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脱メインフレーム&標準化を実現!タイトーが選んだ統合型ERPとその効果

レガシーな基幹系システムではビジネスを支え切れない

 企業システムの中でも、長期間使われるものの代表格といえる基幹系システム。文字どおり、その企業のコア業務を支えるシステムであるだけに、容易に取り換えることはできず、運用開始から20年以上が経つ仕組みを使い続ける日本企業も少なくない。

 また当然、運用に当たっては障害発生のリスクを極小化することが求められる。そのため、運用を担うIT部門にとっては、どうしても現状維持のベクトルが強く働いてしまう。このことも利用が長期化する一因といえるだろう。

 しかし、このようなレガシーシステムは多くの問題を内包している。特にスクラッチ開発した基盤上で幾度もの機能強化を行ってきたシステムや、独自のカスタマイズ/アドオンを追加したERPなどは肥大化が進み、資産を維持するためには多大な保守・運用コストが必要になる。

 また、それらの仕組みでは往々にして、過去のシステム改修や更改の履歴がブラックボックス化している。当時を知るエンジニアは既に退職していたり、ドキュメントが存在していなかったりするからだ。

 さらに、ベースとなる技術が陳腐化していると、先進のデジタル技術を実装することも困難だ。このようなシステムで、デジタル時代のビジネスを支えることができるのか——。この課題を前に、レガシーな基幹系システムの再構築に挑んだのがゲーム/エンターテインメント業界大手のタイトーである。「次の10年を支える経営基盤」をつくるため、同社が選んだ環境と具体的なアプローチを紹介しよう。

「25年もの」のシステムが業務属人化の原因に

 創業以来、革新的なゲームコンテンツやサービスを世に送り出し、1970年代後半には「スペースインベーダー」で一世を風靡したタイトー。現在は地域性や立地条件、顧客層などにあわせたアミューズメント施設「タイトーステーション」を全国に展開するほか、クレーンゲームをスマートフォンやPCで気軽に楽しめる「タイトーオンラインクレーン」といったオンラインゲームでも人気を博し、新たな顧客層を拡大している。

 常に“革新”と“進化”を続けるタイトーだが、その足かせとなっていたのがレガシー化した基幹系システムだった。

 現状把握のために、グループ会社であるスクウェア・エニックスの情報システム部門と共同作業で、現システムの課題点を洗い出した。タイトーの坂上 和之氏は次のように語る。「従来の基幹系システムはIBM i(旧AS/400)を基盤としてスクラッチ開発したもので、一番古いモジュールは約25年前から使っていました。そこで発生していたのが、システムの利用と運用、両面における深刻な属人化の問題です」。

株式会社タイトー 執行役員 管理統括本部 副統括本部長 経理財務部長 坂上 和之氏

株式会社タイトー
執行役員
管理統括本部 副統括本部長
経理財務部長
坂上 和之氏

 業務現場ごとの個別最適を求めて改修を重ねてきた結果、システムが複雑化。限られた担当者しか利用できない状態になっていた。また運用面では、IBM iを熟知したベテランエンジニアが減少。将来的な事業継続性が懸念される状況になっていたという。

 そこでスクウェア・エニックスとタイトーは、メインフレームの既存システムを脱却し、「次の10年を支える経営基盤」を再構築することを決断。新たな基幹系システムの基盤に、国産であり完全Webベースの統合型ERP「GRANDIT」を採用した。

 「属人化が課題だったこともあり、検討に当たっては標準化を基本方針に据えました。カスタマイズやアドオンを抑えるには、パッケージ自体があらかじめ業務に適合していることが不可欠です。GRANDITは、国産ERPで、日本の商習慣への適合率が非常に高い点を評価しました。そう語るのはスクウェア・エニックスの山嵜 学氏だ。コンサルティングファームにも声を掛け、実際に複数のERPを調査。各製品と業務要件の適合をFIT/GAP率として測定・比較し、最も高い適合率を出したのがGRANDITだったという。

株式会社スクウェア・エニックス 情報システム部 業務アプリケーション・グループ シニア・マネージャー 山嵜 学氏

株式会社スクウェア・エニックス
情報システム部
業務アプリケーション・グループ
シニア・マネージャー
山嵜 学氏

 コストパフォーマンスも評価した。GRANDITは、全社的な利活用を前提としたボリューム型(従業員数単位)のライセンス体系を基本としている。「大規模利用を想定していた当社にとって、コストが抑えられることは重要でした」と坂上氏は続ける。

システムを役割ごとに分けて拡張性、柔軟性を確保

 タイトーがGRANDITの導入を決めたのは2018年12月。翌2019年2月から要件定義に着手し、再構築プロジェクトを本格的に始動した。

 「GRANDIT社が、確固たる導入メソッドを持っている点は安心でした。中でも『ERPはデータを記録する仕組みとして、ERP内の共通マスタに正しいデータを吸い上げることに軸足を置くべき』というアドバイスをもらいましたが、これは新環境の構築に向けた指針になりました」とタイトーの森下 祐司氏は振り返る。

株式会社タイトー 総務部 情報システム課 課長 森下 祐司氏

株式会社タイトー
総務部
情報システム課
課長
森下 祐司氏

 基幹系システムの要件定義フェーズで課題になりがちなのが、現場ユーザーの声を“聞きすぎてしまう”ことである。もちろん現場のニーズは盛り込むべきだが、行き過ぎるとカスタマイズやアドオンの増加につながる。「その点、国内のユーザー系SI企業を核とするコンソーシアム方式で開発されたGRANDITは、あらかじめベストプラクティスを結集した仕組みといえます。これを標準として、そこに現場のニーズを寄せていく議論ができました」(森下氏)。社内の同意と納得を得つつ、約半年をかけて要件定義のプロセスを進めていったという。

 もっとも、ERPのみで明確な競争優位性を生み出すことは難しい。そこでタイトーは、ITシステムを目的ごとにいくつかに分割することにした。具体的には、コア業務の標準となるGRANDITと、タイトー独自の強みの源泉となるシステムなどを別々に構築・配置し、互いに連携させるかたちとしたのである。

株式会社スクウェア・エニックス 情報システム部 業務アプリケーション・グループ 須原 敦彦氏

株式会社スクウェア・エニックス
情報システム部
業務アプリケーション・グループ
須原 敦彦氏

 並行して導入を進めている店舗システムとの結合を調整するスクウェア・エニックスの須原 敦彦氏は次のように語る。「単一の基幹系システムがすべてを内包するのではなく、あえて分けて疎結合な状態にします。これにより拡張性・柔軟性を高めたほか、アジャイルの導入をはじめとする開発の迅速化、および開発工数の削減を図れるようにしました」。

データ活用を促進し、管理部門を“戦える集団”に変える

 スクウェア・エニックスの情報システム部門とGRANDIT社との協働によりプロジェクトを進行。モジュールの段階導入を進めた際、データの移行時にいくつかの課題にぶつかったが、GRANDIT社の支援を受けながら解決できた。一般的に、新システムを構築するベンダーは、旧システム側のデータの内容などに踏み込まないのが通例だ。ただ今回は、「まずは本番稼働を」を合言葉に、この領域まで踏み込んだ支援が提供されたという。

 こうしてタイトーの「次の10年を支える経営基盤」は2021年10月にほぼ完成した(図)。

図 タイトーが刷新した基幹系システムの全体像
図 タイトーが刷新した基幹系システムの全体像 イメージ

コア業務を担うシステムにGRANDITの各モジュール、
および共通マスタを活用。独自の強みを生むための新規システムと疎結合の状態としている

 導入後は、部門ごとに乱立していた受発注画面や商品マスタ、取引先マスタなどを統合。全社員が同じインタフェース、一元化されたマスタデータに基づき業務が行えるようになっている。「属人化を脱却し、これからのタイトーのビジネスを支える基盤が実現できました。また社内人材の流動性が高まれば、個々の社員の育成計画やタレントマネジメントに基づいた機動的な配置転換も行いやすくなります。今後、より大きな効果が出ることを期待しています」と森下氏は述べる。

 ただ、新たな経営基盤が真価を発揮するのはこれからだ。今回の再構築の最終目的は、バックオフィス業務を担う管理部門や間接部門を“戦える集団”に変えていくことにあるという。「それには、各社員の『データ』に対する習熟度をさらに高めることが不可欠です」と坂上氏は言う。

 例えば販売管理、購買・在庫管理などのGRANDITの各モジュールが保管しているデータは、明確なKPIを設定するための材料になる。だが、このKPIは、ビジネスの潮流や社会環境の変化に合わせて随時変わっていくものだ。それには、データを理解し適切に扱える人材が、社内のあらゆる部門に必要になる。「誰もがデータにアクセスできる基盤が整ったので、今後はそれをどうビジネスに生かすかを考えていきたいと思います」と森下氏は話す。

 ゲーム/エンターテインメント業界の古参プレイヤーであり、今も最先端を走り続けるタイトー。同社の成長戦略を、GRANDITを核とした新たな基幹系システムが支えている。

企業情報

企業名 株式会社タイトー様
事業内容 アミューズメント施設の企画、運営およびフランチャイズ事業、アミューズメント機器の開発、製造、販売、レンタル、およびアミューズメント機器のメンテナンスサービス、モバイルコンテンツの企画、開発、運営および配信、マーチャンダイジング事業
資本金 5千万円(2021年3月31日現在)
従業員数 755名(2021年3月31日現在)

Webベースの完全統合型ERPパッケージ「GRANDIT」

2004年の提供開始以来、サービス、商社/卸、製造を中心に国内1300社以上(2022年3月現在)の導入実績を持つ純国産の統合型ERPパッケージ。最大の特長は、国内のユーザー系SI企業を中核メンバーとしたコンソーシアムで共同開発を行っている点にある。参画する複数企業のノウハウを結集することで、常に先進的かつ偏りのない、日本企業にとって真に使いやすい基幹系業務基盤を提供する。また、2021年10月より中小企業向けクラウドERP「GRANDIT miraimil(グランディット ミライミル)」の提供を開始した。

記載されている会社名・製品名・ロゴ等は、各社の登録商標または商標です。

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日経BPの許可により「日経クロステックActive」2022年4月20日~7月13日まで掲載の記事体広告から抽出し再構成したものです。禁無断転載 ©日経BP

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