「AIとERPの融合」企業経営者が知っておくべき未来のカタチ
1.はじめに
近年、企業を取り巻く環境は厳しさを増しています。人手不足、原材料費やエネルギーコストの増大、そして競争の激化など、様々な課題が経営を圧迫しています。
少子高齢化が進み、労働人口が減少する中で、深刻さを増している人手不足。為替変動やインフレによる原材料費やエネルギーコストの高騰による利益の圧迫。価格競争や海外企業の新規参入などによる、市場での競争激化など企業はますます厳しい立場に置かれています。
このような状況下で、企業が生き残るためには、業務効率化や生産性向上、そして新たなビジネスチャンスの創出が不可欠ですが、多くの企業では、IT化が遅れている現状があります。
そこで今、注目されているのが、生成系AIとERPの活用です。
本コラムでは、生成系AIとERPが、企業が直面する課題解決や企業の成長にどのように役立つのかについて、ご紹介したいと思います。
2.生成系AIとは何か?
AI(人工知能)という言葉は、もはや私たちの日常に浸透しつつあります。しかし、AIブームは過去にも何度かあり、その度に期待外れに終わってきました。
それでは、なぜ今、生成系AIがこれほどまでに注目されているのでしょうか?
その理由は、生成系AIがこれまでのAIとは全く異なる能力を持っているからです。
従来のAIは、主にデータの分析や予測に特化していました。例えば、過去の販売データから売上を予測したり、画像に写っているものを認識したりする程度でした。
しかし、生成系AIは大量のデータを学習し、人間の会話を理解して利用者のニーズに合った、文章や画像、音楽のようなものまで生成することができるのです。
「人と会話をして、アウトプットを生成する能力」により、生成系AIは多くの人が利用するようになりました。「誰でもが手軽に使える」、「結果を学習することで進化を続ける」といった点で、ビジネスやクリエイティブ分野に大きな変革をもたらす可能性が期待されています。
(生成系AIの得意分野)
生成系AIが得意とする分野は多岐にわたりますが、以下にその一例をまとめます。
得意分野 | 内容 |
---|---|
画像生成 | テキストによる指示(プロンプト)に基づいて、高品質な画像を生成します。 |
文章作成 | 自然な文章を生成したり、文章の要約や翻訳を行ったりします。 |
データ分析 | 大量のデータを分析し、有用な情報を抽出したり、将来を予測したりします。 |
音楽生成 | 既存の楽曲を学習し、新しい楽曲を生成します。 |
動画生成 | 短い動画を生成したり、既存の動画を加工、編集したりします。 |
これらの機能を使えば、商品開発、広告制作、コンテンツ作成、顧客からの問い合わせ対応など、様々なビジネスシーンで活用することができます。
3.ERPとは何か?
ERP(Enterprise Resources Planning:企業資源計画)とは、企業の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を有効活用するために、基幹業務を統合的に管理するシステムです。
従来、企業では部門ごとに異なるシステムを利用していましたが、ERPはこれらのシステムを統合し、一元的なデータベースで管理します。これにより、部門間の情報共有がスムーズになり、業務効率化、経営判断の迅速化、コスト削減などが可能になります。
(ERPがカバーする基幹業務の範囲)
業務領域 | 内容 |
---|---|
販売管理 | 受注処理、出荷処理、請求処理などを管理 |
在庫管理 | 在庫状況の把握、発注管理、入庫・出庫管理などを管理 |
会計 | 会計処理、財務諸表作成、経営分析などを管理 |
生産管理 | 生産計画、工程管理、品質管理などを管理 |
人事管理 | 従業員情報管理、給与計算、勤怠管理などを管理 |
これらの業務をERPで一元管理することで、データ入力の重複をなくし、業務プロセスを標準化し、リアルタイムな情報共有を実現できます。
4.生成系AI×ERPで何ができるのか?
生成系AIにERPが統合管理する、企業内の様々なデータを学習させることで、企業の様々な業務プロセスにおいて、これまでになかった効率化や高度化を実現することが期待されています。以下に、具体的な活用例をいくつかご紹介します。
1) 営業、マーケティング分野
- 顧客データをAIが分析し、ターゲティングやパーソナライズされた営業を実現
- メール文案や提案作成など営業担当者の業務をAIがサポートし、成約率向上
- AIチャットボットによる24時間365日の顧客対応で顧客満足度向上
2)製造分野
- 高精度な需要予測に基づいた最適な生産計画で在庫管理コストを削減
- 画像解析による品質管理の効率化で不良品削減
- AIによる生産計画自動化により生産効率向上
3)財務、経理分野
- 会計処理や会計データのチェックの自動化で業務効率化
- 高度な経営分析支援で迅速な意思決定
- AIによるリスク管理強化で損失防止
4)サプライチェーンマネジメント
- AIによる最適なサプライチェーン構築でコスト削減
- AIによる需要予測に基づいた在庫管理で在庫最適化
- AIよるサプライヤーリスク管理により安定供給が実現
このような機能は、既に専門パッケージの分野では実装されはじめており、今後はERPの領域でも活用できるようになることで、企業が限られた資源で最大限の効果を上げるための強力な武器となります。これらの技術を積極的に活用することで、競争力を高め、持続的な成長を実現できるでしょう。
5.まとめ
生成系AIとERPは、互いの弱点を補い、強みを引き出すことで、相乗効果を発揮します。この協調関係は、企業の業務効率化、顧客体験向上、新規事業創出、意思決定迅速化など、多岐にわたるメリットをもたらし、企業の成長を加速させる原動力になります。
企業においても、これらの技術を積極的に活用することで、競争力を高め、持続的な成長を実現できるでしょう。
※記事の内容は、制作時点に一般公開されている情報に基づいています。また、記載されている会社名・製品名・システム名などは、各社の商標、または登録商標です。
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