バックオフィス部門の業務改革に注力すべき! バックオフィス部門の役割とその重要性
1.はじめに
「バックオフィス」という言葉から、どのような部署を連想されますか?
総務、人事、経理、法務といった、直接的に売上を生み出さない部署でしょうか?
確かに、バックオフィス部門は企業の“裏方”であり、目立つ存在ではありません。しかし、バックオフィスはまさに企業の中核であり、企業の成長を支える重要な役割を担っています。
本コラムでは、経営者、バックオフィス部門の責任者や担当者に向けて、バックオフィス部門の役割と重要性、そして業務改革のヒントをお伝えします。
2.バックオフィス部門とは?その役割と業務内容
バックオフィス部門とは、企業の活動を裏側から支える部署の総称で、具体的には、以下のような部署がバックオフィス部門に該当します。
どの部署も、高い専門性を持ちながら、会社の「ヒト・モノ・カネ・情報」を管理し、企業の事業活動を円滑に進めるための重要な役割を担っています。

3.なぜバックオフィス部門が重要なのか?
「バックオフィスは、会社の裏方でしょ?」、「営業や開発の方が大事じゃない?」とお考えの企業の経営者の方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら、バックオフィス部門が機能しなければ、会社の経営は成り立ちません。
例えば、
- 経理部がしっかりしていなければ、会社の財政状況を把握できず、経営判断を誤ってしまうかもしれません。
- 人事部が採用活動を怠れば、優秀な人材を確保できず、会社の成長が鈍化してしまうかもしれません。
- 総務部がオフィス環境を整備しなければ、従業員のモチベーションが低下し、生産性が落ちてしまうかもしれません。
このように、バックオフィス部門は、企業の基盤となる存在です。強固な基盤なくして、いかに優れた建物を築こうとも、いずれは崩壊を招くでしょう。
4.企業におけるバックオフィス部門の課題
多くの企業がバックオフィス部門の重要性を認識しています。
しかしながら、バックオフィス部門に下記のような課題を抱える状況が散見されます。
1)慢性的な人材不足
- 少数精鋭で業務をこなしているため、担当者の負担が大きい
- 専門知識を持つ人材が不足、人材の育成もなかなか進まない
2)業務効率化の遅れ
- 未だに手作業での業務が多く、働き方改革や業務の効率化が進んでいない
- ITツールを導入しても、使いこなせていない
3)意識、モチベーションがあがらない
- バックオフィス業務は「地味な作業」というイメージ
- 従業員のモチベーションがなかなかあがらない
- 経営層がバックオフィス部門の重要性を十分に認識していない
これらの課題を放置しておくと、バックオフィス部門の業務効率が低下、人材流失が進み、会社の成長を阻害する要因となってしまいます。
5.バックオフィス部門の業務改革のススメ
このような、バックオフィス部門の課題を解決し、そのポテンシャルを最大限に引き出すためには、バックオフィス部門の業務改革が不可欠です。
具体的には、以下の3つのステップで業務改革を進めることをお勧めします。
ステップ1:現状分析
まずは、現状のバックオフィス業務を洗い出し、課題を明確化します。
現状把握と課題の洗い出しでは、まず現在の業務の流れを図や表などで可視化します。次に、業務の中で時間がかかっている部分や、ミスが起こりやすい部分(ボトルネック)を特定します。そして、現場で実際に業務を行っている人たちに、改善点や課題をヒアリングすることで、実態を確認するとともに、過去のデータなどを分析し、客観的な視点から課題とその影響度を明らかにしていきます。
(主な現状分析の内容)
- 各部署の業務内容、業務量、担当者
- 業務プロセスにおけるボトルネックや非効率な部分
- 利用しているITツールとその活用状況
ステップ2:目標設定
現状分析の結果を踏まえ、把握した課題に対して、どの部分を改善したいのかといった、具体的な数値目標を設定します。
目標は処理時間を30%削減する、エラー率を10%減少させるといった、具体的なレベルで設定することが重要です。
(目標設定のイメージ)
- 業務効率〇%向上
- コスト〇%削減
- 従業員の残業時間〇時間削減
ステップ3:具体的な対策
目標達成のために、具体的な対策を実行します。
① 業務プロセスの見直し
多くの企業では、長年の慣習や担当者の個人的なやり方によって、非効率な業務プロセスが残っていることがあります。また、業務の手順やルールが統一されておらず、担当者によって品質が違ったりすることが弊害となっています。
バックオフィス改革において、業務プロセスの見直しと標準化・マニュアル化は、車の両輪のような関係になっており、これらの取り組みを積極的に進めることで、バックオフィス部門の効率化が進みます。
(主な実施内容)
- ムダな作業を省き、業務フローを改善する
- 業務の標準化・マニュアル化を進める
② ITツールの導入・活用
現在の企業活動ではITの利用は必要不可欠です。最新ITを適切に活用することで、業務自動化、データ分析、情報共有の円滑化といったメリットがあります。
また、ITベンダーには、業務改革に精通したコンサルタントが所属しているので、ITベンダーの支援を受けて、ツール導入と合わせて、現状分析、業務プロセスの見直しなどを行うこともできます。
(バックオフィス部門で導入可能なITソリューションの例)
- ERPやクラウド会計ソフト、人事労務、勤怠管理システムなどの導入
- RPA(Robotic Process Automation)による手元業務の自動化
- AI(人工知能)を活用したデータ分析や業務支援
③ 専門家の支援、人材育成
業務改善を成功させるためには、専門的な知識や経験を持つ外部有識者の支援が非常に有効です。一見、外部に依頼することで費用がかかるように思えますが、長期的な視点で見ると、様々なメリットがあり、結果的に費用削減につながるケースが少なくありません。
(実施内容)
- 外部専門家によるアドバイス
- 従業員のスキルアップ研修 など
④ アウトソーシングの活用
業務改革において、BPOなどのアウトソーシングサービスを積極的に活用することは、企業の競争力強化に不可欠な要素となっています。
サービスを有効に活用することで、専門要員不足の解消や専門性の高いサービス提供、変動費化により繁忙期などのピーク時の負荷に柔軟に対応、コストの効率化などが期待できます。
(アウトソーシングサービスの例)
業務領域 | 主な業務 |
---|---|
経理・会計業務 | 経費精算、請求書発行、給与計算など、事務処理業務全般 |
人事・労務業務 | 採用、教育、評価、労務管理など、人材に関わる業務 |
IT関連業務 | システム開発、インフラ管理、ヘルプデスクなど、ITに関する業務 |
コールセンター業務 | 顧客対応、注文受付、問い合わせ対応など、顧客との接点となる業務 |
6.バックオフィス部門の業務改革を成功させるポイント
バックオフィス改革を成功させるためには、以下のポイントを押さえておく必要があります。
1)経営層の理解と全員の協力
バックオフィス改革を、経営戦略の一環として捉え、経営層が積極的に関与し、リーダーシップを発揮。経営層が業務改善に積極的に取り組む姿勢を示し、全員が改善活動に関わるといった「全員参加型の取り組み」を行うことで、より効果的な改善が期待できます。
2)現場の意見を尊重する
現場で実際に業務を行っている人たちに、改善点や課題をヒアリングすることで、実態を確認するとともに、過去のデータなどを分析し、客観的な視点から課題とその影響度が明らかになります。
3)段階的な導入
各改善策の費用と効果を比較し、優先順位を決定。実際の実施については、最初はパイロット的に、小規模な範囲で試行し、効果を検証するといったことも重要。
最初から完璧を求めず、小さな範囲で実施し、小さな成功体験の積み重ねを継続。
常に改善を続けることで、無理のない業務改革が実現できます。
7.まとめ
バックオフィス部門は、企業の成長を支える重要な存在です。
業務改革によってバックオフィス部門の効率化を図ることで、企業全体の生産性向上、コスト削減、競争力強化につながります。
企業の経営者の皆様、ぜひバックオフィス改革に積極的に取り組んでください。
※記事の内容は、制作時点に一般公開されている情報に基づいています。また、記載されている会社名・製品名・システム名などは、各社の商標、または登録商標です。
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