総合商社におけるERP活用の現在地
1.商社の基本機能
総合商社と聞くと、多くの方が「何でも取り扱う巨大な貿易会社」というイメージを持たれるでしょう。
そのイメージは大きく間違っていません。商社は、国内外の商品やサービスを仲介し、物流、金融、リスク管理といった付加価値を組み合わせることで、“中間業者”以上の存在となっています。
本来、商社の基本的な役割は「情報収集」「取引の仲介」「リスクヘッジ」にあります。
これに加えて、資源開発、製造、販売、サービス提供といった川上から川下までをカバーし、場合によっては自ら事業投資を行うなど、多様なビジネスモデルを展開しています。
(商社の基本機能)

本コラムでは、商社の機能や役割、商社業界の課題を解説するとともに、ERPがどのように活用されているかについて、ご紹介します。
2.商社を取り巻く事業環境の変化
ここ数年、総合商社を取り巻く外部環境は大きく様変わりしました。
特に顕著なのが、次の3つのトレンドです。
(商社業界を取り巻く3つのトレンド)
- グローバル市場の成熟と地政学リスクの増大
- 脱炭素社会への移行圧力
- デジタル技術の急速な進展
グローバルなビジネス環境が不透明さを増す一方で、脱炭素を軸とした新しい成長領域の探索が急務となっています。
さらに、デジタルシフトは商社のオペレーションや取引モデルそのものを根本から変えつつあります。
従来型の“モノを右から左へ流す”だけでは付加価値を生み出せず、より高度な情報分析力、リスクマネジメント力、事業開発力が求められる時代に入ったと言えるでしょう。
3.商社のビジネスモデルの進化
かつて、商社の収益源は主に仲介手数料でした。
しかし現在、商社は「情報」「資金」「人材」を武器に、自らリスクを取る「事業投資型ビジネス」へと進化しています。
たとえば、
- 天然資源やエネルギー分野への大型投資
- 食品、医療、ITといった成長市場でのM&A
- デジタルプラットフォーム型ビジネスへの参画
こうした動きは、単なる取引仲介を超えて、自社のビジネスエコシステムを構築・拡大する方向へ向かっています。
今や商社は「世界中の課題を発見し、事業で解決するプロフェッショナル集団」となっているのです。
4.商社の組織とオペレーション
商社の組織体制は、一般的に事業本部制を基本としています。
エネルギー、金属、食料、化学品、機械、ライフサイエンスといった産業別に、独立した事業本部が存在します。
このような複雑なオペレーションを効率的に統合するためには、グローバルに整合性を持った情報基盤=ERP(Enterprise Resource Planning)の存在が不可欠です。
5.商社業界の課題と将来展望
順風満帆に見える商社業界ですが、実は複数の課題に直面しています。
- 資源価格のボラティリティによる収益リスク
- 脱炭素社会への適応と新規事業開拓の難しさ
- 地政学リスクの高まり(例:米中対立、中東情勢)
- デジタル人材不足と組織の高齢化
特にトランプ政権が掲げる広範な関税政策は、総合商社にとって複雑な課題をもたらしました。輸出コストの増加や関税の引き上げによる、米国市場での価格競争力が低下し、収益性が圧迫される可能性があります。また、サプライチェーンの再構築が必要となり、戦略的対応が求められています。
また、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進は待ったなしの課題です。
「情報を制する者が世界を制する」という時代、いかにデータを活用し、意思決定を迅速化できるかが、商社の生死を分けることになるでしょう。
6.商社におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の動き
近年、総合商社各社は、こぞってDXを経営の最重要テーマに掲げています。
具体的には、
- サプライチェーン管理のデジタル化
- リアルタイムなリスク分析と予測
- 業務プロセスの自動化・標準化
- AIやIoTを活用した新事業創出
など、多岐にわたる取り組みが進められています。
特にデジタル化を単なる業務効率化ツールと捉えるのではなく、「新しい価値を創造する手段」と位置づけている点が、今までとの大きな違いです。
7.商社におけるERP活用の最前線
こうしたDX戦略を支える根幹インフラとして、ERPの重要性が再認識されています。
これまでERPは「会計システム」「在庫管理システム」といった機能的な側面で語られがちでしたが、今やそれ以上の役割を担っています。
(商社におけるERP活用の狙い)
- 海外拠点を含めたグローバル経営管理
- 各事業本部のリアルタイム業績可視化
- 取引リスクやコンプライアンス情報の統合管理
- 迅速な経営判断のためのデータ基盤構築
といった、経営のスピードと精度を飛躍的に高めるツールとして位置づけられているのです。
特に、GRANDITなどの進化系ERPの導入によって、クラウドベースでの柔軟な運用、AI分析、ユーザビリティ向上が図られています。
ERPはもはや“裏方”ではありません。
「経営戦略を実現するための武器」へと進化しているのです。
(総合商社へのGRANDIT導入事例)
「丸紅が選択した“商社に強い”国産ERP、検討の経緯と期待する効果とは?」
https://www.grandit.jp/showcase/detail/marubeni.html
8.まとめ
総合商社は、今まさに変革のただ中にあります。
複雑化するビジネスモデルを支え、グローバル経営を加速させるためには、ERPを単なるITシステムと見るのではなく、
「未来の商社経営を形作るプラットフォーム」と位置づける必要があります。
「ERPをどう活用するか」が、これからの商社の競争力を大きく左右する時代に突入しているのです。
※記事の内容は、制作時点に一般公開されている情報に基づいています。また、記載されている会社名・製品名・システム名などは、各社の商標、または登録商標です。