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ビジネスコラム

マイナンバー制度/民間企業への影響と求められる対応

第二回 マイナンバー制度/民間企業に求められる対応の実務上のポイント(本人確認)

Ⅰ.はじめに

民間企業がマイナンバーを適正に取扱うためには、事前の準備とマイナンバーの収集から廃棄に至るまでの段階に沿った対応を検討することが必要となり、対応すべき事項を、「組織」「業務プロセス」「システム」「情報管理」という4つの視点から整理することができることについて、前回のビジネスコラム「マイナンバー制度/民間企業への影響と求められる対応」にてご紹介しました。

今回は、民間企業に求められるマイナンバー対応の業務プロセスの検討段階においてよくお問い合わせを頂く「本人確認」について解説したいと思います。

Ⅱ.本人確認

1.本人確認において必要な確認事項

本人からマイナンバーの提供を受けるときは、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」および「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律施行令」、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律施行規則」により、本人確認が必要とされています。なりすましによるマイナンバーの不正利用を防止するためです。

本人からマイナンバーの提供を受けるときは、以下の①②の両方を確認する必要があります。

  1. 申請者の本人性(身元確認)
  2. マイナンバーの真正性(番号確認)
<図表1 本人確認のポイント>
本人確認のポイント

以下、従業員等から本人確認を実施する業務プロセスの検討段階において民間企業が悩みに陥りがちなケースを3点紹介します。

2.身元確認

普段顔を突き合わせている従業員等であるのに、マイナンバー法制度対応のためだけにあらためて身元確認書類を提示させるなんて非効率的ではないかと感じる方もいらっしゃることでしょう。

雇用関係にあることなどから本人に相違ないことが明らかに判断できると個人番号利用事務実施者が認めるときは身元確認を不要とすることも認められています。例えば国税分野においては、国税庁(個人番号利用事務実施者)から、雇用契約成立時等に本人であることの確認を行っている雇用関係その他これに準ずる関係にある者であって、知覚すること等により、マイナンバーの提供を行う者が本人であることが明らかな場合は身元確認書類の提示を受けることを要しない、という考えが示されています。

この場合に該当すれば、従業員等に対してはマイナンバーの真正性の確認(番号確認)のみが必要とされることになります。

3.本人確認を実施した記録の保管

本人確認を実施した場合、その記録を残しておかなければいけないのか? という声をよく聞きます。

この声に対しては、内閣府外局の第三者機関である特定個人情報保護委員会から「「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」及び「(別冊)金融業務における特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」 に関するQ&A」にて公表されており、本人確認書類のコピーを保管する法令上の義務はないとされています。

保管の義務はありませんが保管してはいけないというわけではなく、本人確認の記録を残すためにコピーを保管することはできます。

なお、コピーを保管する場合には、安全管理措置を適切に講ずる必要があります。記録を残すことで本人確認実施後の追跡調査等が可能となる利便性と引き換えに、管理すべきマイナンバーが増えることによる安全管理措置の義務も同時に発生することにご留意ください。

4.番号確認の拒否

「通知カード」が自分の手元に届いても、自分のマイナンバーを他人へ教えたくない人(番号確認に応じてもらえない従業員等がいるケース)があらわれるかもしれません。

内閣官房社会保障改革担当室・内閣府大臣官房番号制度担当室の「マイナンバー 社会保障・税番号制度」のページに公表されているFAQによると、社会保障や税の決められた書類にマイナンバーを記載することは、法令で定められた義務であることを周知し、提供を求めてください。それでも提供を受けられないときは、書類の提出先の機関の指示に従ってください。とされています。

なお、会社側が従業員等に対しマイナンバーの提供を求めることができる旨の記載を社内規程文書や入社時の誓約書に含めることや、従業員等向け研修を実施することにより周知を図ることをもって、番号確認に応じてもらえないケースを低減させる対応も考えられます。

Ⅲ.まとめ

以上のように、民間企業にとってさまざまなケースを想定した具体的な業務プロセスの検討には時間がかかると想定されます。本原稿は、平成27年3月現在の法令等によって解説していますが、各方面から新たに公表されるかもしれない事項にも随時注目しながら検討を重ね、各人のマイナンバーを記載した「通知カード」が市区町村から送付される平成27年10月までには本人確認の業務プロセスの検討を終えることが望ましいでしょう。

以上

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