ライフサイクルが非常に短くなっており、開発に時間がかかると回収するための十分な時間が確保できず、それなら買った方が早いという判断になる場合もあるのです」と続けます。

事業を買う場合の注意点として、「自社の計画に沿った内容の事業を、ある程度出来上がったものとして買うこと」を挙げました。

「買う側にとって重要なのは中期経営計画です。」と臼井氏。「時間を買うということは、その事業を成立させるのに、どれくらい時間を要するのか、事前に把握していないと、買うことが得かどうか判断できないからです。」

一方で、中期経営計画は、単純に前年度対比で何%アップ、などと簡単な作りで済ませる会社が多いと言います。M&Aの参考になる資料にはなりません。

ここで臼井氏は、中期経営計画の例として、いくつかの手法を紹介しました。例えば、株主評価を上げるために、配当性向を考慮して銀行利息を超えるように設定した事例などです。そのほか、売上の設定を、市場成長率を把握した上で、売上予算を設定したり、仕入れ市場を把握した上で、コストの部分を設定したりしているそうです。

このようにして作成する中期計画は、「できれば、ベスト案とワースト案を加えた3案ほしい」と臼井氏はいいます。計画は未来のことで、未来の不確定な要素に対しては備えが必要だからです。このうちのベスト案か中間案の売り上げ進展や開発費用と照らし合わせて、M&Aの考慮を行うことが望ましいということです。

臼井氏は「M&Aを進める際には、フィード・フォワード型で」と提唱します。M&Aの意思決定は基本的にワンチャンスなので、複数のオプションを用意して、ワンチャンスの精度を上げる必要があるということでした。

「経営の意思決定は、過去の情報を使って未来を予測していくこと」と臼井氏はいいます。

「過去と現在を比較し、近未来に市場がどうなっていくのかを予測し、他の市場への進出可能性を検討する必要が出てくる。このような予測を高い精度でできると、経営資源の使い方の精度が上がる」と臼井氏。
そして、「自社がどのような価値を創造していて、どのような部分が顧客に評価されているのかを調べることで、精度を上げることができる」といいます。

「調査結果を使って多次元ポートフォリオで立体的に分析・評価する。これを3年前から今日までの時系列で行うと、評価の精度が上がり、そのような材料を使って中期計画をつくると計画の精度も高くなる。そうやって作成した中期計画の延長線上に、他社を買収して時間を買うという意思決定ができるようになる」とのことでした。

3.2年先を見据えた業務構造改革とRPA

講師:
ナイスジャパン株式会社 ソリューションコンサルタント
望月智行 氏

プロフィール:
ソリューションコンサルタント
某SIにてコンタクトセンターインフラのSEとして多数の構築経験を持つ。
テクニカルバックグラウンドにより新技術化各部にてビジネス戦略立案、提案と上流までの工程を経験。
幅広い知見を元に、現在、ソリューション提案のみならず、業務コンサル、自動化フロー提案などRPAビジネスを推進中。

まず、望月氏からNICE社の会社概要について説明があり、次に、NICE社が提供するRPAについての解説がありました。
RDAとRPAの違いについて、RDAとは、Robotic Desktop Automationの略で、担当者のデスクトップ上で動作し、デスクトップ型とも呼ばれること、一方RPAは、Robotic Process Automationの略で、サーバー側で動作し、スケジュールやイベントにより自動化シナリオの実行を指示し、サーバー型とも呼ばれることが説明されました。

望月智行 氏

続けて、NICE社の2種類のロボットについて説明がありました。
「1つはRDAのDesktop Automationというロボットです。このロボットは、デスクトップ上の自動化にとどまらず、画面の生成や複数システムに分散している情報を1つの画面にまとめて表示するといったことが可能です。もう1つのロボットは、RPAのRobotic Automationです。このロボットは、無人での自動実行が可能で、大量業務や定型業務に適しています。この2つのロボットを連携させることで、Robotic Automationが自動で定型業務を行っている途中でエラーが発生したら、すぐにDesktop Automationが担当者のデスクトップ上にチェック画面を表示し、その場でデータの修正を行い、スピーディーに自動処理を続けることができます」

さらに望月氏は、2種類のロボットの連携事例としてOCRのデモ動画を再生し、理解を促しました。

望月氏によると、NICE社は、Desktop Analyticsという従業員の業務をモニタリングするソリューションも提供しているとのこと。これはRPAではないものの、Desktop Analytics、Desktop Automation、Robotic Automationの3つのソリューションを1プラットフォームで提供することで、顧客の多様なニーズに応えていると紹介しました。

RPAのこれからについて、望月氏は「Automation Finder、Automation Studio、Automation Creatorの3つによって、NICE独自のデスクトップ分析とマシンラーニングを組み合わせて、自動化対象のリコメンドからロボットの作成・実装までを自動化し、隠れた自動化対象を洗い出し、迅速に本番環境に実装することができるようになる」と語りました。

続けてNEVAの紹介に入ります。
NEVAは、NICE Employee Virtual Attendantの略で、従業員ごとの専属アシスタントのように振る舞うものです。NEVAについても、デモ動画を使って具体的な活用イメージを共有しました。

望月氏は、約20年前の世界時価総額ランキングと、現在のランキングを比較して、AIをはじめとした大量データを活用するための投資が変化への対応に不可欠だと説きます。
そして、RPA=自動化ではなく、あくまで自動化は手段に過ぎないと強調し、その上で、どのようにすれば効率を上げることができるかについて、人間がRPAやAIと一緒に働く環境の創出や、RPAやAIと一緒に働く企業組織への変革が重要であると説きました。

4.経営基盤として進化する進化系ERP「GRANDIT」のご紹介

進化系ERP「GRANDIT」のご紹介

セミナーの最後に、GRANDIT株式会社から、「GRANDIT最新バージョンのご紹介~役員要件編~」と題して、企業経営を支援し続けるGRANDITの製品コンセプトや、主な導入事例について紹介がありました。

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