株式会社ボイス様
GRANDITを導入することで、現場における精密な予実管理を実現
ムリ・ムダ・ムラを廃した経営で業界屈指の高利益を上げる横浜市のビルメンテナンス会社ボイス(旧社名「宮豪」)は、このたび基幹システムを GRANDITに移行、さらなる経営管理強化を進めている。導入を担当した同社開発部の山口氏、遠藤氏、玉浦氏に、GRANDITを選択した理由とその効果などにつき詳しく聞いた。
企業情報
企業名 | 株式会社ボイス様 |
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事業内容 |
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資本金 | 3,000万円 |
従業員数 | 2,600名 (パート含む) |
ボイスの業態について
― ボイスの事業内容についてお聞かせください。
ボイスは、ビル清掃をメインとした総合ビルメンテナンス業を行っています。神奈川エリアを中心に、ショッピングセンター、病院、オフィスビル等と定期契約をし、清掃スタッフを配置してサービスの提供を行います。従業員数は本社スタッフ、清掃スタッフを合わせ約3200名、売上高は57億6000万(2007年7月期)です。売上高では100位前後ですが、業界5位という高い利益率がボイスの特徴です。
― ビルメンテナンス業は価格競争が激しい業界であると伺いました。その中でボイスが高い利益率が出せるのはなぜでしょうか。
ビルメンテナンス業界全体の課題として、人が行う現場仕事であるため現場で「ムリ・ムダ・ムラ」が生じやすいということがありました。たとえば「清掃用具の準備」「清掃場所への移動」「「打ち合わせ」といった、清掃業務以外の時間が多く生じます。ボイスではこの点に着目し、無駄な時間をカットして本来の清掃業務に当てられるよう作業工程を最適化、それに基づいて現場管理を行う業務管理システム「BOISシステム(※)」を10億円を投じて開発しました。 BOISシステムを活用すれば、例えば価格が10%下がったら、これまで30分で行っていたトイレ清掃を、無駄を排することで27分で行うことが可能です。価格を下げても質の高いサービスが提供できると同時に、属人的な業務を標準化することで原価管理がしやすくなり、結果として高い利益率を確保することに成功しました。
※PDA(携帯情報端末)を活用した業務管理システム。清掃スタッフにPDAを携帯させ、作業内容の指示と時間の目安を伝えることで、業務を標準化し、リードタイム(清掃以外の時間)を従来の2分の1にすることに成功した。BOISについての詳細はこちら。
ボイスではGRANDITをどのように活用しているか
― ボイスではGRANDITをどのように活用していますか。
ボイスでは2008年2月にGRANDITを導入、それまでオフコンで稼働していた基幹業務システムを刷新し、WEBベースの新たなシステムをスタートさせました。
基幹システムを刷新した理由
現場中心の業種だからこそ原価を厳しく管理する必要があります
― 今回、ボイスが基幹システムを刷新したのはなぜですか。
オフコンが老朽化し、サポートも対象外となり、維持が難しくなってきたことが直接のきっかけですが、今回の基幹システム刷新の大きな目的は、経営管理の強化です。とりわけ経費の予実管理をより精密に行える業務システムの構築を目指しました。
― 「経費の予実管理」とは、具体的にはどのようなことでしょうか。
ボイスでは、経費の予実管理を経営の最重要課題ととらえています。 一般的な会計の考え方は「売上-経費=利益」だと思いますが、ボイスでは、「売上-利益=経費」、つまり、「売上からあらかじめ利益を引いて、残りが経費」という考え方をしています。売上が決まった時点で利益額の目標を定めることで、経費の予算が決まります。この経費の予実管理を厳しく行えば目標利益額を達成できることになります。
ビルメンテナンス業務の原価は、人件費、外注費(外部サービスに委託している特殊清掃)、資材費などがあります。清掃の請負契約が決まったら、これらの予算を策定し、日々の現場で予算をオーバーしないようにコントロールしながら「精密に」経費の予実管理を行っていきます。
先ほどご説明した「BOISシステム」によって現場の管理が精密にできるようになりました。しかし、基幹システムでは、肝心の経費の予実管理が精密にできませんでした。
旧システムは、どのような問題点があったか
旧システムでは、同じ数字を4回も入力しなければならない事がありました
― なぜ予実管理が精密にできなかったのでしょうか。
旧システムで予実管理を行うのには、以下3つの問題がありました。
1.「データが一元化されていなかった」
従来のシステムは、「給与」と「会計」がパッケージソフト、「販売」と「実行予算」が自社 開発のシステムというようにバラバラでした。それぞれが連動しておらず、月末にまとめてデ ータを「会計」に引き渡す作業を行うため、データの入力は同じものを何度も行わなければな らず、入力モレやミスが生じやすくなっていました。
2.「月次管理から週次管理への転換が必要だった」
これまでボイスでは、実行予算の締めは月次ベースで行っていましたが、次第に月次管理では 不十分になっていきました。というのは、月次ではその月の業務が終了した後の結果分析しか できないからです。ある現場で今、予算オーバーになっている場合、リアルタイムでその原因 を特定して改善策を取るという「先行管理」を行わないと、本当の意味での予実管理にはなり ません。このため、月次管理から週次管理への転換が必要でしたが、旧システムではその対応 はできませんでした。
3.「経営分析に必要なデータが取れなかった」
旧システムでは、勘定科目の定義づけやコードも不統一でした。ボイスでは、半年に一度「業績報告会」を行い、半期の反省とデータ分析を行っていますが、その際、「会計」と「実行予算」の科目が違うため、比較分析のための材料がそろわず経営分析を十分に行うことができませんでした。
そこでボイスでは、これまでの業務システムを一新することを決意、新たなシステム構築のためERPパッケージの選定に動き出しました。2005年のことです。
ERPパッケージ選定における要件
― ERPパッケージの選定にあたっては、どのような要件がありましたか。
ERPパッケージの選定にあたっては以下の要件を定めました。
要件1:「予実管理が徹底できるものであること」
上記に述べた、旧システムが抱えていた問題点をできる限り解決するものでなければなりません。
要件2:「ボイスの実務プロセスになるべく合うものであること」
パッケージの基本機能が、現状のボイスの業務プロセスになるべく合っているものであること。カスタマイズは最小限に抑えたいところでした。
要件3:「アドオンモジュールを統合できること」
ボイスが望む「週次ベースの実行予算モジュール」に関しては、スクラッチ開発をする予定でした。しかし別立てのシステムであっても、操作性や連携においては他のモジュールと統合し、一つのシステムとなることが理想でした。
要件4:「できればWebベースであること」
最優先事項ではありませんが、できればクライアント・サーバー型ではなくWebベースのERPがよいと思いました。Webであれば、管理側はクライアント PCへのプログラム設定やメンテナンスのことを考えなくてもよいですし、ユーザ、特に外出の多い営業マンにとってはInternet Explorerさえあればどこでも入力ができるので、利用の際に負担がかからずにすみます。
上記の要件のもと、検索などで情報を集め、10社以上からヒアリングを行いました。その結果、最終的に国内大手のA社、メーカー系のB社、GRANDIT社の 3社に絞りました。
3社を検討し、GRANDITに決めた理由
― 選考における3社それぞれの評価についてお聞かせください。
まずA社について。
A社製品は、「販売」モジュールが最もボイスの業務形態、業務プロセスに合っており、実績も多く安定しているところが良い点でした。しかし、表現は適切かどうかわかりませんが、製品が「完成されすぎて固まっている」感じを受けました。つまり、A社のルールにこちら側が合わせなければならない雰囲気であったこと。また、今後バージョンアップを積極的に行っていくような進取性を感じ取ることができませんでした。
次にB社について。
B社は大手メーカーだけあって、A社同様安定性と実績は申し分ありませんでした。しかし、「一元化パッケージ」というふれこみでしたが、実際は違いました。「販売」モジュールはB社製品でしたが、「会計」「人事」「給与」はB社のグループ企業の全く違うパッケージ製品を組み合わせるという提案だったのです。また、データベースにしても、OracleとSQL Serverの両方があり統一されていません。「一元化と言いながら一元化でない」ところに不信感を持ちました。
3社のうち、GRANDIT社のGRANDITがボイスの求めるERPに最も近いという結論に達しました。具体的な決定理由は以下4点です。
決定理由1:「アドオンモジュールが統合されていた」
「実行予算」モジュールのアドオン開発に関し、GRANDIT社の提案は3社の中で最も優れていました。他の2社が アイコンを置くだけなど、事実上外付けのシステムであったのに対し、GRANDIT社はアドオンモジュールをGRANDITの中にすっぽり入れるオールインワンの形での提案です。同じシステムの中で、同じ操作性でできるところが非常に気に入りました。
決定理由2:「完全Webベースであった」
A社もB社もWebベースとクライアント・サーバーとの混合で、中途半端で使いにくい印象がありました。完全Webベースなのは、GRANDITだけでした。
決定理由3:「データベースがSQL Serverに統一されていた」
ボイスの他のシステムもSQL Serverだったため、統一されているのは便利でした。
決定理由4:「承認フローの機能がよかった」
ボイスではこれまで帳票発行のための承認を実質紙ベースで行っていましたが、GRANDITにはこの承認フローを完全に電子化できる機能があり、これにより業務効率を大きく高めることができると思いました。こういったワークフロー機能があるのは3社のうちGRANDITだけでした。
1年で開発が終了
― 開発期間はどれぐらいかかりましたか。
2007年2月に開発を開始して2008年2月がカットオーバーですから、ちょうど1年です。2月からの新しい期に間に合って本当によかったと思います。
GRANDITの導入効果
― GRANDITの導入効果をお聞かせください。
GRANDIT導入によって、データ活用の基盤が整ったことが何より大きな効果です。整合性があり、かつ細分化されたデータが確実に取り出せることで、管理側が正確な経営状況を把握することできるようになり、ボイスが求めていた精密な原価コントロールを実現できるようになりました。また、これまで散在していた業務システムが一つになったことで、業務効率も大きく向上したことは言うまでもありません。
GRANDIT社への評価
スクラッチ開発も大変であったと思いますが、GRANDIT社は納期をきっちり守ってくれました
― SIerとしてのGRANDIT社への評価をお聞かせください。
GRANDIT社については、以下の4点を大きく評価しています。
評価点1:「納期をきっちり守ってくれた」
新システムは、期首からスタートさせるつもりでした。ですからカットオーバーが少しでもずれ込むと、次のスタートは半期待たなければなりません。GRANDIT社はこちら側のそういった事情をよく理解し、スケジュールを遅延させない努力をたくさんしてくれました。1年という開発期間は、この内容のシステムとしてはかなりの短期間だったと思いますが、ずるずると伸びなかったことに感謝をしています。
評価点2:「プロジェクトの調整がうまかった」
今回のプロジェクトは、各モジュールごとに動いており、それらをまとめるのはGRANDIT社側にお任せしていました。当然ながら進んでいるところとなかなか進まないところがあり、それをコントロールするのは大変だったと思いますが、うまく調整をしていただき、積み残しなく着々とプロジェクトが進んでいきました。
評価点3:「技術力に加え、提案力があった」
パッケージの基本機能に必要に応じてカスタマイズを行いましたが、その際、GRANDIT社は「ここを変更するとこういうところに影響が出てきます。だからこういうやり方で」というように課題点に対して2~3案を出し、一緒に考えてくれました。
評価点4:「業務知識が豊富であった」
ERPのSIerは、技術力だけでなく、業務知識が求められると思います。たとえば「給与」のモジュール一つとっても、給与についての根本的知識がないと進みません。その点、GRANDIT社の技術者とは何人も話をしましたが、みな業務知識があり的確なジャッジをしてくれたと思います。
今後の期待
― GRANDIT社へ、今後の期待をお聞かせください。
現在、ボイスにおけるシステムは、会計管理がGRANDIT、現場管理はBOISシステム、営業管理はSFA、というように3つあります。今後は3つのシステムの中心であるGRANDITと他の2システムを連携させデータを一元化し、BIを活用してさらに細かく経営分析ができたらと考えています。GRANDIT社には、ボイスがGRANDITを最大限に活用できるよう、今後も引き続きサポートと提案をお願いしたいと思っています。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。