業務改善のトレンド ~業務改善に役立つアイデアやポイントをご紹介!~
1.はじめに
近年、デジタル化が加速し、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。企業においても、業務改善はもはや選択ではなく、生き残りをかけた必修科目と言えるでしょう。本コラムでは、最新のITを駆使し、業務改善を推進したいと考えている企業の経営層・IT担当者の皆様に向けて、具体的なテーマと取り組み方をご紹介します。
2.近年の業務改善のトレンド
一口に業務改善と言っても、「何が対象となるのかわからない」、「どこから手を付けて良いのかわからない」、と思われる方も多いと思いますし、実際、何が改善の対象になるかどうかは企業によって異なります。
ここでは、業務改善のネタを見つけるために、近年、多くの企業が取り組んでいる業務改善の事例などを参考に、業務改善に役立つアイデアやポイントをご紹介します。
① 社会のルールや法制度対応
法制度は、インターネットセキュリティの問題やAIの発展など新しい技術への社会の対応、多様性の尊重など社会の価値観や倫理観の変化、グローバル化の進展による経済状況の変化といった、社会の変化に合わせて常に見直され、改正が行われます。
このような法制度への対応を前提とした業務の見直しや業務改革は必要不可欠と言えます。
(法制度対応の例)
- 個人情報保護法改正への対応
- マイナンバー制度への対応
- ESG経営への取り組み
- 電子帳簿保存法への取り組み
② 業務効率化や生産性向上の推進
業務の効率化や生産性向上を目的とした業務改善とは、現在の事業課題を解決し、業務を効率的に行える環境を整備することで、業務の分業化や手順の見直し、無駄な業務の廃止などが主な取り組みになります。
具体的な業務改善のための課題を抽出するために、「ECRS」という手法が用いられます。「ECRS」は、元々、製造現場での課題抽出と効果的な業務改善の手法として考えられたものですが、近年、さまざまな業務改善に広く用いられています。
ECRSは、それぞれ以下のような考え方で、業務改善のための課題を抽出します。
(ECRSの4原則)
4つの原則 | 説明 |
---|---|
排除(Eliminate) | 業務をなくすことができないか? |
結合(Combine) | 業務を1つにまとめられないか? |
交換(Rearrange) | 業務の順序や場所などを入れ替えることで、効率が向上しないか? |
簡素化(Simplify) | 業務をより単純にできないか? |
ECRSのような手法を用いて、業務の分業化や手順の見直し、無駄な業務の廃止などを行うことで、自社の問題点や課題に沿った業務改革を進めることができます。
③ 最新ITを活用したDX推進
近年、企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化しており、それに伴い、企業の業務プロセスも大きく見直されています。この変化に対応し、企業の競争力を高めるためには、最新のITやITサービスを積極的に活用した業務改革が不可欠となっています。
以下に、最新ITを活用した業務改革の例を紹介します。
(最新ITを活用した業務改革の例)
業種 | 業務改革の例 |
---|---|
製造業 | IoTセンサーを活用した生産ラインの自動化、AIによる品質管理 |
小売業 | ECサイトの構築、オムニチャンネル戦略の実現、パーソナライズマーケティング |
金融業 | FinTechの導入、AIによるリスク評価、ブロックチェーン技術の活用 |
サービス業 | チャットボットによる顧客対応、AIによる需要予測 |
④ アウトソーシングの活用
近年、企業の業務改革において、アウトソーシングが重要な役割を果たしています。アウトソーシングとは、自社で内製していた業務の一部を外部の専門企業に委託することです。以下に、アウトソーシングが業務改革に有効な理由をまとめます。
(業務改革実現にアウトソーシング活用が有効な理由)
- コスト削減
- 専門化によるサービス提供
- 自社要員をコア業務に集中させる
社会的な人材不足の影響などの背景から、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場は、2024年度に前年度比4.2%増のプラス成長が予想されており、既に多くのBPOサービス事業者から、様々なサービスが提供されています。
(アウトソーシングサービスの例)
業務領域 | 具体的な業務 |
---|---|
経理・会計業務 | 経費精算、請求書発行、給与計算など、事務処理業務全般 |
人事・労務業務 | 採用、教育、評価、労務管理など、人材に関わる業務 |
IT関連業務 | システム開発、インフラ管理、ヘルプデスクなど、ITに関する業務 |
コールセンター業務 | 顧客対応、注文受付、問い合わせ対応など、顧客との接点となる業務 |
3.業務改善の具体的な取り組み方
業務改善は、企業の生産性向上やコスト削減、顧客満足度向上などに繋がる重要な取り組みです。しかし、どこから手を付けて良いか分からないという方も多いのではないでしょうか?
ここでは、業務改善の取り組み手順を5つのステップに分けて、それぞれの概要を解説します。
1)現状把握と課題の洗い出し
現状把握と課題の洗い出しでは、まず現在の業務の流れを図や表などで可視化します。次に、業務の中で時間がかかっている部分や、ミスが起こりやすい部分(ボトルネック)を特定します。そして、現場で実際に業務を行っている人たちに、改善点や課題をヒアリングすることで、実態を確認するとともに、過去のデータなどを分析し、客観的な視点から課題とその影響度を明らかにしていきます。
2)目標設定
把握した課題に対して、どの部分を改善したいのかといった、具体的な数値目標を設定します。目標は処理時間を30%削減する、エラー率を10%減少させるといった、具体的なレベルで設定することが重要です。
3)改善策の検討と実行
改善策の検討では、ブレインストーミングなどの方法で、関係者が一堂に会して、様々なアイデアを出し合い、改善策を検討します。
そして、各改善策の費用と効果を比較し、優先順位を決定。実際の実施については、最初はパイロット的に、小規模な範囲で試行し、効果を検証するといったことも重要です。
4)定期的な評価
それぞれの改善策について、定期的に進捗状況を確認します。あらかじめ設定した目標達成に向けた取り組みが順調に進んでいるか?新たな課題や改善点がないか?などを定期的に見直します。計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Act)のPDCAサイクルを回しながら、継続的な改善を行うことが重要です。
4.成功事例から学ぶ
ここでは、企業における具体的な業務改善事例をご紹介します。
1)「家電小売業における、EC サイトと基幹システムの連携強化の事例」
エクスプライス株式会社様は、家電を中心とした「E コマース事業」「プライベートブランド事業」「法人向け事業」を展開している、BtoCのEコマース事業者です。EC事業がますます拡大する中で、属人的な業務体系の解消と基幹業務と EC 業務の連携自動化による効率化で、売上 1,000 億円を通過点とし、更なる成長を目指しています。
(エクスプライス株式会社様での業務改善事例)
https://www.grandit.jp/showcase/detail/xprice.html
2)「請求書と支払通知書を電子化し、郵送費と人件費を56%削減」
電子部品・半導体のネット通販サイト「www.chip1stop.com」の運営と半導体に関するソリューションを提供している、株式会社チップワンストップ様は、経理部門が毎月6 回行っていた、請求書と支払通知書の発送作業や FAX 送信業務を自動化で見直し、郵送費と人件費を56%削減しました。
(チップワンストップ様での業務改善事例)
https://www.ecodeliver.jp/case/case03.html
5.業務改革の注意点
1)業務改善で失敗しないためのポイント
業務改善は、企業の成長に欠かせない取り組みですが、うまくいかないケースも少なくありません。成功させるためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。全体的な流れは、「3.業務改善の具体的な取り組み方」の流れでご紹介した通りですが、加えて、経営層が業務改善に積極的に取り組む姿勢を示し、全員が改善活動に関わるといった「全員参加型の取り組み」を行うことで、より効果的な改善が期待できます。
また、全ての業務を一斉に改善しようとせず、まずは小さな範囲から試行し、小さな成功体験を少しずつ積み重ねましょう。
2)外部コンサルタントなどの支援を活用する
業務改善を成功させるためには、専門的な知識や経験を持つ外部有識者の支援が非常に有効です。一見、外部に依頼することで費用がかかるように思えますが、長期的な視点で見ると、様々なメリットがあり、結果的に費用削減につながるケースが少なくありません。
外部有識者の客観的な視点と専門知識を活用することにより、長年携わっている業務だからこそ見落としがちな問題点や改善点を浮き彫りにする、自社だけでは思いつかないようなアイデアの提供、社内関係に左右されることのない、中立な立場でアドバイスなど受けることができます。
3)最新ITやBPOサービスの活用
業務改革において、最新ITやBPOサービスを積極的に活用することは、企業の競争力強化に不可欠な要素となっています。これらのツールを活用することで、企業は多岐にわたるメリットを得ることができます。
現在の企業活動ではITの利用は必要不可欠です。最新ITを適切に活用することにより、業務自動化、データ分析、情報共有の円滑化といったメリットがあります。
また、BPOサービスを活用することで、専門要員不足の解消や専門性の高いサービス提供、変動費化により繁忙期などのピーク時の負荷に柔軟に対応し、コストの効率化などが期待できます。
6.まとめ
業務改善は、企業の成長を加速させるための重要な取り組みです。
また、企業を取り巻く環境変化の早さに対応するため、近年では、最新ITや外部サービスを活用して短期間に業務改善を実施する事例も増えています。自社の強みを活かした業務改善を推進することで、競争力を強化し、持続可能な成長を実現しましょう。
※記事の内容は、制作時点に一般公開されている情報に基づいています。また、記載されている会社名・製品名・システム名などは、各社の商標、または登録商標です。
ERPコラム一覧
ITと業務による両立
プロジェクト推進方法 その1
プロジェクト推進方法 その2
-働き方改革を実現するには-